【インタビュー】umbrellaとは|大阪で、まだ見ぬ景色を。音楽で路地裏に光を灯す、空間系オルタナティブバンド

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独自の音楽性で存在感を放ち続けるヴィジュアル系バンド、umbrella。

今年で結成16周年を迎え、主催イベント「路地裏サーチライト」の開催も発表した。

本インタビューでは、メンバーそれぞれのルーツから楽曲制作のこだわり、ライブで届けたい体験、そしてシーンの中での立ち位置まで深掘りする。

音楽に真摯に向き合い続ける彼ら自身の言葉から、その本質に迫った。

目次

umbrellaとは|特殊な立ち位置を築いてきた背景と音楽的ルーツ

——まずは、umbrellaがどのようなバンドなのか、初めて知る方に向けて教えていただけますか。

唯: ヴィジュアル系の中ではずっと正統派だと思ってたんですけど、今となってはすごく珍しい、オルタナティブな音楽をしてるバンドだとよく言われます。
ギターボーカルという編成も昔からずっとやっていて、ちょっと変わった編成のバンドという感じですかね。

唯
Vocal / Guitarl:唯

——umbrellaの皆さんご自身、「オルタナティブをやりたい」と意識されている部分はありますか。

唯: いや、それに固執した感じやっているわけでもなくて。僕の場合は、元々オルタナとかグランジとかが好きで曲を作ってるので、必然的にそうなってきたのかなと思います。メンバーが全員オルタナが好きとか、そういうもので集まったわけではないんですよね。

——なるほど。唯さんご自身がよく聴いていたバンドや、影響を受けたアーティストについても教えていただけますか。

唯: もともとやってたのが、Coccoみたいなバンドで。ヴィジュアル系の畑じゃないところでずっとやってたんです。ニルヴァーナとかスマパンみたいな音楽を聴いて、そういう音楽を作ってきた。
どっちかというと、お茶の間でよく耳にする、チャートとかに載ってるアーティストさんばっかり聴いてたような感じですね。

——ヴィジュアル系ではこのバンドをよく聴いていた、というのはありますか。

唯: 僕がヴィジュアル系としてすごいなと思ったのは、やっぱりその当時は X、LUNA SEAですね。hideさんから始まって、(ヴィジュアル系と言うべきか)わかんないですけどラルク、GLAYとか。で、ドハマりしたのがCASCADEというバンドですね。彼らがヴィジュアル系なのか、当時の僕はわからんかったんですけど。後々深掘りしたらヴィジュアル系やったみたいです。

——ポップスからオルタナ、グランジ、そしてヴィジュアル系の有名どころまで、幅広く聴いて育ってこられたのですね。柊さんはいかがでしょうか。

柊: ギターを始めたきっかけはSEX MACHINEGUNSですね。やっぱギタリストっていう特性上憧れもあって、洋楽のギターヒーローがいるような曲はたくさん聴いてました。
あとはBUMP OF CHICKENも大好きですし、アンビエントだったりシューゲイザーも。一時期は残響レコードばっかり聴いてましたね。
でも一番ルーツにあるのは、ハードロックとかヘヴィメタルなのかもしれない。ヴィジュアル系だとX、LUNA SEA、ラルクだったり、DIR EN GREYあたりも好きですね。

——メタルから残響系まで、こちらも相当幅広い。将さんはどういうきっかけで音楽を始められたのですか。

将: 僕は楽器を始めたきっかけが、音楽への憧れじゃなくてドラム教室なんですよ。小6の頃に通い始めて、いいドラムって何だろうと追いかけていくうちにフュージョン方面にはまりました。
高校でバンドをやることになって、グリーン・デイとかSUM41をやるようになってからは、メタルの方にも走っていきましたね。
ちなみに最初にドラム教室で叩いたのは先生の趣味で、サンタナでした。

——ドラム教室からスタートというのは珍しいですね。春さんはいかがでしょう。

春: 音楽的なルーツでいうと、子どもの頃楽器を始める前は、小沢健二さんが大好きでした。
そのあと黒夢にハマって、そこから黒夢が活動休止して、清春さんがSADSを結成されて。もう、学生の時は本当にめちゃくちゃ聴いてましたね。CDも発売日に全部買いに行って、すごいドハマりして。大好きな存在ですね。

——清春さんから影響を受けられた部分が大きいのですね。

春: そうですね。清春さんの動向を雑誌で追っていく中で、FOOL’S MATEとかを読み出したっていうのもあったので。それでヴィジュアル系の世界を知って、いろんなバンドに興味を持っていった感じです。
やっぱり清春さんが一番原点ですし、かっこいいですね。

