
2026年6月23日。
梅雨真っ只中、湿った空気がただよう大阪ミナミでこの日、ひときわ目を引くイベントが開催された。

umbrella presents『路地裏サーチライト』。
有村竜太朗、メリー、ザアザア、そしてumbrellaという個性的かつ豪華な顔ぶれの対バンだ。
会場である心斎橋BIGCATは、アメ村・BIGSTEPの4階にある。
開場時刻の17時が近付くと、施設内には各バンドのグッズTシャツを身につけたファン達の姿が。
この日に向けてumbrella Vo/Gt.唯がデザインした『路地裏サーチライト』Tシャツに早速着替える人も。

会場に足を踏み入れると、ステージ背景には『路地裏サーチライト』ロゴの大きなバックドロップ幕。
それを下方から照らすのは、まさしくイベントフライヤーのデザインと同じ、2つのサーチライトだ。
ここでしか見られない景色が、今から目の前に広がる。
そんな予感に、観客達は胸を高鳴らせていた。
有村竜太朗
フロアが高揚感に満ちた頃。
ついに開演時刻の17時30分を迎え、会場は暗転する。
入場SEと共にステージに姿を現したのは、有村竜太朗、そしてサポートメンバー・DEMONSTRATIONsだ。
1曲目|≒engeki
夢の世界へと誘うようなギター・悠介のフレーズから始まるこの曲。
体全体でリズムを取る有村の黒髪が、さらりとなびく。
「誰もいないとこまで
連れ出してあげる
鼓動は乱れて3拍子」──有村竜太朗『≒engeki』より
力の抜けたような揺らぎのある歌声が、BIGCATに響いた。
「ワルツ ワルツ ワルツ
アン・ドゥ・トロワ おいでよ」──有村竜太朗『≒engeki』より
湿度が低く、歪んだギターの音を主軸としたバンドサウンドが、突風のように吹き荒ぶ。
轟音で包み込みながらも、3拍子に合わせて身体が自然に揺れるようなグルーヴを絶やさない。
「応答しない記憶なら
弾き直すけれど」──有村竜太朗『≒engeki』より
ドラム・高垣良介のキレのあるフィルイン。
楽曲の展開を予感させては裏切り、夢と現の狭間へ誘う。
「きらきら 永遠じゃなくて
消えていくから
触れてたいだけ」──有村竜太朗『≒engeki』より
触れると溶けてしまいそうな、儚い声で歌う有村。
間奏ではステージ上でメンバーたちを見渡しては軽く飛び跳ね、どこか少年のような無邪気さも感じさせる。
静かに聴き入っていた観客たちも、徐々に体を揺らしていく。
「はらはら 涙の雨 此の儘
はぐれるまで」──有村竜太朗『≒engeki』より
力を込めてギターを鳴らす有村だが、声色は柔らかい。
オレンジ色の眩い灯りが会場全体を照らす。
熱く、それでいてノスタルジックに『路地裏サーチライト』は幕を開けた。
2曲目|猫夢 / nekoyume
イントロでは高らかに拳を上げる観客たち。
「覚めた夢をたどるたび 猫みたいに置き去りね
振り向いたら 嘘ついてて 居なかった」──有村竜太朗『猫夢 / nekoyume』より
嗚咽にも似た切ない歌い方。
ただし、決して不安定ではなく洗練されており、まるで音源からそのまま飛び出してきたかのようだ。
「こわい夢で迷子なの ベルが響く空室も
嫌だったから 燃やしちゃって 灰にした」──有村竜太朗『猫夢 / nekoyume』より

「繋がって 繋がって 僕ら ただ 揺らぐように」──有村竜太朗『猫夢 / nekoyume』より
サビでは、ベース・鳥石遼太が有村とともに歌詞を口ずさむ 。
「ずっと ずっと ずっと ずっと」──有村竜太朗『猫夢 / nekoyume』より
棘がない、透き通ったハイトーンボイス。
空間に溶けるようでありながらも、確かな存在感を示した。
3曲目|共犯遊戯 / kyōhanyūgi
ざらついた質感のギターサウンドと、クリアなドラムの対比。
「歪んで笑って
刻んで痛くて
滲んで無残で
愛情って嫌い」──有村竜太朗『共犯遊戯 / kyōhanyūgi』より
赤と青、二色の照明が点滅する。
時に怒りを帯びるような有村の声。
「ああ はらはら
哀しくてリフレイン
そう 零れたら 綺麗」──有村竜太朗『共犯遊戯 / kyōhanyūgi』より
サビでは観客たちが手を上げ、身体を揺らした。
SYUTOの奏でるキーボードの音がきらきらと煌めく。
浮遊感のある楽曲の中でも、高垣の力強いドラムが疾走感を絶やさない。
4曲目|くるおし花 / kuruoshibana
サプライズゲストとして、主催バンド・umbrellaの唯が登場。
有村と共に『くるおし花 / kuruoshibana』を歌う展開に、観客たちは歓喜の笑みを浮かべる。
「天気崩れた 傘は壊れた
どうしよう どうしたい?破棄しよう」──有村竜太朗『くるおし花 / kuruoshibana』より
独特の強弱をつける有村の歌い方にやや寄せているのか、普段より柔らかな唯の歌声。
「雨に花 濡れて赫 鮮やかな愁しみで
胸を何故 過ぎる君 駄めいた硝子玉 きれい」──有村竜太朗『くるおし花 / kuruoshibana』より
サビでは観客たちが一斉に拳を上げ、身体を揺らす。
美しいハモリで、楽曲の瑞々しくカラフルな世界を表現。

