シェルミィ「迷い子の理論」梅田Shangri-La ライブレポート

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2025年12月27日、JR大阪駅から北へ徒歩10分ほどの場所にあるライブハウス、梅田Shangri-La

会場前に到着すると、入口にはシェルミィの単独見世物公演「迷い子の理論」開催を告げる看板が掲げられていた。

入場すると、フロア中央の下手寄りにはバーカウンターが設置されている。

ステージ前には赤いカーテンが掛けられ、天井にはミラーボールと2つのシャンデリアが配置されており、会場全体にレトロで艶のある雰囲気が漂う。

開演前BGMとして流れていたのは、シェルミィの公演では定番となっている「迷い子のリボン」。

童謡のような親しみやすさを持ちながらも、アニメ映画『少女椿』の美しくも悲惨な世界を思い起こさせる旋律が、フロアを静かに包み込む。

この曲は、今回の公演タイトル「迷い子の理論」の名付けの元となった楽曲でもある。

今夜のステージが並々ならぬものになるのではないかという期待とともに、シェルミィが次の段階へと歩みを進めていくのではないかという、静かな予感にも似た落ち着かない感覚が漂っていた。

目次

入場SE「全校集壊」〜メンバー登場

開演時間を迎えると、入場SE「全校集壊」の不気味なチャイム音が会場内に響き渡り、フロアの空気が一気に引き締まった。

最初に姿を現したのはドラムの爻。

ターコイズブルーの瞳が照明に照らされ、鋭い視線がフロアへ向けられる。

打ち鳴らされる力強いドラムが、会場全体の緊張感を一気に高めていう。

続いて登場したのはベースの凌央。

無造作風のヘアセットに、目元をダークトーンで囲んだアイメイク、縁のない眼鏡を合わせたスタイリング。

太く響くベースの音が重なり、低音がフロアに広がる。

三人目はギターの友我。

白い肌に映えるモノトーンのメイク、逆立てられたボリューム感のあるヘアスタイルで、ヴィジュアル系らしさを前面に押し出した姿を見せる。

挑発的に鳴らされるギターの音が加わり、フロアの高揚感はさらに増していった。

最後に登場したのはボーカルの豹。

アッシュカラーのやや長い髪に、無彩色を基調としたメイクを施したスタイリングでステージに立つ。

豹が短く「行進だ」と告げると、その言葉に合わせるように、フロアでは負け犬たちがその場で足踏みを始めた。

1曲目|放課後の凶室

1曲目は、この「泥」ツアーで必ず公演1曲目に据えられてきた「放課後の凶室」。

フロアでは一斉にヘドバンが巻き起こる。

「自分の足で歩け!」

豹の叫び声を合図にモッシュが発生し、下手から上手へ、上手から下手へと負け犬たちが行き交っていく。

2曲目|絶交

2曲目は、先ほどの「放課後の凶室」と同じく、シェルミィ初期の楽曲である「絶交」。

イントロが流れ出した瞬間、負け犬たちはタオルを掲げて跳び上がり、「絶交!絶交!絶交!」という声が連なっていく。

今回の「泥」ツアーを機に発売された「少年蓮」仕様のダークパープルを基調としたタオルに混じり、これまでの公演で使われてきたシェルミィのタオルも各所で揺れる。

「はいはいはいはい、声出せどうぞ!」

と豹が煽ると、その呼びかけに応えるように声はさらに重なり合う。

「シェルミィ最高!」

終盤、豹の声に呼応して同じ言葉がフロアから幾重にも返される。

序盤とは思えない一体感が会場全体に広がっていった。

3曲目|舌禍

続いては「舌禍」。

イントロで鳴り響くアコーディオンの音色は、アニメ映画『少女椿』の舞台となった昭和初期を思わせるノスタルジーを帯びる。

「虚飾に群がる蝶、僕は蜜かな」

というAメロでの一節をなぞるかのように、サビでは負け犬たちが右手をひらひらと揺らしながら、蝶が舞うように跳ぶ。

MC

ここで豹がマイクを取り、まずフロアに向けて挨拶する。

「梅田Shangri-Laにお集まりの皆さん、シェルミィです。」

その言葉に応えるように、フロアから拍手が起こる。

「迷い子の理論ということで。」

豹は続けて、この日の公演タイトルに触れながら語り始める。

「ここには何かがあって、みんな迷い込んできたんやと思う。普通の人生を送ってたら、今頃はスノ⚫︎マンとか行ってると思うし(笑)。でも、そうじゃなくてシェルミィに来てるってことは、普通じゃない人生を送ってるはずやと思う。」