サビから始まる楽曲制作|「聴かせる」ことを軸にしたアプローチ

——皆さん多様なルーツをお持ちですね。そんな4人が集まったumbrellaの曲作りは、どこから始まるのでしょうか。コンセプト先行なのか、「こんな音楽やりたい」から始まるのか。

唯: コンセプトをその場で考えて作るというより、もともとストックが多くて。メンバーが「こういう曲をやりたい」とか「次はこういう攻めた曲やりたい」と言ったら、ストックの中から「これどうやろ」って送るような感じです。
作り方として一番徹底してるのは、サビから作るっていうところです。古い考えかもしれないですけど、やっぱり音楽ってサビが一番大事じゃないの、っていうのが自分の中にあって。ノリ重視というよりも、まずサビを作ってから、そこにいろんなパートを肉付けしていく感じでやってますね。

——なるほど。気持ちよく観客を暴れさせる、というよりは、聴いてもらう・聴かせるのを重視しているのですね。

唯:そうですね。基本的に音楽って聴くところから始まると思ってるんで、ノリは後かなっていう感覚です。ヴィジュアル系特有のノリ重視の音楽ってすごく楽しいとは思うんですよ。僕もMUCCとか聴いてると、ノリかっこいいなって思うし、盛り上がってるのを見ると羨ましいなって気持ちもあるんですけど。
でも、自分のスタイルとしては、まず曲ありきですね。

——面白いですね。逆にノリ先行というパターンも聞きますし、同じヴィジュアル系でもバンドによって全然違うんだなと。

唯:そういう対バンも今後あったら面白いなとは思いますね。
最近はノリ重視のイベントが多いですけど、昔はもっとごちゃ混ぜやったじゃないですか。歌もののバンドと激しいバンドが一緒にやってたりとか。違う方向性同士でぶつかるのも面白いやろうなって思いますし。逆に僕らみたいなところにノリ重視の人が来て、ちょっとした“洗礼”を受けるみたいなのも面白そうやなと思って。
客席がどよめく感じとか、見てみたいですね。

——2月5日のYAHIROCK FESを拝見したのですが、あの時は出順がすごく綺麗なグラデーションになっていたように思います。暴れ盤、キラキラ、泣けるバンド、そしてumbrellaさんと。

唯:いいっすよね。ああいうグラデーションって、幅広い音楽性があるからこそできると思うし、それもヴィジュアル系の魅力やなって思います。
でも、だからといってumbrellaが静かなわけじゃないっていうのも面白いところです。メロディーを作った後は、すごい激しくなったりもするんで。意外と大人しいだけじゃない、というのが最近のumbrellaやと思いますね。

メロディーと詞の緻密な設計|umbrellaらしさを生むこだわり

——制作時に大切にされているこだわりについても、お聞かせいただきたいです。

唯:特に大事なのがやっぱりメロディーなので、そこをないがしろにすることは絶対にしないです。
あとはこだわりで言えば、あんまり同じフレーズを使いたくないというか。よくある「これ聴いたことあるな」「これ誰でもやるやろな」みたいなフレーズは、あんまり容認しないところがありますね。せっかく新しいものを作ろうとしているので。
ただ、umbrellaを長くやっている中で生まれてきた手癖のフレーズとか、「これこそumbrellaやな」っていうものは入れたりもしますね。フレーズやコード、響きが特殊であるからこそ、この音楽は成り立つんやろうな、と思ってます。他のメンバーのフレーズにもこだわりがあると思うので、僕だけではないですけど。

——基本的には、唯さんが曲を作られて、それを他のメンバーの皆さんが編曲していくような流れでしょうか。

唯:そうですね。僕は「ここはこういう感じの盛り上がりですよ」みたいなことを言葉で説明するのが下手くそなので、フレーズとかも作り込んだ状態で送ることが多いです。
そのあとはメンバーに家へ来てもらって、その場で時間をかけて「やっぱこのフレーズこうしていこうぜ」みたいなことをやっていますね。「このフレーズはいい」と思ってくれたら採用するし。メンバーが自分なりに考えてきたものを聴いてみて、良いなと思ったらそっちを入れる、という感じです。

