
九州・福岡を拠点に活動するヴィジュアル系バンド「MERALOA」。
一度は解散という決断を経ながらも、再び同じ名前で再始動した彼らはいま、地域に根を張るバンドとして独自の存在感を放っている。
本インタビューでは、MERALOAの結成の経緯から解散・再始動の背景、そして現在の音楽観や九州シーンへの想いまで、ボーカル・Aineの言葉を通して紐解いていく。
MERALOAとは何者なのか|結成の経緯と原点

——まずは、MERALOAの結成の経緯と、これまでの活動について教えてください。
Aine:僕は元々、ロックバンドをずっとやっていました。
ギターのロイと同じ音楽系の部活に所属していたんですが、その部活にヴィジュアル系バンド「Hysteria」のYaoさんという先輩がいて。「ヴィジュアル系やってみたら?」と声をかけてもらったんです。
僕自身、90年代のヴィジュアル系が好きだったり、ロイもヴィジュアル系をやりたいという気持ちがあったことも重なって、「じゃあやってみようか」と。
ロイと僕を中心に、ロックバンド出身の2人を加え、4人で2017年に始動しました。
——活動初期はどのような状況だったのでしょうか。
Aine:みんな最初からヴィジュアル系をやっていたわけではないので、メイク然り、“ヴィジュアル系らしさ”を表現することにまず苦戦しましたね。
いざ活動を開始しても、初期は本当にお客さんが居なくて、イベントに出ても手応えがない状態でした。
——そんな中、どのように最初の壁を乗り越えてこられたのでしょうか。
Aine:「なんで伸びないんだろう」「どうしたらもっと良くなるか」というのは、常に考えていましたね。
他のバンドを沢山見て、どういう魅せ方をしているのか観察したり。
ヴィジュアル系って、いろんなジャンルの要素がミックスされているのが魅力だと思うんです。色々なバンドの良さを、自分たちなりに消化していく。その積み重ねで、だんだん“自分たちらしさ”が出来上がっていきました。
何かを本気でやっている人って、みんなそうだと思うんですけど、自分を客観的に見て、改善し続ける。その繰り返しだったと思います。
解散と再始動の背景|「夢」と「現実」の間で選んだ決断
——解散を経て、今回再始動に至った理由や背景について教えてください。
Aine:バンドを始めた頃って、やっぱり“成功する未来”しか想像していなかったんですよね。
でも実際に続けていく中で、全員が同じ熱量で走り続けることの難しさに直面しました。
僕はリーダーなんですが、振り返ると、当時は人をまとめる力もまだ全然足りていなかったと思います。
——当時はコロナ禍という状況もありましたよね。
Aine:そうですね。ライブができない状況が続いて、自分たちではどうにもできないことも多かったです。
情熱だけで乗り越えられるほど簡単なものでもなくて。それぞれが、音楽とどう向き合っていくか悩んだ時期でもありました。
時間をかけて話し合った結果、「それぞれの人生を尊重しよう」という結論になりました。
——解散という選択には、どんな想いがあったのでしょうか。
Aine:歌詞でも書いているんですけど、「夢って、叶えられないと呪いになる」と思っていて。
続けることで苦しくなってしまうなら、手放したほうがいいこともある。それよりも、MERALOAという存在が、人生の中で“プラスの思い出”として残るほうがいいなと。
あと、これが理由で4人の関係が壊れるのは絶対に嫌だったんです。「音楽がなくなっても、仲のいい4人でいたい」という気持ちは強かったですね。
本当は、目標のために冷徹になって突き進む選択肢もあったと思います。でも当時の僕には、それはできなかった。
——葛藤した末の決断だったのですね。そこから約5年を経て、再始動に至ったきっかけは何だったのでしょうか。
Aine:解散してからも、半年に1回くらいはみんなでご飯に行っていて。その中で、自然と「またやりたいね」という話が出るようになったんです。
ただ、「どのくらいの熱量でやるのか」という部分では、やっぱり差もあって。そんな中で、ロイが強く「やりたい」と言ってくれて、僕もそれに感化された形ですね。
——再始動を決めた決め手は何だったのでしょうか。
Aine:やり残したことがある、という感覚はずっとあったんです。
それに、5年経っていろいろな経験をしてきたからこそ、今の自分たちでアウトプットできるものがあるんじゃないかとも思いました。
あとは、当時はサブスクもなかったので、自分たちの音楽を残す手段が限られていたんですけど、今は違う。作品を“形として残せる”というのも大きかったですね。