中性的なギター・ボーカル二人が隣同士で並ぶ様は、どこか人間離れしており、まるでドールのよう。
かつ、兄弟または姉妹にも見えてくる。
「思い出せたよ 記憶 押し花
切ったの 千切ったの 隠したの」──有村竜太朗『くるおし花 / kuruoshibana』より
観客たちの方へ視線を向けながら歌う有村を、スポットライトが照らす。
「唯くんでしたーー。」
有村へのリスペクト溢れるデュエットを披露し、温かい拍手に見送られながら、唯はステージを後にした。
5曲目|≒jukyusai
ある意味攻めたこのタイトル。
イントロからタオルを振り回す観客たち。
有村もタオルを回しながら、上手へ下手へと縦横無尽に動き回る。
「昨日はあったけど夢や理想など
何処かで落としてしまったの」──有村竜太朗『≒jukyusai』より
拳と共に声を上げ、高揚するフロア。
爽快感あふれる、どこかパンキッシュな曲調でも、有村は自らのカラーを貫いた繊細な歌声で惹きつける。
かと思えば、
「大阪!!」
と荒々しく煽る一幕も。
タオルを持っていない観客たちも高らかに手を上げてビートに乗り、会場は一体感に包まれた。
6曲目|≒fuyuu
疾走感あるドラムソロから始まるこの曲。
フロアでは拳と手拍子が入り混じる。
「揺蕩う個体 此処 何処
ただよう世界
ただいる世界」──有村竜太朗『≒fuyuu』より
紫色を基調としたメルヘンチックな照明が、ふわりとまさに浮かぶような世界を演出。
曲の半分弱を占めるアウトロでは、悠介がワウペダルを踏み歌うようなギターフレーズを奏でる。
鳥石はジャケットをはだけさせ、有村は頭を振りながらそれぞれが音を掻き鳴らした。
ラスト|恋ト幻 / rentogen
空間を埋め尽くすようなギターの音が、音源以上に強い存在感を放つ。
「くちづけで咲いて 躰で色づいて
きれいな果実が生ったなら」──有村竜太朗『恋ト幻 / rentogen』より
泣き出してしまうのではないかと思うほど、途切れ途切れに言葉を紡ぐ有村。
激しさと優しさ、強さと儚さを何度も行き来する。
最後にはギターを置き、両手を胸の前に合わせて観客たちにお辞儀。
DEMONSTRATIONsメンバーたちが奏でる轟音に包まれ、ステージを後にした。
ザアザア
有村竜太朗のステージを終え、転換中。
前方には、徐々に「中毒者」「ザアザア」といったバックプリントのTシャツ姿が目立ってくる。
暗転し、幕がゆっくりと開く。
ステージ上には、ザアザアの楽器隊──ドラム・亞ん、ベース・零夜、ギター・春芽の姿が。
彼らの音が徐々に重なりゆく中、下手からゆっくりと姿を現したのは、ボーカル・一葵。
声を発することなく、ただそこに立ち尽くすその姿に、観客たちは思わず息を呑んだ。
1曲目|ビー玉
亞んの力強いドラムプレイが光るこの曲から幕開け。
「あなたの事見せてよ
必死にのぞきこんでも
今さらって笑って
ビー玉は転がってく」──ザアザア『ビー玉』より
サビでは零夜も歌詞を口ずさむ。

空間系の繊細な音で、美しいギターフレーズを奏でる春芽。
シンプルなバンドサウンドながらも、厚みと奥行きを感じさせる。
「ザアザアです。声出せますか。
声出せるか!!」
曲終わり、一葵が煽ると、中毒者(=ザアザアのファン)たちが声を上げる。