——一旦できあがったものを、全員で磨き上げていくイメージですね。他のメンバーの皆さんはその段階で、どんなこだわりを持ってやっていますか。

柊:基本的に、ほぼほぼ固まった状態でのデモが上がってくるので、それに対して足し算をするか引き算をするかを考えるぐらいですかね。
大きく曲の雰囲気を変えることはあまりせずに、その中で「自分ならどう弾くかな」っていうのを提案していきます。それが全然当てはまらないこともありますし、逆に自分でも考えつかなかったようなことが、その場で出てくることも勿論あります。曲がもともと持ってる音像だったり雰囲気を、壊さないようにっていうのが大前提で。「ここでこんなフレーズいらんやろ」みたいなのは、ある程度長くやってると分かるので、そこを汲み取りながらやっています。
ただ、やっぱり楽器なので、同じフレーズだとしても弾き手が変わると、ニュアンスや雰囲気は変わると思いますね。

柊
Guitar:柊

将:ドラムを大きく変えるとだいぶ曲が変化してしまうんで、僕もそんなに大きく変えることはないんですけど。ただ、あんまりなさそうなフレーズがあったら持ち込んでみたりとか、そういう提案はしますね。大体却下されるんですけど。(笑)

唯:特殊すぎんねん!(笑)

——(笑)結構、特殊なフレーズを提案されるんですか。

将:そうそうそう。まあそういうのが好きなんで、一応提案はしてみるって感じですね。
結局全体の印象って、細かい部分——サウンドのクオリティであったり、いろんな影響が絡み合って1個の印象になると思うので。フレーズだけじゃなくて、どんな音を使うかとかも含めて、全部バランスを取ってやっていく感じですね。

——春さんはベーシストとしてどういう意識で臨んでいますか。

春: ベースって目立つことも目立たないこともできる楽器なんで。特に歌のメロディーラインとかギターとどう混ざるかは意識しますね。ベースだけ単体で聴いても「おっ」ってならない部分もあると思うんですけど。混ざった時に一番しっくりくるかなっていうところは、唯くんとディスカッションしながら、いろんな提案をしてやっていってますね。

——音が重なり合い、最終的にどう聴こえるかっていうところですね。

春: そうですね。ベースは単音で弾く楽器ですし、一番低音を支えるので、実際に流してみたときに印象が変わりやすい楽器じゃないかなと思います。

——歌詞を書いてらっしゃるのは唯さんですね。書く上で、どのようなこだわりがありますか。

唯:僕ね、フォークソング的な詞割りがめっちゃ苦手なんですよ。結構語呂が悪いというか。自分の好きな音楽って、歌詞の母音がしっかり揃ってたりとか、1回目のサビと2回目のサビが同じ構造で韻を踏んでるようなものが多くて。1フレーズの終わりでちゃんと歌詞が終わる。息継ぎのところで音がパッと止まったときにちゃんと歌詞も終わる。みたいな、メリハリのある作り方をしてますね。
やっぱり「キャッチー」ってそこかなと思うんですよ。歌ってるときに「ここやな」って分かる感じというか。いかにメロディーと歌詞がリンクするか。そこはもう絶対徹底してます。
言葉の意味もそうで、例えば、次のサビで意味は違っても音は一緒にするとか。そうするとどっちも歌いやすくなるし、聴きなじみも出るじゃないですか。最初が「あ」で次が「お」になると、ちょっと響きが変わってしまうので。
あとは、意味の面でもダブルミーニングにしたりとか、いろいろ仕込んでもいます。

ライブで生まれる体験|非日常と居場所

——ライブでは、umbrellaはどのような体験を届けていると感じられていますか。

春:やっぱり、自分たちが学生の時にライブに行ってハマって、そこからバンドを始めたりとか、今に繋がってる部分があると思うんですよね。
昔観てたライブって、極端に音がでかいとか、世界観がすごく偏ってるとか、そういうものにすごく影響を受けていて。日によってコンセプトは変わると思うんですけど、「この日は極端に激しくしたいよね」とか、「重くしたいよね」とか、そういう振り切った方向に持っていくことは意識してます。みんな日常の中で来てくれていると思うので、非日常に振り切った体験はしてもらいたいなと。
ライブハウスって、チケットを持ってる人がみんな平等に楽しめる場所だと思うので、そこに来たら日常の嫌なこととかも全部忘れられるような空間にしたいっていうのはありますね。

