シェルミィ「くてん奇譚」ツアー 梅田 LIVESPACE ODYSSEY公演 ライブレポート

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JR大阪駅から徒歩10分弱の場所にある梅田 LIVESPACE ODYSSEY

この日はシェルミィの「くてん奇譚」を追って集まった負け犬たちが足を運んでいた。

ここは、かつてHOLIDAY OSAKA(通称・梅ホリ/後のASH OSAKA)があった場所から目と鼻の先に位置している。

2010年代、インディーズヴィジュアル系の関西の中心地として機能していた一帯であり、目の前に広がる特徴的な歩道橋を前に、懐かしむ声が聞こえた。

会場に入ると、白い壁に囲まれた階段が現れ、そのまま地下へと降りていく構造になっている。

地下に広がる薄暗いフロアは二つに分かれ、一段高く設けられた2柵が視界に入る。

この2柵の存在もまた、かつて馴れ親しんだライブハウスの記憶を呼び起こさせた。

目次

SE「ナハトリヒト」

開演時間を迎えると、フロアにSE「ナハトリヒト」が鳴り響く。

ツアータイトル「くてん奇譚」の“奇譚”をなぞるような、どこかコケティッシュで奇妙な音像が、薄暗いフロアにじわじわと広がっていく。

負け犬たちは声を上げることなく、その音を受け止めるようにステージを見据える。

ドラムの爻は、オールバックに眼鏡という端正な出立ちでドラムセットへ向かう。

ベースの凌央は、黒髪に角を付けたスタイルだ。

ギターの友我は、長い髪をハーフツインに結い、中性的なシルエット。

そしてボーカルの豹は、針金のように鋭く尖らせた髪が照明を受け、ステージ中央で異様な存在感を放つ。

1曲目「レイザインライチ」

1曲目は新曲、「レイザインライチ」。

静かに揃えられた手拍子の上に、重厚で美しく響き渡る爻のドラムが乗り、フロアの空気を一気に掴んでいく。

やがて手拍子が止むと、展開は一転。

激しいヘドバンの応酬が始まり、フロアの動きは一気に前のめりになる。

サビでは手扇子が舞い、暗さを帯びながらもどこか乾いた質感が際立つ。

2曲目「ビーニアイコール」

2曲目は「ビーニアイコール」。

イントロが鳴った瞬間、負け犬たちはタオルを手に取り、軽快なリズムに乗せて拳を高く突き上げる。

夏を思わせる開放感を持つ楽曲だが、ODYSSEYの熱気に包まれることで、フロアは一つの塊のようになっていった。

3曲目「透明人間」

3曲目は「透明人間」。

前の曲の熱を引き継ぎながらも、フロアの空気が沈み込む。

「僕は無色で透明な存在、人には見えない

害も与えないが多分干渉も無いだろう」

どこか不貞腐れたようで、諦めにも似た孤独を孕んだ歌詞が、ODYSSEYの薄暗いフロアに落ちていく。

「僕は必要ない」

というフレーズを、豹は内側に溜め込んだものを叩きつけるように叫ぶ。

4曲目「スウィートバッドエンド」

4曲目は「スウィートバッドエンド」。

「優しさが、愛しさが、胸の中笑ってる

今夜また二人で手をつないでいようよ」


演奏が止まり、豹の歌声だけが響く中、負け犬たちは声を上げることなく聞き入っていた。

5曲目「白昼夢の後、雪」

5曲目は「白昼夢の後、雪」。

今回の「くてん奇譚」ツアーでは、「白昼夢の後、雪」の衣装と「ザクロ月光クラブ」の衣装、その二つを交互にまとって公演が行われている。

この日は「ザクロ月光クラブ」の衣装での公演だったため、「白昼夢の後、雪」が演奏されることは予想していなかった負け犬も多かったかもしれない。