一葵が叫ぶ。
「やっちまおうぜ!!」
2曲目|下下の行進
拡声器を通して、一葵が観客たちに告げる。
「進め!!」
ステージ上では「下」と書かれた大きな白い旗が振られ、行進曲がスタート。
「最低最低
不公平な様」──ザアザア『下下の行進』より
一斉に引っ張る拳でフロアを圧倒する中毒者たち。
サビでは華麗な手扇子がBIGCATを埋め尽くす。
「おい!気合い入ってるか!!」
一葵がさらに煽ると、手拍子、ヘドバン、さらに回転ヘドバンとどんどん激しくなっていく。
「笑え 僕を笑えよ
死んだその顔で」──ザアザア『下下の行進』より
お立ち台に登り、フロアを見渡して行進をリードするザアザアメンバーたち。
「誰も邪魔はさせない
上を向くだけさ
心千切れても
ただ進むだけさ」──ザアザア『下下の行進』より
歌詞に合わせて、上を指差す一葵。
自虐的でニヒルなままで終わらず、這い上がる強さを見せつけた。
3曲目|コワイクライ
「おい大阪!
声出せって言ってんだろ!!」
一葵の攻撃的な煽りから始まったこの曲。
中毒者たちの大きな声が、割れんばかりに響き渡る。
「二人だけの部屋
混じり気のない
さよなら孤独よ
ずっと幸せ」──ザアザア『コワイクライ』より
激しい折り畳みヘドバンがBIGCATに嵐を巻き起こす。
「君を何処にも行かせない
外は嫌なこと 溢れてるから」──ザアザア『コワイクライ』より
歪んだ愛と暴力性を歌った歌詞に耳が奪われる。
手扇子、ヘドバン──優雅さと激しさを行き来する振りも、この楽曲の世界観を演出するのに一役買っているようだ。
4曲目|大雨警報発令
「大阪へ大雨降らしたいと思います。よろしく!」
一葵の宣言、次の瞬間。
(ザーザー)──ザアザア『大雨警報発令』より
デスボイス、回転ヘドバン、そして拳ヘドバンの応酬で、BIGCATに大雨どころか槍の雨ほどの衝撃が走る。
「大雨警報発令」──ザアザア『大雨警報発令』より
の声を合図に、何度も繰り返されていく。
頭を激しく振りながらギターを鳴らす春芽。

「やろうぜ!やろうぜ!」
一葵の煽りは止まらない。
亞んのドラムの力強さは衰えることを知らず、中毒者たちをヒートアップさせ続ける。

曲終わり、荒々しい声のメンバーコールが会場中に響き渡った。
ここで、意表をつく一葵の一言。
「静かな曲やります…
眠たい人は寝ててください」
5曲目|影
「笑わないで 気にしないで
つまづいただけ
知らないけど 今日は遠く
海を見に行こうよ」──ザアザア『影』より
先ほどまでとは一転、優しい歌詞と、寄り添うような柔らかいギターの音。
吐息混じりの一葵の歌声が、観客たちを惹きつける。
「声が聞こえた気がして 後ろを振り返っても
居なくて
同じ香りがしたって 同じ名前が居たって
違って」──ザアザア『影』より
何処か遠くへ届けるかのように歌い上げる一葵。
亞んも力強いドラミングから転じて、繊細なプレイで楽曲の空気感を演出する。
観客たちは身じろぎもせず、ただじっと音を感じ、ステージを見つめていた。
MC
ノスタルジックな前曲を終え、BIGCATが拍手に包まれたところで。
「おはようございます!起きた?」
一葵の呼びかけに「起きたー!」と答える中毒者たち。
「ザアザアです、よろしくお願いします。
今日はumbrellaさん、素敵なイベントに呼んでくれてありがとう!」
主催であるumbrellaに感謝の言葉を告げる一葵。
「『軽薄ナヒト』がめっちゃ好きで。」
と、umbrellaの楽曲について触れる。
「最近の曲も聴いてみたんだけど、気になるタイトルがあって…。
『傘はいらない』」
先が読めてしまったのか、思わず爆笑する中毒者たち。
「『傘はいらない』かっこよくない?大人じゃない!?
僕らの出してる曲で、『傘がない』って曲があるんですけど…。
お店に入って、傘を置いて。
店を出る時に、『傘がない!!』って怒ってる曲なんですよ。」
同じ傘をテーマにした曲でありながら、あまりの落差に傘人たちもたまらず笑ってしまう。
「ほんと子供です…作詞センス…」
自虐を交えながらも、この日最年少のバンドとしてumbrellaへのリスペクトを表したザアザアであった。
6曲目|ラブレター
「その愛をもっと届けてくれよ!いいですか!!」
後半戦、ザアザアらしい偏愛を描いたこの曲。
「ラララララブレター
ラララララブレター」──ザアザア『ラブレター』より
特徴的な歌詞の繰り返し、そして中毒者たちの力強い拳。
「ねえ僕まさかそんな
好きになるなんてね」──ザアザア『ラブレター』より
一葵は頭を上下に激しく振りながら歌う。
「会いたくてラブレター 少しでも
近くで笑顔見たくて」──ザアザア『ラブレター』より
零夜は「笑顔」の歌詞に合わせ、頬に手を当ててみせる。
間奏では中毒者たちのみならず、他バンドのファンたちも一斉に激しいヘドバン。
BIGCATがザアザア色に染められた。