春
Bass:春

唯:一緒ですね。(笑)僕もライブを観に行く側として、やっぱり気持ちよく観れて「楽しかったな」っていう余韻が残る体験がいいなと思っていて。
最近だと、大阪でスマパンのライブを観に行ったときに、好きな曲が流れた瞬間に思わず声が出たんですよね。ああいう、自分が音源で聴いてたものが実際に流れたときの感動とか、終わったあとにちょっと浄化されたような「ああ良かった」っていう気持ち。そういうものを、来てくれた人にも感じてもらえるような音楽にしたいですね。

春:あと、来てくれた人たちに居場所を提供する、みたいな部分もあるじゃないですか。特に若い人たちって、居場所が学校か家ぐらいしかない中で、そのどっちもうまくいかなかったら「自分に居場所がないんじゃないか」って感じてしまうこともあると思うんです。その中で、もう一つの居場所としてライブっていう場所は存在すべきやと思う。
家でもない、学校でもない、職場でもない場所を提供し続けたいなっていうのはありますね。

唯:ファンレター読んでると、仕事終わりに急いで来てくれるお客さんも結構いるんですよ。いいっすよね。
仕事終わりって疲れてると思うんですけど、よく「仕事終わりのビールがうまい」って言うじゃないですか。僕はお酒飲まないんですけど、その感覚でライブに来て、「うわ、良かった」って気持ちよくなって帰れるのって最高ですよね。いい娯楽というか、終わった後のご褒美になれたらいいなと思いますね。

——日常のストレスとか、息苦しさを吹っ飛ばしてくれる存在というか。

唯:そう考えたらすごいですよ。仕事終わった後疲れてんのに、まだ暴れられるんかと。いや、すごい体力してんな〜!と思いますね(笑)

——本当にそうですね!柊さんはいかがでしょうか。

柊:最近、音楽って芸術性とエンターテイメント性のバランスがすごく難しいなと感じてて。
同じ曲でも、涙を流す人がいたり、しんどい気持ちになる人がいたりする。それって感情が揺さぶられてるという意味で、芸術性に近い部分もあると思うんですけど、ライブハウスに行くという行為自体がまだ特殊な体験でもあると思ってます。だからこそ、その場でしか起きない体験をどう届けるかはずっと課題ですね。
umbrellaはバラードもあるので、「曲を聴いて感動した」と言ってもらえることもあって、そういう空間はある程度作れているのかなとは思います。
以前、岡山のライブハウス『ペパーランド』のオーナーの方のインタビューで「ライブハウスの扉が重たいのには理由がある」っていう話を読んだことがあって、すごく印象に残ってるんです。内容としては「ライブハウスは人生が変わる場所なんだ」という話で。
自分たちも音楽に人生を変えられてここにいるので、来てくれる人にとって、新しい扉を開くきっかけを提供できていたらいいなと思います。

「重い扉」には理由がある。昨日が惜しけりゃライブハウスには近づくな – イーアイデム「ジモコロ」

——本当に、人生が変わる場所ですよね。もちろん日常のストレスを発散してまた戻る、という側面もありますけど、それだけじゃなくて、音楽との出会いや人との出会い、新しい世界を知るきっかけにもなりますし。

将:今の話とも近い部分はあるかもしれないんですけど、僕が届けたいなと思っているのは「衝撃」ですね。
僕自身、ライブを観に行っても、暴れるとか盛り上がるっていう感覚があまりない人間で。後ろの方で、わりと冷静に観るタイプなんですよね。
ただ、それでも「これはすごく良かったな」っていうライブに出会ったときって、自分の存在がなくなる感覚があるんですよ。その場にある音に溶けていくというか、自分と周りの境界線がなくなって、その空間と一体化するような感覚ですね。そういう体験を提供できたらいいなと思ってライブをやっています。

将
Drums:将

「路地裏サーチライト」の成り立ちと想い|隠れた名店に光を当てる

——2026年6月23日に開催される「路地裏サーチライト」。このイベントについて、まだ知らない方に向けて教えていただけますでしょうか。

春:最初の始まりとしては、2014年ぐらいかな。今みたいな規模じゃなくて、もっと小さいライブハウスで活動してた時。自分たちメンバーが「このバンドいいよね!」って思えるようなバンドを集めて、「とにかく音楽がかっこいい、ライブがいい、内容重視に振り切ったイベントをやろう!」っていうのが始まりですね。
当時の大阪のインディーズって、6バンドとか8バンドとか詰め込むイベントが多かったんですけど、そこをあえて4バンドぐらいに絞って、ちゃんと演奏時間も確保して。「来てくれたら絶対いい音楽に出会えますよ」っていうイベントにしよう、という趣旨で始まりました。