——再始動にあたっても、バンド名はそのまま残されていますよね。
Aine:はい。そこは絶対にブレてはいけないと思いました。
もちろん、新しく始めるという意味では名前を変える選択肢もあると思いますが、僕らの場合は「当時の活動をなかったことにはしたくない」という気持ちが強かったです。
続いている部分もあるし、新しく作っていく部分もある。その両方を含めてMERALOAだと思っているので。
「変えるほうが違和感がある」という感覚に近いですね。自分の中では、すごく自然な選択でした。
再始動後の変化と不変|順応とこだわりの両立
——再始動にあたって、以前と比べて変化した部分はありますか。
Aine:まず大きく変わったのは、世の中そのものですね。
僕らとしては、5年ぶりに戻ってきた感覚なので、ちょっと浦島太郎みたいな状態というか。
当時はCDが主流でしたけど、今はサブスクが当たり前になっていて、「音楽そのものにお金を払わない時代」になってきている。
だからこそ、“ライブという体験”の価値をどう高めていくか、という意識はかなり強くなりましたね。
——では逆に、変わっていない部分はどこでしょうか。
Aine:根底にあるのは、やっぱり“ロックバンド”なんですよね。
僕らって、最初に音楽に触れたきっかけがヴィジュアル系ではなくて、ロックバンドなんです。
だからこそ、音楽に対する考え方も、どちらかというとロックバンド寄りだと思います。
ヴィジュアル系って、いい意味でも悪い意味でも“新陳代謝が激しい”カルチャーだと思っていて。短いスパンでリリースして、衣装も変えて、どんどん更新していく。
それ自体はすごくいいことなんですけど、僕らはどちらかというと、「これはかっこいい」と自信を持てるものしか出したくない、というスタンスなんです。
——リリースのスピードよりも、クオリティを重視していると。
Aine:もちろん、作品を出すスピードを上げることで、レベルアップする側面もあるとは思うんですけど。それで本質がブレるくらいなら、少しペースを落としてでも、長く愛される曲を作りたい。
そこは当時から変わっていない部分ですね。
コンセプトと世界観|“定義しない”という選択
——バンドとして大切にしているコンセプトや世界観について教えてください。
Aine:これ、すごく難しいんですけど……正直に言うと、「ない」んですよね。
まず「MERALOA」というバンド名自体に、意味がないんです。
——意味がない、というのは意図的なものなんでしょうか。
Aine:そうですね。名前をつけたのはロイなんですけど、「検索したときに別のものが出てくるのが嫌だ」「その言葉の意味そのものに自分たちがなる」という理由で、あえて意味のない造語にしました。
コンセプトや世界観も「最初から決めて縛るものではない」と思っていて。
自分たちが吸収してきたものを、自分たちなりに消化してアウトプットする。それが結果的に“MERALOAらしさ”になると思っています。
そうした理由から、衣装も外注ではなくて、僕自身が手作りしていますね。
楽曲制作とこだわり|「かっこいい」を突き詰めた先にあるもの
——楽曲制作において意識していることや、こだわりについて教えてください。
Aine:基本的には曲作りに関しては、大半をロイに任せています。
シンプルですが、「自分たちがかっこいいと思えるかどうか」を、一番大事にしていますね。
ロイの作る曲は、いい意味で「どこかで聴いたことがあるような感じ」があるんですよ。これって言い方を間違えると“パクリっぽい”とも取られかねないんですけど、そうじゃなくて(笑)。
いろんな音楽の要素を吸収し、自分の中でミックスして、最終的に“MERALOAのサウンド”として成立させているんです。
「このバンドのこの曲っぽいよね」で終わらせずに、自分たちの音楽として昇華できている。そこは結成当初からすごいなと思っています。
——型にとらわれない自由さも感じます。
Aine:そうですね。僕らは音楽学校に通っていたわけでもないし、完全に我流でやってきているので。
理論に縛られすぎていない分、いい意味で型にはまっていない部分があると思います。
——では、歌詞についてはいかがでしょうか。
Aine:歌詞は僕が全部書いています。
始動から間もない頃は「ヴィジュアル系っぽいものを作ろう」と意識しすぎていて、ちょっと難解な表現だったり、世界観に寄せすぎていた部分がありました。
それはそれで好きなんですけど、やっぱり“自己満足で終わる音楽”になってしまう可能性もあるなと。