冗談を交えた口調でありながら、その言葉はこの場に集まった観客一人ひとりを指し示すように響く。

「迷い子」という言葉は、この日ここに集まった、何かしらの傷を抱えた者、過ちを犯した者、社会や居場所から弾かれてきた者たちを指す呼称とも受け取れる。

その響きは、ヴィジュアル系という文化において古くから用いられてきた「迷える子羊」という比喩とも重なり合う。

このジャンルが、長年にわたり「はみ出した者」や「傷を負った者」の居場所として機能してきた歴史を踏まえると、シェルミィのヴィジュアル系に対する深いリスペクトも感じられる。

同時に、ただ救われるべき弱者としてではなく、迷いながらも自らの足で歩き続ける存在「迷い子」として再定義した点に、シェルミィの意志や意欲が強く現れているように思えた。

4曲目|陰口

4曲目は「陰口」。

「僕が今から“うるさい”と言うので、“うるさい”と叫んでください」

豹が呼びかける。

フロアからはいつも以上に大きな

「うるさい! うるさい! うるさい!」

という声が後方からも響き、吐き出したフラストレーションを、アップテンポで疾走感のある曲調によって消化していく。

5曲目|ラブレットピアス

続く5曲目は「ラブレットピアス」。

「午前0時終電前、大人な夜の大阪駅

君のタトゥー右腕が恋しいな」

2番のAメロでは、元の歌詞の「心斎橋」が梅田Shangri-Laの最寄り駅である大阪駅に置き換えて歌われる。

「『普通の人生なんて嫌だ』と空けたピアス」

という一節に、フロアに集まった迷い子たちはそれぞれを重ね合わせながら耳を傾けた。

6曲目|自分を殺している

豹は演奏に入る前、マイクを握りしめるようにして

と曲名をそのまま叫び、その声を合図に楽曲が始まる。

確かに鋭いギターやベースの音が奏でられているのだが、切ない曲調の影響もあって、その鋭さがどこか和らげられているように感じられる。

「悔しい時に突き刺すことさえできなくて」

という歌詞と重ね合わせると、攻撃性と弱さという二面性が、音と詞の両方で描かれているようにも思えた。

7曲目|ジンテーゼナイフ

7曲目は「ジンテーゼナイフ」。

「『今が良ければいい』と『昔は良かった』はよく似てる」

と豹がフロアに向けて語りかけるように歌い、ステージ上から何かを指し示すような仕草を見せる。

「終わりだけを選ぶナイフ

僕を突き刺した日常」

サビの締めくくりとして歌われる一節は、直前の「自分を殺している」で歌われた〈突き刺せなかった〉状態を反転させるように響く。

「死体みたいな日々の中、幸せさえ感じられれば

少しはこの寒さも凌げたのに」

ラストサビで感情を振り絞るように豹が歌い上げ、それに呼応するように、爻のドラミングは一段と力強さを増した。

8曲目|メイデイメイデイ

8曲目はバラードナンバー「メイデイメイデイ」。

「大好きな音楽を聴こうか

あの時みたいに救ってくれよ」

というサビのフレーズが響くと、フロアでは涙を拭う負け犬の姿。

曲が終わると雨音のSEが流れ始め、その音は1分近くにわたって会場を満たした。

9曲目|哀しい日はいつも雨

雨音から流れるように始まったのは9曲目「哀しい日はいつも雨」。

バラードでありながら、音圧は重く力強く、演奏からは一切の緩みが感じられない。

静かな情緒の中にも確かな迫力を保ち続ける、その姿勢に、シェルミィらしさが表れていた。

10曲目|狡い人

10曲目は、どこか飄々としたユニークな曲調が印象的な「狡い人」。

フロアではイントロから軽快な手拍子が揃う。

場面ごとに表情を変えながら物語が進行していく構成が際立ち、曲が終わるころには、短編映画を一本観終えたかのような余韻が残った。

MC

ここで豹が再びマイクを取る。

「ここに来てるやつらは、シェルミィという光を見つけ出して、それを頼りに生きてて。シェルミィがいなくなったら路頭に迷うようなやつばっかりやって、わかってる。」

そう語ると、会場内を見渡しながら、天井のミラーボールを指差す。

「ほら、月があるでしょ? 迷っても、月が見えてれば、それを目印にして目的地に辿り着けると思うんです。だから、ここ(胸)にも月を入れたしね。」

シェルミィは迷い子たちにとって、進むべき道を指示する存在ではなく、夜空に浮かぶ月のように、迷いの中でも位置を確かめるための光であり続けている。

迷い、悩み、途方に暮れた時、傍らで静かに道標として在り続けることこそが、シェルミィの役割なのだと感じさせられる。

続いて豹は、自身の立場について語り始める。

「僕はボーカルなんやなって、9年にしてやっと自覚が芽生えてきました。バンドってボーカルが大事で、別にボーカルが偉いとかじゃないねんけど、今までどこか、僕は隅っこでいいです、みたいな気持ちがあった。でも、そうじゃないって思えるようになってきた。それはこのメンバーのおかげやったり、スタッフさんやメイクさん、そしてライブに来てくれる人のおかげだったり。関わる人みんながいて、このステージやと思います。」