しかし、これで満足する彼らではない。
「まだ涼しそうにしてる人いる。
特に後ろ。遊ぼうよ!」
一葵が後方の観客に目をやりながら告げた。
「じゃあみんな、左に寄ってください!」
呼びかけに応じ、下手側に寄る観客たち。
すると、一葵がおもむろにステージから客席に降りた。
「いけますか!!」
ラスト|蜘蛛の糸
一斉に上手へ、そして下手へとモッシュするフロア。
客席の一葵は、観客の眼前で歌うなど、徹底的に絡む。

「今日くらい いいじゃない いただきましょう」──ザアザア『蜘蛛の糸』より
熱唱する一葵に、壁際まで追い詰められ、思わず笑いながら顔を背けてしまう人も。
最後には観客たちに混ざりながらモッシュする一葵。
「ありがとうございました!ザアザアでした!!」
狂気と激しい愛を、歌詞だけでなく音とパフォーマンスでも体現したザアザア。
熱いメンバーコールに見送られ、彼らが退場した後も、会場はまだ熱気と興奮に包まれていた。
メリー
1曲目|デジーノート
テクノ系の電子音を取り入れたサウンドが鳴り、赤色と緑色の照明が鮮烈にBIGCATを彩る。
徐々に昭和の歌謡曲を思わせる曲調に変化したかと思うと、NMNL(=メリーのファン)たちが手拍子。
ギター・結生、ベース・テツ、ドラム・ネロが登場する。
最後に姿を現したのはボーカル・ガラ。
その手には、「メリー」と書かれた大きな旗が掲げられていた。
2曲目|溺愛の水槽
初っ端からマイクスタンドを持ち上げるガラに、目を奪われる観客たち。
「泳ぎ回る水槽の中
キミの骨は透けて見えた
はしゃぎ回るキミの姿に
安らぎさえ覚えていたんだ…」──メリー『溺愛の水槽』より
どこかふわふわとした声質で歌い上げる、仄暗いストーリー。
「まぶた閉じれば想い出す
テーブルの上のキミ
言えなかったサヨナラさえ
胸の奥にしまいカギをかけ」──メリー『溺愛の水槽』より
歌詞に合わせた身振り、手振りで、楽曲の世界を視覚的にも描くガラ。

まるでミュージカルか演劇を観ているかのように、あっという間に物語に引き込まれてしまう。
ネロのドラムは激しくもタイトで、繊細なガラの歌声と絶妙にマッチ。
「大阪!!」
ガラが煽ると、BIGCATの観客たちは手を上げて大きな声で応えた。
3曲目|首吊りロンド
糸が切れた操り人形のように、全身を使って狂気を表現するガラに、釘付けになる観客たち。
「ダイアウト 首吊りをしよう平凡だから悩むんだ
彷徨う俺を救って…嘆く声 何処にぶつければいい?」──メリー『首吊りロンド』より
頭上で両手を優雅に舞わせるNMNL。
結生はレトロなニュアンスを含んだ音色でギターを奏で、メリーの世界観を印象付ける。

「振り返れば誰も居ない…叫び声 何処にぶつければいい?」──メリー『首吊りロンド』より
ステージ上で後ろを振り返り、きょろきょろと周りを見渡すガラ。
そのステージングは、もはやボーカリストという枠をとうに超えており、「表現者」と呼ぶべきか。
最後には、鮮烈な赤色のマイクシールドを自らの首に巻きつけ、曲名通りのショッキングなパフォーマンス。
その最中にも咲くNMNLたち。
BIGCATが、狂気に満ちていた。
4曲目|[human farm]
「Welcome! human farm
Welcome! to the human farm
Welcome! human farm, garbage world」──メリー『[human farm]』より
拳を高らかに上げる観客たち。
疾走感のある楽曲の土台を支えるのは、テツの緻密なベースワークだ。

さらに結生のギターリフは強烈な印象を残し、耳から離れない。
「憧れていた夢や理想は
今となっては離れた場所」──メリー『[human farm]』より
サビでは両手を上げてジャンプする者もいれば、モッシュする者も。
ヒートアップしていくBIGCATのステージ上で、ガラはジャケットを脱ぎ捨てる。

ネロは「もっと来い」とばかりに、スティックで観客を指して煽った。
5曲目|恋哀交差点
前曲の終わり、熱いメンバーコールが会場を包み、そして徐々に静寂へ。
印象的なギターフレーズが、メリーらしいレトロで退廃的な空気感を演出するこの曲。