淡く切ない音が広がり、負け犬たちは大きく動くことなく、曲に身を委ねていた。

6曲目「御礼参り」

導入で前に出たのは、友我のギター。

女の金切り声のようにも聞こえる鋭い音色が鳴り響き、フロアの空気を一気に不穏な方向へ引き寄せる。

そこに重なるのが、凌央のベースだ。

低く唸るような音は、まるで怪談の語り部の声を聞いているかのようで、楽曲に独特の緊張感を与えていく。

7曲目「狐の嫁入り」

7曲目は「狐の嫁入り」。

「あの子が欲しい この子が欲しい 

迷い子同士は小指を繋ぐ」

というフレーズに合わせ、負け犬たちは手をつなぎ、横にジャンプする。

和の空気をまといながらも、どこか軽やかで、先ほどまでの不穏さとは異なる表情を見せる。

8曲目「如月駅」

8曲目は「如月駅」。

泣いているような切ないギターリフが、フロアに流れ込む。

「ねぇ連れ去ってよ誰もいないところへ

誰にも会いたくないの

なにも届かない如月駅で哀しみに浸りたい」

という歌詞が重なる。

アップテンポな曲調でありながらフロアでは大きな動きは起こらず、負け犬たちはその言葉と旋律を受け止めるように、ステージを見つめていた。

9曲目「少年蓮」

9曲目は「少年蓮」。

前回の「泥」ツアーでは表題曲として繰り返し演奏されてきた楽曲だが、すっかり定番曲としての空気が広がっていた。

イントロが鳴ると、負け犬たちは自然と体を揺らし始める。

決まった振り付けはないものの、リズミカルなパンク調のサウンドに合わせて、それぞれが思い思いに反応していた。

途中で披露された豹のギターソロは、アレンジが加えられており、聴き慣れた曲の中に新鮮さを差し込む。

MC

ここでMCに入る。

最初に口を開いたのは豹。

「シェルミィです。『くてん奇譚』ツアーということで、今日は4本目。

初めて梅田ODYSSEYさんにお邪魔しました」

その言葉に、フロアから拍手が起こる。

続けて豹は、会場周辺について触れる。

「この近くに、昔、梅田HOLIDAY(HOLIDAY OSAKA)っていうライブハウスがあってね。」

かつての景色を思い起こすようなその話に、フロアも静かに耳を傾けていた。

「ここ出てすぐのところにつけ麺屋さんがあるんやけど、よく行ったな」

と豹が言うと、爻が

「そんなこと言ったら、今日、(負け犬たちで)行列になるんちゃう?」

とツッコミを入れ、フロアから笑いが起こる。

さらに豹は負け犬たちに問いかける。

「みんな、お腹空いてる? 今日なんか食べた?」

手を上げる者はほとんどいない。

「みんな食べてないの!?」

と笑いながら、豹も

「俺も食べてないねん。今日は撮影が入ってるから、気休めかもしれんけど、いつもより控えてみました」

と続ける。

そして、

「じゃあお腹も空いたことやし、全部食べ尽くしていこうか!」

という言葉を合図に、次の曲へ。

その流れを察した負け犬たちの間からは、思わず歓声が上がった。

10曲目「過食性障害嘔吐」

10曲目「過食性障害嘔吐」は、激しいヘドバンで幕を開ける。

「全部全部食べちゃいたいな」

というBメロで、楽曲は徐々にヒートアップ。

やがてサビに入ると、

「あいむだいんぐふぉーちょこれーと!」

の掛け声とともに、負け犬たちが一斉にジャンプする。

ODYSSEYのフロアが上下に揺れ、熱気が一気に噴き上がった。

11曲目「フラッシュバック炉利ポップ」

「過食性障害嘔吐」の熱が冷めやらぬ中、豹が負け犬たちに向けて手拍子を促す。

「今から僕が『飴玉を頂戴』って言ったら、『飴玉を頂戴』って返してください。いいですか?