唯:「サーチライト」っていうのは、自分たちがいいと思う音楽に光を当てよう、っていう意味でつけています。
で、「路地裏」っていうのも、人気がないという意味じゃなくて。路地裏にある名店ってあるじゃないですか。表通りの有名なお店ももちろんいいけど、ひっそりとある名店ってすごいと思うんですよね。そういうところに光を当てて、「ここにこんなにいいものがありますよ」っていう感覚でタイトルをつけました。
なので、自分たちがおすすめしたい一品を紹介するようなイベント、っていうイメージですね。「自分たちが本当に好きかどうか」が基準で、好きじゃないと置かない店、みたいなイメージです。ちょっと癖の強い店というか。

春:長くやっていく中で、イベント規模も大きくなってきたので「このバンドもっと知られていいのに」って思ってたバンドが、今は人気になってきてたりもしています。
最初の頃は、自分たち自身がそういう立ち位置やったっていうのも大きいですね。やってた会場も、いわゆるメインの場所じゃなくて、大阪の中でもちょっと外れた、ほんまに“路地の中の路地”みたいなところで活動していたので。
だから、どの規模になっても「路地裏サーチライト」をやっていくっていうのは、それが自分たち自身を表してる言葉だから、でもあると思うんですよ。

唯:路地裏みたいな場所で生まれてきたバンドとして、その感覚を大事にしながら、自分たちが本当にいいと思うアーティストを紹介していくイベントですね。大先輩でも関係なく、「いいと思ったらオファーをする」っていう形でやってます。

——ちなみに、出演オファーするバンドさんは、umbrellaさんと交流が深いバンドが中心でしょうか。それとも、対バン経験がなくても「このバンドはぜひ」と思ったら声をかけていますか。

春:特に交流がなくてもオファーする方針ではあります。実際、対バンしたことがないけど声をかけてるバンドも結構いますし。

唯:まあでも、基本「好き!」っていう。

春:そうそう。音楽に対してリスペクトがあるかどうか、っていうところですね。

唯:普段から、よく春と「あのバンド呼びたいよな!」「これは来年絶対呼ぼうな」みたいな話をするんですよ。来年やるかどうかに関係なく。実際にイベントが決まったら、ある程度目星をつけていくという感じですね。

——隠れた名店って、隠れているからこその良さもあると思うんですけど、そのスタンスを保ちながらやっていくのか、前に出ていくのか。「路地裏サーチライト」がこれからも続いていく中で、どういう未来を描いていますか。

唯:ビジョンの話をメンバーでしっかりしたことはないんですけど、僕個人としては、路地裏から表に出ていくぞ、みたいな野望はありますね。
やっぱり、路地裏にあったものが表に出てきて、「こんなすごいものがあったんや」って思わせるような存在になれたらいいなと思っていて。表にあるお店に「あっ」と言わせるような。別に喧嘩を売るとかじゃないんですけど、今までひっそりやってきたものが注目されて、いわゆるメインカルチャーのところにも影響を与えられるような、そういうイベントにはしていきたいですね。規模も大きくしていきたいとは思ってます。
ただ、大きくするからといって、誰でもいいみたいなイベントには絶対にしない、というのは決めていて。そこはちゃんと守りながらやっていきたいなと思っています。

春:umbrellaも16年やってきて、関西のヴィジュアル系シーンの中でもかなり長いバンドなんですね。現存しているバンドの中でも2番目くらいに長いんじゃないかな。じゃあ自分たちがどういう姿を見せていくのかを考える中で、大阪で活動しているバンドとして、「大阪で」こういうイベントをやるっていうのは一つ大事なことやなと思ってます。
やっぱり近年、いいイベントを観られる機会自体が減っているので。実際、開催を発表するたびにお客さんからの反響も大きいですし、「umbrellaがやらないとこういうイベントは観られない」と認識してもらっている部分もあって。
だからこそ、自分たちがやり続けることで、大阪でしっかりいいイベントが観られる環境を残していきたいなと思っています。

柊:俺も「大阪で」っていうのがデカいかなと思いますね。どうしても、メインは東京っていう打ち出し方になりがちだと思うんですけど、せっかく在阪で活動してるんで。大阪を盛り上げたいなっていう気持ちはメンバー全員あると思うんですよね。
だから、「大阪といえばumbrella」「umbrellaといえば路地裏サーチライト」って言われるくらいの存在になれたら嬉しいですね。