「あの日別れた彼に また逢えるような気がして…
あの日別れた場所で 彼をずっと待つよ…コーヒー飲みながら…」──メリー『恋哀交差点』より
楽曲の世界に入り込む、ガラの集中力は途切れない。
ネロのドラムの一打一打からも切ない感情が滲み、またもBIGCATを物語へと引き込んでいく。
「恋哀交差点…いつものようにすれ違って
アタシを通りすぎていくのでしょうか?」──メリー『恋哀交差点』より
天を仰ぐガラ。
観客たちは立ち尽くして、物語の行く末を見守る。
「そして…いつの日か忘れられるでしょうか?
アナタの名前を…」──メリー『恋哀交差点』より
曲終わり、観客たちの大きな拍手が会場に響き渡った。
MC
「ありがとうございます。
路地裏サーチライト、皆勤賞のメリーです。」
ガラが口を開く。
「今日のライブの出来で、来年また呼ばれるかどうかがかかってるんで!
僕らを一番応援してください!」
umbrellaからすれば先輩バンドであるメリー。
その立場を逆手に取ったユーモラスな訴えに、フロアからは笑みが溢れた。
さらに、
「前の方は見慣れてると思うけど、本物のメリーです。ガラです。
今日本物の竜太朗さんいたね?」
と矢継ぎ早に話すガラ。
笑いと拍手が起こる中、ライブは後半戦へ。
6曲目|梟
「汚れきったこの世界で 信じられるものなんてない
肩身の狭いこの場所じゃ どうやら俺は嫌われ者で」──メリー『梟』より
歌詞を噛み締めるように歌うガラ。
結生は、観客たちを見渡しながらギターを奏でる。
「本当にこの世に神様がいるとしたらそりゃあんた不公平すぎる。
なんでまだ俺の前に現れてくれないんだよ…。
名も無き夜がまた明けてゆく… 。」──メリー『梟』より
一人の青年の心の声を、そのまま吐露するかのような、終盤の台詞。
ラストはネロの畳み掛けるような高速フィルが炸裂し、鬱屈とした感情を力に変えてくれるかのようだった。

7曲目|「来来世世」
「また来年も、路地裏サーチライトで会いましょう」
そうガラが告げると、カラフルな照明にBIGCATが彩られ、一斉にジャンプする観客たち。
「螺旋の様にぐるぐる回る
心に染みる
今日も情けない風が吹きつけ
独りで泣いて」──メリー『「来来世世」』より
テツの奏でる低音が、歌詞に込められた切実な想いを引き立てる。

「来世まで手を繋いで
一緒に行きませんか?」──メリー『「来来世世」』より
サビではバイバイをするように大きく手を振る振り付け。
ガラは上手へ下手へ動き回り、前列のファンたちの手に触れる距離で歌う。
「もし願い叶うなら
カオスな日々だってもう
楽勝で生きて行く
神様お願い」──メリー『「来来世世」』より
願いを届けるように、声を振り絞るガラ。
そしていよいよライブはクライマックスへ。
「大阪!ぶち上がれるか!!」
8曲目|ジャパニーズモダニスト
ステージに颯爽と登場したのは、なんとumbrellaのベース・春。
路地裏サーチライトならではの豪華な共演に、フロアから大きな歓声が上がる。
喜びムードも束の間、メリー屈指の激しい楽曲へ。
「GO MAD ジャパニーズモダニスト
GO MAD ジャパニーズモダニスト」──メリー『ジャパニーズモダニスト』より

重低音の増した「ジャパニーズモダニスト」で、渾身の大暴れを見せつけるNMNLたち。
春は楽しげにベースを弾き、結生からちょっかいをかけられる場面も。
「海よ、太陽よ、地の果てよ、
あの空よ
聞こえるか? 聞こえるか?
聞こえるか? 声が」──メリー『ジャパニーズモダニスト』より
サビではBIGCAT中の観客が一つになり、大きな声でシンガロング。
鬼気迫る表情でビートを刻むネロ。

その熱気に煽られるように、春も頭を振りながら力強くベースを鳴らす。
ガラが叫んだ。
「こういう一瞬一瞬がライブなんで!
忘れないでください!」
ラスト|The Last Scene
「必ずまた会いましょう。メリーでした!」
ラストに相応しいこの曲で、勢いよくタオルを振り回すNMNLたち。
「もう誰にも奪えないよ
その広がった景色は ほら
ずっと忘れないでいて」──メリー『The Last Scene』より
楽器隊全員の魂のこもった音が、BIGCATを揺らす。
「今を生きてください
みんないつか消えてしまう
永遠なんて無いから」──メリー『The Last Scene』より
今にも泣き出しそうなガラの声。