今は、「どれだけストレートに刺さるか」をすごく意識しています。以前より、“自分の言葉”で書けている感覚はありますね。
どこかから借りてきた表現ではなくて、日々思っていることを伝える。再始動後で言うと、「HALCYON」は特に象徴的な曲ですね。
「HALCYON」に見る進化|構成美と“体験”としての楽曲
——「HALCYON」をはじめ、最近の楽曲に込めた想いや、注目してほしいポイントを教えてください。
Aine:僕らの楽曲って、けっこう“リズムと構成”を重視しているんですよ。
多くの人は「どんな曲?」って聞かれたときに、サビを思い浮かべると思うんですけど。本来、楽曲ってサビだけじゃなくて、イントロからAメロ、Bメロ、サビ、ブレイク、ソロ……と、全部が繋がって一つの作品になっている。
——いわゆる“フルコース”としての楽曲ですね。
Aine:はい。その中で、「このリズムの後にはこの展開が来るべきだよね」とか、逆に「あえてここで崩してみようか」とか、パズルみたいに組み立てていくんです。
いい意味で、サビだけが強く印象に残るわけではない。曲の最初から最後まで、ちゃんと“流れとして気持ちいいかどうか”をすごく大事にしています。
——かなり設計された楽曲なんですね。リズムや構成がしっかりしていると、一曲の中でもずっと同じ動きではなく、セクションごとに違う暴れ方ができる。それって、ライブ体験としてすごく重要ではないでしょうか。
Aine:まさにそうですね。昔はそこまで意識していなかったんですが、再始動後、構成の重要性を強く意識するようになりました。
そこから、楽曲全体の完成度も上がってきたと思います。
九州ヴィジュアル系シーンの今|原石が集まる場所
——福岡・九州のヴィジュアル系シーンについて、どのような想いを持っていますか。
Aine:ちょっと言い方が難しいんですけど……“才能のかけら”というか、“原石”がたくさん埋まっている場所だと思っています。
そもそも、東京に比べて人口も少ないですし、バンドの数も限られている。その中で「やろう」と思って動いている人たちって、相当クレイジーだと思うんですよ。
——確かに、環境的には厳しい部分も多そうですね。
Aine:そうですね。イベントの数も少ないし、バンド同士の競争も限られたパイの中で行われる。例えるなら“すごく狭い盤面でチェスをしている”ような感覚に近いです。
ただ、その中で続けている人たちは、間違いなく強い情熱を持っている。
だからこそ、何かのきっかけで一気に跳ねる可能性を持っている場所でもあると思っています。
——可能性と過酷さが共存している環境なんですね。
Aine:はい。実際に、九州で活動していたバンドが上京して活躍しているケースも多いですし、やっぱり“原石”は確実に存在している。
ただ、それが表に出るまでのハードルが高いだけで。
——最近は海外からの反応も増えていると聞きました。
Aine:そうなんですよ。海外からのお客さんがライブに来ることも増えていて、旅行のついでにヴィジュアル系のライブを探して来てくれる方もいます。
九州は地理的にもアジア圏に近いので、国内だけじゃなく、外に向けて発信していく余地もある。
その意味でも、九州のシーンはまだまだ面白くなる場所だと思っていますね。
ライブで届けたいもの|“一緒に育てる”という体験

——ライブで特に大切にしていることや、ファンに届けたいものは何でしょうか。
Aine:やっぱり“距離の近さ”は大きいと思います。
いい意味で、地元のバンドってすごく近い存在なんですよね。
例えば、九州の人がディズニーランドに行くってなると一大イベントじゃないですか。でも、東京に住んでいる人にとっては日常だったりする。
それと同じで、東京のバンドを観に行くのは特別な体験でも、地元のバンドはもっと身近な存在なんです。
——確かに、日常の延長線上にあるライブ体験ですよね。
Aine:はい。だからこそ、その中でどこまで“物語”を見せられるかが大事だと思っています。
MERALOAは、キャパ40〜50人くらいの小さなライブハウスからスタートして、そこから少しずつ規模を上げていって、ステージが変わっていく過程をファンと一緒に体験してきました。
キャパが一つ上がるだけでも、ファンの人たちにとってはすごく大きな変化だし、その景色を一緒に見て、一緒に感動できる。
それって、なかなか他の場所では味わえない体験だと思うんです。
——バンドとファンが一緒に成長していく感覚ですね。
Aine:そうですね。
同じ時代に、同じ熱量で関わっているからこそ、生まれる関係性だと思っています。