柊
Guitar:柊

将:それこそ、年々ヴィジュアル系のバンドが減っていってる印象はあるんですけど。だからこそ大阪でこういうイベントをやって、それに影響を受けた若い世代が、またバンドを始めたり、シーンに入ってきてくれたらいいなっていうのはありますね。
僕ら自身も、もっと大きな所でやれるように、この先の景色をもっといいものにするために、結果を出していきたいです。

ジャンルを越境する存在|ヴィジュアル系の枠に収まらない、独自の立ち位置と強み

——では、このヴィジュアル系というジャンルの中で、umbrellaさんはどのような存在、立ち位置だと考えていらっしゃいますか。

唯:昔、前のバンドの時からギターボーカルをやってたんですけど、よくライブハウスの人に言われてたのが、「どこ(のイベント)に出したらいいかわからないバンド」っていう位置づけやったんですよ。今思うと、それって逆に強みなんちゃうかなって。どこに出したらいいかわからないって、裏を返せばどこでもいけるってことやなと。
そういう意味で、ちょっと独特で特殊なバンドっていうのも、面白いなと最近は思い始めてます。

春:ギターボーカルのバンドも居ない時代でしたし。特に初期の頃は。ブッキングする人も組みにくかったんでしょうね。

唯:曲調もヴィジュアル系らしくないって言われて、「ロックバンドと対バンする?」みたいな言い方されたりとかね。実際、ロックバンドとも何回も対バンしてきました。
そういう経験もあって、「オールジャンルいけるバンドやな」って最近思って。今は強みになってますね。見た目はメイクしてるから色物に見られがちなんですけど、ライブを観てもらうとちゃんと盛り上がってくれるので、ありがたいですね。
昔、シューゲイザーのイベントも出たよな?

春:シューゲイザーフェスみたいなやつ?

唯:そうそう!

——umbrellaを追っているファンの方も、いろんなバンドが観られて面白いですね。

唯:僕、そう思って欲しいんですよね。
やっぱりヴィジュアル系のお客さんって、ロックバンドの現場に行くとノリの違いで萎縮してしまうこともあると思うんです。でも、ロックバンドを観たあとにCD買ったりしてるっていう話もよく聞くんですよ。意外と楽しんでくれてるんちゃうかなって安心感はあります。
あと、「うちのお客さん音楽好きやな」っていう自慢もあります。自慢できるファンやなって。

唯
Vocal / Guitar:唯

柊:自分たちが活動し始めた頃と比べても、ヴィジュアル系のシーン自体はかなり変わってきてると思うんですけど、やっぱり中にいると気づかないことも多いんですよね。それがいいことなのか悪いことなのかは分からないですけど、結局はやりたいことをやって、「自分たちはヴィジュアル系だ」って言っていくだけなんじゃないかな、とは思ってます。
長くこのシーンでやってるっていうのは、それだけ誇りもあることですし、ヴィジュアル系だからどう、というよりは、自分たちがやりたいことをやるのが先かなと。若い頃は「ヴィジュアル系とは」みたいなことを考えてた時期もあったんですけど、今はあんまりそういうのはなくて。結果的に、好きなことやってたらヴィジュアル系でした、くらいの感覚というか。
シーンに対してどうこうというよりは、umbrellaとしてどう生きていくか、ということかなと思いますね。

春:柊くん言うように、やっぱり好きなことをやるっていうのはすごく大事やと思っていて。
さっきの「路地裏サーチライト」の話にも繋がるんですけど、大阪でちゃんとイベントをやっていく中で、いわゆる“ビジネス的な匂い”が強くなりすぎないというか、ちゃんと現場が好きでやってるんだなっていう空気感は出していきたいなと思ってます。それは多分、umbrellaやからできることでもあると思うので。自分たちが主体でやってるイベントだからこそ、好きなことをやる姿勢は見せ続けたいですね。
ヴィジュアル系かどうかに関係なく、好きなことを突き詰めていく。その結果として、「あいつら好きなことやってるよな、しかもちゃんと盛り上げてるよな」って思ってもらえたらいいなと思います。