豹というボーカリストは、今回の「泥」ツアーを通して確かに強くなったと、そう感じた。

このツアーのテーマの一つは、結成初期を思い返し、初心に帰ることであった。

思うようにいかない状況の中で、泥臭くもがき苦しみ、踏ん張っていた頃の感覚に立ち返るという試みだ。

ただし、泥臭さというものは、ともすれば攻撃的な振る舞いや、過剰な自己主張へと転びやすい側面も持っている。

それでも今回のツアーで豹が辿り着いたのは、「自分はボーカルなのだ」という自覚であり、シェルミィというバンドそのものを大切に思う愛だった。

「泥の中で咲く花」とは、「誰かの不幸や犠牲の上に成り立つ快楽」ではない。

時に不安定なぬかるみに足を取られそうになろうと、人と人とのつながりに支えられながら、一回一回のステージでその瞬間の自分を咲かせていくことなのだと、このツアーを通してシェルミィのメンバー、そして負け犬たちが示してくれた。

「出禁とかってあると思う。もちろん他のバンドで出禁の人がここに来て暴れ出したらアレやけど(笑)。でも、ヴィジュアル系の楽しみ方として、暴れたいなら暴れたらいいと思うし、シェルミィのこの曲は暴れなあかんとか、ここはヘドバンせなあかんとか、そういうの気にせんでええ。」

周囲の動きに縛られる必要はないとし、

「周りがヘドバンしてる時に拳してもいいし。なるべく堅苦しいのなしで、自由に楽しんでもらえたらなと思います。」

と呼びかけた。

「そんな規則だらけの邪魔な制服なんて、脱いじまえ!」

この言葉が放たれ、公演は次のフェーズへ進んでいく。

11曲目|インスティンクト_リクエスト

11曲目は「インスティンクト_リクエスト」。

比較的変化の少ない構成でありつつも飽きさせない完成度の高さは、初期の楽曲ながらまったく未熟さを感じさせない。

中盤のギターソロでは友我が前に出てプレイし、色気と、いたずらっ子のような無邪気さの両方を感じさせる音色を響かせる。

その姿を、他のメンバー3人が穏やかに見守る光景は微笑ましくもあった。

12曲目|エキゾチックショートケーキ

続いての12曲目は「エキゾチックショートケーキ」。

ダンサブルで軽快なイントロが鳴り出し、フロアの空気が一変する。

身体が自然と動き出すようなリズムの中、演奏は次第に重みを増していく。

一瞬の無音を挟んだ直後、合図を待っていたかのようにフロアでは一斉にヘドバンが起こった。

13曲目|悪い大人

13曲目は「悪い大人」。

初期から親しまれてきた楽曲であり、イントロが鳴った瞬間、フロアの一角から歓声が上がる。

負け犬たちは上手へ下手へと、互いに笑顔を交わしながらモッシュを繰り返す。

14曲目|非ノーマル

続く14曲目「非ノーマル」では、イントロが鳴り響く中、激しいヘドバンによって熱量はさらに引き上げられていく。

その最中、豹は

「お前ら普通じゃないんやろ?」

と「非ノーマル」という言葉をなぞるようにフロアに投げかける。

やがて負け犬たちが一斉に扇子を掲げ、空間は一気に華やかさを帯びた。

15曲目|少年蓮

本編ラストを飾ったのは「少年蓮」。

この曲はサビを観客も一緒になって歌うよう呼びかけられていた楽曲だが、一斉に大声で歌い上げるというよりも、それぞれが静かに耳を傾けたり、言葉を確かめるように小さく口ずさんだりする姿が目立った。