ライブへの、そして音楽への熱い想いがそのまま表れた歌詞を、全身全霊で歌う。
「路地裏サーチライト、ありがとう!
umbrella、ありがとう!!」
最後に、お立ち台の上で倒立し、足で拍手するという奇想天外な行動に出るガラ。
彼の代名詞の一つでもあるパフォーマンスを見せ、初見の観客たちの度肝を抜き、NMNLたちを沸かせてステージを後にした。
umbrella
いよいよ路地裏サーチライトも終盤。
主催であるumbrellaのステージを見ようと、他バンド・アーティストのファンも詰めかける。
会場が熱気とワクワク感に満ちたところで、雫の落ちる音が響く。
umbrellaの入場「アマヤドリ」がBIGCATを優しく潤すように包み込み、静まり返る観客たち。
ドラム・将、ベース・春、ギター・柊が順に入場。
拍手と、いつも以上に大きなメンバーコールが響く。
そして最後に登場したギターボーカル・唯。
女形と言ってもいい中性的なビジュアルとは裏腹に、その目線は虎のように鋭く、闘志が滲んでいた。
1曲目|造型アリス
1曲目は、優しく切ないミドルテンポナンバー。
ゆっくりと体を揺らしながら繊細なフレーズを紡ぐ柊。
唯はウィスパーボイスを交えながら柔らかく歌い、サビでは芯のあるハイトーンボイスで一気に観客たちを引き込んだ。

随所で将の展開する複雑なドラムフレーズもまた、この曲の描く心の機微や葛藤を巧みに演出。
そして春はフロアへ視線を送り、一人ひとりと対話するようにベースを奏でる。
深い水の中へ身を委ねるような、温かな余韻のアウトロ。
ヴィジュアル系バンドの枠にとらわれない、umbrellaならではの音でBIGCATを包み込んだ。
曲終わり、唯が言う。
「こんばんは。路地裏サーチライト主催のumbrellaです。
どうぞよろしく。」
先ほどの余韻そのままに、ふわりとした優しい声──から一転。
「いけるか大阪!!」
荒々しく煽り、眼の奥に滲んでいた闘志を剥き出しにした。
2曲目|orbit
イントロから、一斉に観客たちが拳を上げる。
「真夏の風が弱まる 街は騒めき続ける
変われない僕だけが
明日は軌道を変えたい 絡まる糸は切れない
人の群れが遠ざかる」──umbrella『orbit』より
楽曲の世界へ没入し、時に呟くように、また話しかけるように歌う唯。
「香り始める色付いた季節を
モノクロームの時間を包んだ
僕の絵の具を絶やさない様に」──umbrella『orbit』より
開放感のあるサビでは、柊も共に歌詞を口ずさむ。

春が身体を前後に揺らしながら鳴らすグルーヴィーなベースに導かれ、フロアでは拳が次々と上がる。
メンバーそれぞれの緻密な演奏が絡み合い、間奏で一気に観客たちを引き込んだ。
「このまま恐れない
鮮やかな世界を描くよ」──umbrella『orbit』より
クールな表情を崩さぬまま力強いビートを叩き込む将からも、気迫が伝わってくる。
音が鳴り止むと、拍手に包まれる会場。
傘人たちによる温かい声色のメンバーコールが、BIGCATに響く。
「今日は見ての通り、雨の似合うバンドが集まりました。
集まってくれてありがとう。」
唯が口を開くと、各バンドのファンからは感謝の拍手が。
「でも、個人的に長い付き合いになってきたあの男が、
この曲似合うんじゃないかないかと思って、呼んでみました。」
ざわめくフロア。
「メリー、ガラ!」
唯が名前を呼ぶと、鮮やかなターコイズブルーのジャケットと、白いハットに衣装チェンジしたガラが登場。
NMNLたちから熱い歓声が上がる。
そして、ガラを迎え歌う曲は。
「この曲です。『傘はいらない。』」
3曲目|傘はいらない。
umbrellaの楽曲の中でも、とりわけ歌謡曲的な要素が強いこの曲。
まさにメリーのボーカルであるガラにぴったりだろう。
「人波が混ざり合う
心が溶け合うことはなく」──umbrella『傘はいらない。』より
ガラの柔らかな歌声が、しとしとと雨の降る情景を想起させる。
「傘はいらない 遠ざかる
目を伏せて見えない様に
悲しみを浴びて街を背に
汚れた足元」──umbrella『傘はいらない。』より
サビはガラと唯、ふたりで同じメロディを歌い、真っ直ぐに悲しみと孤独が押し寄せる。