春
Bass:春

唯:そのためには、やっぱり新しいことを怖がらずにやっていって、自分たちらしさを貫いていくのも大事やと思ってて。好きなことをやるって、どうしても周りから見たら異質になりがちですけど、前例とかセオリーばっかり気にしてたら何もできなくなるので。
せっかくアーティストやし、面白いことやった方がいいじゃないですか。それぞれが好きなことをやってたら、どこかで交わって、出会って、それがシーンになっていくんやと思うんですよ。そういう意味でも、いろんな音楽シーンがぶつかって混ざる場は、今すごく大事なんじゃないかなと思います。
僕らはメイクして衣装を着てやっているので、分類としてはヴィジュアル系ではあるんですよね。だからといって、「ヴィジュアル系はこうしなきゃいけない」っていうものにはとらわれたくない。
いろんなところに出ていくし、いろんなことをするし、好きなことはやる。ある意味わがままなバンドとして確立できるような立場でいたいと思ってます。

ファンとの関係性|音楽を軸に信頼を築き、一緒に大きくなっていく存在

——umbrellaさんにとって、ファンの方はどのような存在でしょうか。

唯:ファンが大切っていうのは当たり前なんですけど、それ以上に、やっぱり本当に音楽が好きなんやなっていう人たちが集まってくれているっていうのが、一番ありがたいなと思ってるところですね。
僕らって、いわゆるヴィジュアル系に特化した分かりやすい見せ方をしてるわけでもないですし、派手な特徴があるわけでもないかもしれないんですけど、それでも来てくれている人たちは、ちゃんと音楽を好きになってくれてる人たちなんで。僕はすごく誇りに思ってますし、感謝してますね。

柊:そうですね。本当に感謝しかないですね。自分たちは自由に好きなことをやっているだけなのに、それを応援してくれる人がいるっていうのは、ありがたいなとしか言えないです。やっぱり聴いてくれる人がいないと成立しないですし、届けたいもの、見てほしいものがあるから活動しているので。
その表現の場を与えてもらっているのは、ファンの方がいてくれるからこそやなと思います。

春:あとはやっぱり、一緒に大きくなって、一緒に夢を見てほしいなっていうのはすごいありますね。
なんていうか、主従関係ではないので。もちろん僕らが主体で発信していく側ではあるんですけど、それに対してお客さんがどう評価するかっていう関係であって、決してお客さんを自分たちのわがままに付き合わせる存在ではないというか、機嫌取りの道具ではないんですよね。あくまで僕らの発信に対して評価してくれる立場の方たちなので、そこはちゃんと意識しながらやっていかないといけないとは思ってます。
でも、その上で、やっぱり感覚としては仲間というか。「一緒に大きくなろうよ」っていう気持ちはすごく大事にしたいですね。

将:めちゃくちゃ分かりやすく言うと、株主と会社みたいな関係ですよね。

春:(笑)それやったらちょっと主従感出るやん。

——株主が会社を所有しているみたいな…(笑)

唯:言うこと聞けみたいになるから(笑)

将:ああ、そっかそっか(笑)「所有してる側・される側」みたいな関係になるのは、自分はあんまり好きじゃないんですよね。
ただ、関係性としては(株主と会社に)近い部分もあるのかなとは思います。

——ファンの方それぞれが思いを持って、力を貸してくれているというか。

唯:支援者ですよね。

春:俺らはみんなからお金を預かって、それで楽しませる活動をしてるわけやから、その側面もあると思う。

将:僕の感覚としては、言葉にするなら「運命共同体」みたいな感覚ですね。一緒に大きくなっていく存在というか。そういう関係でいられたらいいなと思ってます。
あと、umbrellaを長いこと応援してくれてる人もたくさんいるんですけど、そういう人たちを見ると、「君ら、umbrellaめっちゃ好きやな」って思うんですよね。それはめちゃくちゃありがたいことやし。その分、その人たちの信頼は絶対に裏切りたくないなと思ってます。
これからもなるべくその期待に応えられるように、ちゃんと向き合いながら頑張っていきたいなっていう感じですね。

将
Drums:将

音楽との出会いを届けるために|“全人類に聴いてほしい”

——これから新しくumbrellaに出会ってファンになる方もいると思います。こういう人に聴いてほしいとか、こういう人には刺さるんじゃないか、みたいなものはありますか。

将:たまにブログとかで音楽を批評してる人いるじゃないですか。ああいう人らに聴いてほしいっす。ちゃんと音楽を分析して聴いてる人。あとは、別に分析とかしなくても、直感で「好きやな」って思ってもらえるのも全然いいですし。
できれば…もう全人類に聴いてほしいですね。

——そうですね、まずは1回聴いていただいて。

唯:一番それ大事っすね(笑)