この飴玉は、ローソンやファミマでよく見かける飴玉に見えるかもしれないけど。

俺や友我くんや凌央くんの手を一回通ってるから、興奮が詰まってます。……あ、間違えた。俺が興奮してるわ」

その言葉にフロアから笑いが起こり、

「飴玉を頂戴!」

という声が何度も重なっていく。

その掛け合いを合図に、楽曲は「フラッシュバックロリポップ」へとなだれ込む。

ステージ上からは実際に飴玉がフロアへと投げ込まれた、ODYSSEYの空間は、一気に熱に包まれていった。

12曲目「メランコリックモラトリアム」

12曲目は「メランコリックモラトリアム」。

イントロで

「メランコリックモラトリアム」

というフレーズが繰り返されると、その瞬間を待っていたかのように、フロアでは歓声が上がった。

この曲は、かつてサブスクリプションでは配信されておらず、過去のライブ会場で配布された入場者限定CDでのみ聴くことができた楽曲だ。

2026年1月1日に配信されたアルバム「アニミズムエゴ」への収録により、長く待ち続けられてきたこの曲が、日常の中でも聴けるようになった。

楽曲はモッシュを繰り返しながら進行し、サビでは低音と手拍子が重なる。

快なリズムの中に、シェルミィらしい憂鬱さが含まれ、フロアはその流れに身を委ねていた。

13曲目「エキゾチックショートケーキ」

13曲目は「エキゾチックショートケーキ」。

直前の「メランコリック・モラトリアム」で生まれた軽快な空気を引き継ぎながら、さらに鋭さと毒を帯びた音がフロアに投げ込まれる。

イントロが鳴った瞬間、負け犬たちは再び激しくヘドバンを始める。

リズムに合わせて身体が上下し、サビでは「エキゾチックショートケーキ」と声を揃えて叫ぶ。

本編ラスト「リストカットベイビー」

本編ラストは「リストカットベイビー」。

負け犬たちは拳を上げ、声を重ねながら、残された力をすべて使い切るように暴れる。

ラストにふさわしい鋭さで、本編は締めくくられた。

アンコール

本編終了後、フロアからアンコールの声が上がり、ほどなくしてシェルミィのメンバーが再びステージへと姿を現す。

まずは、今回の「くてん奇譚」ツアーグッズの紹介が行われた。

Tシャツはライブ会場だけでなく日常でも着やすいデザインに仕上がっており、さらにチェキをアクセサリー感覚で持ち歩けるケースなど、シェルミィの世界観を普段の生活に取り入れられるアイテムが揃っている。

ライブの余韻をそのまま持ち帰れるようなラインナップに、負け犬たちは頷きながら耳を傾けていた。

アンコール1曲目「口裂け女」

アンコール1曲目は「口裂け女」。

この曲も、先ほど披露された「メランコリックモラトリアム」と同様に、アルバム「アニミズムエゴ」に収録された楽曲だ。

「綺麗になりたい 綺麗になりたい」

という叫びと共に、激しいモッシュや拳が繰り返された。

アンコール2曲目「非ノーマル」

アンコール2曲目は「非ノーマル」。

高揚感を煽るようなドラムが鳴り始めた瞬間、負け犬たちは素早く扇子を取り出す。

今回のツアーグッズには扇子は含まれていないものの、フロアでは過去のシェルミィのグッズの扇子が次々と開かれ、舞い始める。

これまでの公演で積み重ねられてきたシェルミィの歴史が可視化された瞬間だった。

アンコールMC

ここで豹のMCに入る。

「僕たち、9年間活動してきて……もっとバンドとして、ボーカルとして、男として、強くならないといけないなって思うこともあるし」

そう前置きしながらも、続けて

「でも、その一方で、みんなの気持ちを疎ましく思ってしまう時もあって」

と、正直な言葉を重ねていく。

「俺は、“シェルミィのボーカルの豹”なんで。
雨が降っても来てほしいし。だから、これからもついてきてください」

その語り口は飾り気がなく、言葉を選びながらも、視線はまっすぐフロアへ向けられていた。

目前に控えた結成10周年を前に、これからさらにバンドとして、より大きなものを掴みにいこうとする覚悟。

同時に、これまで歩んできた道のりや、積み重ねてきたもの、そして共に歩いてきた負け犬たちの存在を、確かに誇りに思っていることも感じられた。

前回のツアーファイナル「迷い子の理論」でも語られていた、ボーカルとしての立ち位置と役目を、改めて提示するような言葉だった。

アンコールラスト「放課後の凶室」

アンコール最後の曲は「放課後の凶室」。

チャイムの音が鳴り響くと同時に、負け犬たちは足踏みを始め、行進するようにフロアが動き出す。

この日一番の高揚感がフロアを包み込む。

前回の「泥」ツアーでは、必ずライブ1曲目に演奏されていた「放課後の教室」が、この日はアンコールのラストとして奏でられる。

こうして、「くてん奇譚」ツアー4公演目・梅田 LIVESPACE ODYSSEY公演は幕を閉じた。

まとめ|句点の先へ続く「くてん奇譚」

「くてん奇譚」というツアータイトルは、句点=終わりを示す言葉でありながら、決してすべての終わりを意味するものではない。

むしろ、その先に続く物語の存在を強く意識させる夜だった。

新曲「レイザインライチ」から始まり、過去の楽曲、ライブで育ってきた曲、そして長く待たれてきた音源化楽曲までが並ぶセットリストは、これまでの歩みを振り返ると同時に、現在のシェルミィの姿をはっきりと示していた。

アンコールで語られた言葉や、「放課後の教室」が最後に置かれた構成からも、結成10周年を目前に控えたバンドの覚悟と意志が伝わってくる。

句点の後に、どんな言葉が続くのか。

シェルミィの歩みから、今後も目が離せない。

シェルミィ

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この記事を書いた人

関西在住。大学では法哲学を専攻し、「ヴィジュアル系における自由と規律」をテーマに研究。音楽を通じた表現と社会的規範の関係性に関心を持ち、ヴィジュアル系という文化現象を美学・社会構造・言語の観点から読み解いてきた。現在はメディア運営者・ライターとして、執筆を通じてバンドの世界観を言語化し、ヴィジュアル系の魅力を広く伝える活動をしている。

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