泥の中で咲く花を、最後にもう一度そっと咲かせるように、それぞれがこの曲を噛み締めるように受け取りながら本編の幕は下ろされた。

各メンバーMC

本編を終え、メンバーが改めてフロアに向き合う。

まず爻がマイクを取り、

「今年はいろんなところでドラム叩かせてもらったんですけど、このメンバーが一番楽しいです」

と、率直な言葉でこの一年を振り返る。

続いて友我は、少し力の抜けた様子で

「フラフラや」

と一言。

「来年はもっといろんなところで暴れてやるんで、みんなも暴れてください」

と、次への意気込みをフロアに投げかけた。

そして凌央は、

「昨日寝れなくて考えてた」

と前置きしながら、

「なんでこのメンバーが集まったんやろうって」

と語り始める。

「よく考えると、こういう音楽やりたいって話は特にしてない。人が好きで集まってる。それって、ずっと(シェルミィというバンドが)続いていくやん」

と、メンバー同士の関係性について言葉を重ねた。

最後に豹がマイクを取り、

「ここに迷い込んできた皆と同じように、俺もヴィジュアル系の世界に迷い込んできて、こうして音楽してる」

と負け犬たちに語りかける。

そして

「これからも共に迷い続けながら、戦っていきましょう」

と締めくくり、メンバーはステージを後にした。

アンコール

本編終了後、フロアから自然とアンコールを求める声が上がる。

しばらくしてアンコールSE「負け犬の忠誠」が流れ、会場の空気が再び引き戻されていく。

やがてメンバーが再登場し、それぞれがお立ち台に上がる。

右手で狐を作り、胸に当てて静止するおなじみの所作が揃うと、フロアの負け犬たちもそれに倣う。

アンコール1曲目|新居

アンコール1曲目は「新居」。

比較的明るい曲調に、パンクのエッセンスを含んだバンドサウンドが重なり、フロアの空気が再び前向きに動き出す。

軽快さを持ちながらも、歌詞には夢を諦めかけた心情が滲んでおり、再び足を踏み出すような位置づけの一曲として、アンコールの幕開けに相応しい流れを作った。

アンコール2曲目|即ち、

アンコール2曲目は「即ち、」。

スローなテンポで進行する楽曲だが、音の一つひとつに重さがあり、演奏が始まった瞬間からフロアを一気に引き込んでいく。

抑制されたリズムの中で鳴らされる音が、静かに、しかし確実に感情の深いところへと沈み込んでいく。

アンコール3曲目|白昼夢の後、雪

アンコール3曲目「白昼夢の後、雪」はシェルミィからのクリスマスプレゼントとして、つい先日MVが発表されたばかりの楽曲。

そのイントロが鳴った瞬間、フロアからは小さなどよめきと歓声が上がり、柔らかな旋律がそっと包み込むように響く。

アンコール4曲目|ハピネス

アンコール4曲目は「ハピネス」。

「何歌ったって嘆いたって小さな僕は変わらない」

「誰かが僕をまだ望むなら この歌に愛を込めよう」

フロアではそれぞれが言葉を受け止めるように、目に焼き付けるようにステージを見つめる。

積み重ねてきた時間を確かめるように進む演奏が、泥の中で足掻きながらも奏で続けてきた軌跡と、そこから咲いたものの確かさを伝えてくれた。

アンコール5曲目|平成メンヘラセオリー

「この命、シェルミィのものだと誓え!」

アンコールの最後を飾ったのは「平成メンヘラセオリー」。

シェルミィの1stシングルでもあるこの曲が鳴り始めると、フロアの空気は一気に引き締まる。

豹の叫びに応えるように、負け犬たちは残された力を振り絞り、拳を突き上げながら声を重ねた。

まとめ|「泥」ツアーが見せてくれたもの

ヴィジュアル系百科で追ってきた「泥」ツアーの各公演は、公演ごとに空気や表情は異なりながらも、一貫してシェルミィのエネルギッシュさと優しさの両面を見ることができた。

時に足元がぬかるむ状況に身を置きながらも、支え合う関係性が、シェルミィと負け犬たちの絆をより強固なものにしてきた。

これまで数々の困難を乗り越えてきたシェルミィが、このタイミングであらためて初心に立ち返ったことは、非常に大きな意味を持つ出来事だったのではないだろうか。

今後もシェルミィが迷い子たちにとっての光として、夜空に浮かぶ月のようにそっとそこに在り続けてくれることを願わずにはいられない。

同時に、結成10周年に向けた新たな躍進にも、大きな期待が寄せられる。

果たしてどんな音を奏で、どんなステージを見せてくれるのか。

ぜひ負け犬たちと共に、その生き様をしかと見届けて欲しい。

シェルミィ


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この記事を書いた人

関西在住。大学では法哲学を専攻し、「ヴィジュアル系における自由と規律」をテーマに研究。音楽を通じた表現と社会的規範の関係性に関心を持ち、ヴィジュアル系という文化現象を美学・社会構造・言語の観点から読み解いてきた。現在はメディア運営者・ライターとして、執筆を通じてバンドの世界観を言語化し、ヴィジュアル系の魅力を広く伝える活動をしている。

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