まるで語りかけるような柊のギターソロも、物語の中に観客たちを誘っていく。
「瞼閉じたら独りで
そこは誰もいないから」──umbrella『傘はいらない。』より
先ほどメリーのステージに友情出演した春と、ガラが肩を組むシーンも。
「どこか遠くへ旅立って
忘れてしまいたいけど
心の傘を差し出した
あなたを愛しています」──umbrella『傘はいらない。』より
楽器隊の息の合ったグルーヴを感じながら、終盤へ。
ガラと目を合わせながら、楽しげに微笑む唯。
曲が終わると、大きな拍手がBIGCATを包んだ。
そんなハッピームードから、再びumbrellaの気迫溢れるステージへ。
唯が怒りを孕んでいるかのような声で、煽る。
「おい!!いけんのか、大阪!!」
4曲目|dilemma
イントロから4人の作り上げる精巧なサウンドが心臓に響いてくる。
「愛想なんてない
故、根本的成分
優秀なお世辞に賞賛の手」──umbrella『dilemma』より
少し脱力感のある唯の歌声が、かえって何かが起こる前兆のような緊張感を醸し出す。
「僕は見えない
もう何も要らない
止まれば全てがグッバイ」──umbrella『dilemma』より
サビでは力強くBIGCATを貫く歌声。
会場全体が両手を上げてチョップする振り付け。

「culmination
fascination
心のないcalling
そろそろ飽きたらどう?」──umbrella『dilemma』より
ギターを高く掲げて弾く柊。
その後、アクロバティックな印象とは裏腹に、楽曲に調和をもたらすしなやかなギターソロを奏でる。
アウトロに差しかかると、唯は軽快なステップを踏みながらステージを駆け回り、鮮やかな2回転まで披露してみせた。
5曲目|Labo
ダークなイントロとともに、傘人たちは勢いよく折り畳みヘドバン。
Aメロでは自然と身体が動くようなグルーヴのなか、春もフロアと呼応するように身体を揺らす。
赤色の照明が、楽曲のどこか不気味な空気感を増長させる。
唯のファルセットも相まって、傘人たちが手を上げる光景はまるで何らかの儀式のよう。
「愛してください
誰か探してください」──umbrella『Labo』より
切実な願いのような歌詞。
直後、 技巧を凝らした柊のギターソロが、狂っていく様を残酷に描く。
6曲目|黒猫が通る。
春のベースソロから始まるこの曲。

不穏なサウンドの中、唯は上手へ下手へと、ステージ上を動き回りながら歌う。
「憎んで見下げて愛してもっと愛して
剥がして剥がしてあの日の様に喘いで」──umbrella『黒猫が通る。』より
不安定な情緒や胸の奥に秘めた怒りを、緩急のあるボーカルで表現。
間奏では折り畳みヘドバンをする傘人たちをメンバーが見下ろす構図に。
お立ち台に片足をかける唯の佇まいが一瞬、僕(しもべ)を跪かせる女王のように見える。
7曲目|レヴ
umbrellaの真骨頂とも言える轟音が鳴り響く。
「砕かれて崩れていく
試作品には成らないわ
傷を得て辿り着く
孤高の空へ旗を掲げよ」──umbrella『レヴ』より
フロアからは拳と掛け声が次々と沸き起こっていく。
一人一人の声が重なり、大きな一つの声となってBIGCATを揺らす。
「Rain Alive Fate Awake」──umbrella『レヴ』より
普段はクリーンな歌声で魅せる唯から、咆哮が放たれた。
訪れる束の間の静寂。
そして4人の音が重なり合い、楽曲はクライマックスへ。
唯が力強く叫ぶ。
「全員でいこうぜ!いいか!!」
8曲目|Witch?
柊の魅せる背面弾きに沸くフロア。
観客たちの一斉のジャンプが、BIGCATを揺らす。
「干渉した視界に 零れ落ちた自戒の群れ
付近にはキレイな聞き分けのない密葬
グッドナイト」──umbrella『Witch?』より
ダークな曲調とは裏腹にナチュラルな唯の歌声。
春は挑発的に顎をしゃくりながら、観客たちの熱を掻き立てた。
「ねぇ?時を壊して此処に居たい
誇り塗れに恋したい
粉々、天井裏で隙を魅せた劣性ネヲフィリア」──umbrella『Witch?』より
眉をひそめ、この日一番の鬼気迫る表情を見せる唯。
柊は流麗な速弾きを差し込み、観客を唸らせた。
そして唯が「宗教」と呼ぶファルセットが響き渡る。
観客たちが一斉に折りたたみを繰り出すこの場面では、深くかけられたリバーブが儀式めいた雰囲気を醸し出し、圧巻の光景。
BIGCAT全体が、手を上げ、飛び跳ね、折り畳む。
そんな景色を見た唯から言葉が漏れた。
「…最高」
ラスト|管
「今日はありがとうございました。
僕らから見たら大先輩ばっかで。追い越せない人たちばっかなんですけど。
今日出てくれて感慨深いです、ありがとう。」
唯の言葉に、大きな拍手が起こる。
「まだまだだね、って言われるかもしれないけど、俺たちしぶといんで。
今日ここに集まってくれた皆さん、スタッフ、関係者の皆さん。
全ての絆に恵まれて、ここまで来ました。
いい絆を、ありがとう」
再びギターを担ぐ唯。
路地裏サーチライトへ関わった全ての人への感謝を告げ、umbrellaが最後に奏でる曲は「管」。
「あなたの願いは此処にはないでしょう?
見つめた先にある潤む赤い瞳
ヒトとは不思議です 愛が見える事
絡まる想いは【管】となるでしょう」──umbrella『管』より
柔らかな音のギター、そしてベースが暖かく包み込む導入。
そして。
「か け が え の な い 世 界」──umbrella『管』より
静寂を切り裂くように、4人の重厚なアンサンブルが炸裂。
間奏に突入すると、将が最大級の熱量で叩き込むビートに、フロアが揺さぶられた。