ただ音楽を聴くだけじゃなくて、その過程や変化も含めて体験してもらう。そこに意味があると思っています。
再始動1周年公演の意味|通過点としての一手
——再始動1周年公演に向けた意気込みや、見どころを教えてください。
Aine:今回の1周年公演は、「記念だから祝う」というよりは、あくまで“通過点”という位置づけです。
むしろ、ここからどう動いていくのか、そのスタートになるライブだと思っています。
——区切りではなく、次に進むための一歩なんですね。
Aine:そうですね。
新しい人が入ってこないと、どうしても停滞してしまう。だからこそ、自分たちが“台風の目”になって、シーン全体を動かしていく必要があると思っています。
そのために、この1周年公演は一つの起爆剤にしたいですね。
——対バンイベントでありながら、無料公演という点も印象的です。
Aine:ライブハウスって、初めて来る人にとってはハードルが高いと思うんですよ。気になってはいるけど、一歩踏み出せない人も多い。
そういう人たちが「ちょっと行ってみようかな」と思えるきっかけにしたくて、無料という形にしています。
——そこから新しい循環が生まれていくと。
Aine:はい。実際に来てもらって、「楽しい」と思ってもらえたら、その人がSNSで発信したり、友達を連れてきたりして、次の人に繋がっていく。
さらにそこから、「自分もバンドをやってみたい」と思う人が出てくるかもしれない。そういう“好循環”を作ることが大事だと思っています。
——バンド自身のためだけではなく、シーン全体を見据えた企画なんですね。
Aine:そうですね。
今回も、いろんなバンドに声をかけて、想いに共鳴してくれた人たちと一緒に作っているイベントなので。
ただの1周年ライブではなくて、「ここから一緒に上がっていこう」という意思を共有する場にしたいです。
MERALOAのこれから|「福岡で最強になる」という選択
——これからのMERALOAの展望について教えてください。
Aine:今後の展望としては、“よりコアに、より局所的に”ですね。
広く展開していくというよりは、福岡・九州という場所で、しっかり根を張って、一番強い存在になることを目指したいと思っています。
遠征って、お客さんにとっても僕らにとっても決して簡単なことではないんですよ。
それよりも、地元で圧倒的な存在になって、ここに牙城を築くことに意味があると思っています。
——かなり明確なビジョンですね。
Aine:東京や大阪のバンドに「福岡行ってもMERALOAいるから勝てないぞ」と思わせたり、「一緒に2マンやらせてください」って言われるくらいの存在になりたいですね。
自分たちがそのポジションを築くことで、下のバンドも「超えたい」と思えるし、シーン全体が活性化していくと思うんです。
——最後に、読者やファンに向けて、メッセージをお願いします。
Aine:もしこの記事で初めてMERALOAを知った方がいたら、ぜひ一度ライブに来てください。音源だけでは伝わらない部分が、ライブにはあるので。
そして、今応援してくれている方。
これから、一緒に景色を変えていけたら嬉しいです。
ただ観るだけじゃなく、一緒に作っていく。その過程も含めて、楽しんでもらえたらと思います。
まとめ|MERALOAは地域からカルチャーを更新するパイオニア
MERALOAは、ロックバンドをルーツに持ちながら、ヴィジュアル系という表現の中で自分たちなりの答えを模索し続けてきた。
一度は解散という決断を下しながらも、「当時をなかったことにしない」という選択のもと、同じ名前で再び歩み始めた彼ら。
その背景には、音楽への誠実さと、メンバー同士の関係性を大切にする姿勢があった。
再始動後は、時代の変化に順応しながらも、“かっこいいと思えるものしか出さない”という軸は変わらない。
そして今、彼らが見据えているのは、全国展開ではなく“福岡で最強になる”という明確なビジョンだ。
地方という環境をハンデではなく強みに変え、シーンそのものを動かしていく存在になること。
その挑戦は、単なる一バンドの活動にとどまらず、九州ヴィジュアル系シーン全体を押し広げていくだろう。
MERALOAのライブは、共に育ち、共に景色を変えていく“物語”そのものだ。
その最前線に立つ彼らのこれからを、ぜひその目で確かめてほしい。
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2026.05.20(Wed)
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