春:老若男女、誰が聴いても「いいね」って言ってもらえるようなバンドかなと思ってます。

唯:僕自身、いわゆる“お茶の間で流れてる音楽”を聴いて育ったので、そういう、誰でも自然に聴けるような音楽を作りたいっていう理想があって。子どもでも、おばあちゃんでも、「かっこいいね」「いい曲やね」って言ってもらえるような音楽ですね。
なので、もう世界中の人に聴いてほしいです。

——70億人の目の前で1回流したいですね。

唯:動物でもいいっすよ。だって、動物が何の感情もない状態で聴いて反応したら、それはもう本物ですよ。

——ですね。(笑)踊り出したりしたら、刺さったってことですよね。

唯:犬が急に寝たりとかね。すごいと思うんすよ。何かしらのセラピーになってるかもしれんし。

——そう考えると音楽ってすごいですね。空気の振動さえ伝われば、生きとし生けるもの全てに届くという。

唯:はい。もう生き物、植物、なんでも。

——植物に「綺麗だよ」と言い聞かせ続けたら、綺麗な花が咲くといいますよね。umbrellaを聴かせて植物を育ててみたいです。

唯:そうですね。水分量上がって、瑞々しくなるかも。

読者の方へ|umbrellaからのメッセージ

——最後に、この記事を読んでくださる読者の方へ、お一人ずつメッセージをいただけますでしょうか。

唯:僕はずっと変わらず、自分のやりたい音楽をやり続けてきていて、音楽性も含めてわがままにやらせてもらってるので、本当に感謝しかないんですけど。音楽とかバンドって、永遠に続くものではないと思うので、1回1回のライブを大切にしていきたいなと思っています。
来れるときに来てもらって、日常の中にumbrellaの音楽がずっとそばにありますように、という願いを込めて。
また皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。

柊:やっぱり音楽との出会いってタイミングだと思うんですよね。
その時の気分とか感情とか、ちょうど求めているものにハマったときに出会った音楽が好きになると思うので、その“出会う瞬間”に自分たちが存在していられるように、活動を続けていきたいなと思っています。
自由度の高いバンドなので、全員に刺さるわけではないかもしれないですけど、その中でどこか引っかかるものがあれば嬉しいですし、これからの活動も楽しみにしていてください。

春:自分自身がいろんな音楽を聴いて、ライブを観て、音楽にハマっていった経験があるので、同じような体験を皆さんにもしてほしいなと思っています。
ぜひumbrellaの音楽に触れて、ハマってもらえたら嬉しいです。

将:まずはここまで読んでくださってありがとうございます。
本当に好き放題やってきたバンドで、それでもいい音楽を作ろうと活動しています。
個人的な考えなんですけど、人生の喜びって「無駄」と「達成感」やと思っていて。音楽って、生活に絶対必要なものではないけど、その“無駄”に時間やお金を使って、そこに価値を感じることができるものやと思うんですよね。
音源を聴いたり、ライブに来たり、その行動の中で得られる実感や感情っていうのが、すごく大事なんじゃないかなと思っています。
なので、もしどこか心に引っかかるものがあれば、まずは音源を聴いてもらって、よければライブにも来てもらって、その“体験”を感じてもらえたら嬉しいです。
どこかでお会いできるのを楽しみにしています。

まとめ|umbrellaが照らす、路地裏のまだ見ぬ世界へ

ヴィジュアル系という枠組みにとらわれず、唯一無二の存在感を放つumbrella。

「どこに出したらいいかわからない」とも言われてきた彼らはどこへも迎合することなく、愛する音楽を追求することで、その特殊さを強みに変えていった。

2026年6月23日に開催される彼らの主催イベント「路地裏サーチライト」には、有村竜太朗、ザアザア、メリーが出演する。

ぜひライブハウスの扉を開き、頬が落ちるような路地裏の名店の味を、堪能してみてほしい。

インタビュー:ヴィジュアル系百科 編集長 太田翔子
写真:おにてん。(X:@nowing_oniten

umbrella

公式サイト:https://xxumbrellaxx.com

X:@umbrella_DATA

Instagram:@umbrella_official_

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この記事を書いた人

関西在住。大学では法哲学を専攻し、「ヴィジュアル系における自由と規律」をテーマに研究。音楽を通じた表現と社会的規範の関係性に関心を持ち、ヴィジュアル系という文化現象を美学・社会構造・言語の観点から読み解いてきた。現在はメディア運営者・ライターとして、執筆を通じてバンドの世界観を言語化し、ヴィジュアル系の魅力を広く伝える活動をしている。

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