柊はギターと一体化したかのように、全神経を注ぎ込みながら弦を刻む。
「優しい声に眠る夜へ
僕の前に微笑む君はいない」──umbrella『管』より
か細く、儚い歌声から、力強い歌声へ。
唯の紡ぐメロディが、観客たちの心を貫き、満たし、締め付けた。
アウトロでは、春が傘人たちへ優しい視線を向ける。
「今日はほんとありがとう」
唯が改めて感謝を述べ、大きな拍手に包まれながら、umbrellaのステージは幕を下ろした。
アンコール|MC
熱いアンコールの声に応え、umbrellaメンバーが再登場。
「この景色見たかったです!ありがとう!!」
心から嬉しそうに唯が言う。
「1バンド目さん(有村竜太朗さん)出させてもらった時に、そちらの観客のいる広場(フロア)見たんですけど…ありがとう。」
嬉しさのあまりか、数々の謎の語彙が飛び出し、傘人たちも思わず微笑む。
「去年に比べて、僕的には成長したと思うんですけど、いかがですか!」
去年の自分宛とも取れる問いかけに、フロアが暖かい歓声で答えた。
ここで、春からの提案。
「みんな、路地裏オールスターズ見たいよな!?」
観客たちからは、期待と喜びの大きな声が。
「カモン!路地裏オールスターズ!!」
ステージ上に、有村竜太朗、メリー、ザアザアの豪華メンバーたちが再登場。
後方でゆったりと楽しんでいたファンたちも、急いで前に詰めかける。
「全員いけるか!?しっかり声出してください!
ラストいこうぜ!!」
唯が呼びかける。
アンコール|アラン
ラストは大セッションにピッタリなこの曲。
唯から白いタクトを手渡された有村竜太朗が振るうのだが。

基本に忠実なフォームで、意外にも「ちゃんと指揮者」をこなしてくれる。
ステージ上では、なぜかネロにおんぶされる亞ん。
ひっそりと棒立ちしていると、唯からマイクを向けられてしまう一葵。
悠介、春、柊が上手でしゃがんで何やら談義。
有村にマイクを向けるたび「すいません、ほんとすいません」と恐縮しきりな唯。
などなど、暖かくユーモラスな場面が繰り広げられた。
そしてラストサビ前。
「ここで!すいません、umbrellaごとですが、発表があります。
umbrella16周年記念ワンマンツアー、やります!」

突然の発表に、大きな歓声が上がる。
そして。
「いろんなとこ回って、結成記念日にワンマンをやろう!と思うんですけど。
場所は…」
息を呑む傘人たち。
「…ここ!!
BIGCATで行います!!」

驚き、喜びの入り混じった大きな歓声、そして拍手が湧き起こる。
「待ち焦がれた銀色に輝く あの夢へ走り出そう
手を伸ばした君が望む世界が見えるなら
大嫌いな君が見せた笑顔が好き」──umbrella『アラン』より
祝福と期待、そして喜びに満ちたムードで迎えるクライマックス。
「路地裏サーチライトでした!
有村竜太朗さん!ザアザア!メリー!
そして主催umbrellaでした!
また会いましょう!!」
「umbrella最高!」という声がフロアから上がる。
退場していく出演者一人一人と、握手や抱擁を交わすumbrellaメンバーたち。
最後に唯が告げる。
「俺ら、覚悟決めてるんで。
2027年3月18日、ここで待ってます。
ありがとう。」
こうして、2026年の路地裏サーチライトは幕を下ろした。
まとめ

個性的なバンド・アーティストが4組集い開催された、2026年6月23日「路地裏サーチライト」。
それぞれの音楽を容赦なくぶつけ合い、そして抱きしめ合うような、熱と愛に満ちた一夜となった。
いわば「路地裏の名店の店主」であるumbrellaは、今後も選りすぐりのバンド・アーティストたちと共に、独特かつ上質な音楽を私たちに聴かせてくれることだろう。
2027年も、そしてその先も。
「路地裏サーチライト」で再会し、心踊るようなライブを全力で楽しみたい。
レポート:ヴィジュアル系百科 編集長 太田翔子

