
日本語ならではの美しい言い回しや文学性を大切にしながら、聴く人それぞれの日常に寄り添う音楽を届けるソロプロジェクト「泡沫と雨」。
ヴィジュアル系シーンでは珍しいギターボーカルによるソロプロジェクトとして活動し、オルタナティブやシューゲイザーを軸にした独自の世界観で存在感を放っている。
今回、ヴィジュアル系百科では、泡沫と雨・詩音にインタビューを実施。
プロジェクト誕生の経緯や音楽ルーツ、楽曲制作へのこだわり、ライブで届けたい景色、そしてこれから目指す未来まで、自身の言葉でじっくり語ってもらった。
「泡沫と雨」とは|日本語の文学性を世界へ届けるソロプロジェクト

——「泡沫と雨」はどのようなプロジェクトなのでしょうか。
詩音:コンセプトとしては、日本語の持つ独特の文学性や言い回しを大事にしています。
それと同時に、国籍や年齢・性別を問わず、老若男女に僕の歌と言葉、音楽を届けることを大切に活動しています。
——「泡沫と雨」という名前にも、日本語らしい響きを感じます。由来を教えてください。
詩音:実は前のバンドのボーカル(トリカブトの四月一日御幸さん)とユニットをやっていた時に決まった名前なんです。僕が4〜5個くらい候補を考えて、ロゴと一緒に送った中で、お互い一番気に入ったのが「泡沫と雨」でした。
——他にはどんな候補があったのでしょうか。
詩音:「試作品神話」とか、「腐乱する孤児」と書いて「フランチャイルド」と読む名前とかですね(笑)。御幸さんが好きそうな言葉をイメージして考えていました。
——最終的に「泡沫と雨」を選んだ決め手は何だったのでしょうか。
詩音:僕、もともと雨っていう概念がすごく好きなんです。それと、「泡沫」っていう言葉も昔から好きで。
最初は実は「ほうまつと雨」って読んでいたんですけど、周りのみんなが「うたかた」って読むから、「じゃあ、うたかたか」って(笑)。好きな言葉を並べてみたら、すごくしっくりきたんですよね。
語感もすごく好きです。日本語らしい響きになったのもいいなと。これを超える名前はしばらく出てこないと思っています。
一人でどこまでできるのか、試してみたかった|ソロになった理由
——現在はソロプロジェクトとして活動されていますが、始動の経緯を教えてください。
詩音:もともとは御幸さんに「曲を作ってほしい」って言われたのが始まりでした。
最初に1曲書いて、その次の曲をどうしようかってなった時に、2年くらい前に作った曲を「アコースティック調にしてやりたい」って言われて。その時に「これ、バンドじゃなくてユニットでやりたいんよね」って言われたんです。
その帰りの電車で「泡沫と雨」のロゴを送ったのが始まりですね。
——そこから現在のソロ活動へとつながっていくんですね。
詩音:そうですね。前のバンドを脱退した時は、結構メンタルも落ちやすくて、「もう音楽やるの嫌だな」ってなる瞬間もあったんです。でも、何もしてない期間があるのはすごく嫌だったんですよ。だから知り合いや先輩のイベントでギターを弾いたりしていました。
その中で、「自分が好きなボーカルを集めてアコースティックイベントをやりたいな」って思うようになって。「Flower of Romance」を企画して、そこから先輩やイベンターの方のイベントにも呼んでもらえるようになりました。
今年1月に1stシングルを出して、同じ月に新宿で主催ライブを開催して、本格始動という形になりました。
——ソロとして活動されて、もうすぐ1年ほどになるんですね。
詩音:そうですね。10か月くらいになります。
——新しくバンドを組むという選択肢もあったと思います。その中でソロを選んだ理由は何だったのでしょうか。
詩音:もともとは、30歳くらいになったらソロ活動をやろうかなとは思ってたんです。でも、結果的にはタイミングだった気がしますね。
曲も作れるし、僕、一人で何かするのが結構好きなんですよ。アー写も自分で撮りますし、デザインも自分でやっています。だから、一回自分一人でどこまでできるんだろうって試してみたかったっていうのもあります。
——アーティスト写真やデザインまでご自身で手掛けられているんですね。
詩音:そうですね。今出しているものもそうですし、知り合いや先輩のデザインをやらせてもらうこともあります。
好きなことを、自分の好きな形でできるのはソロならではなのかなと思っています。
生まれる前からヴィジュアル系があった|詩音の音楽ルーツ
——詩音さんの音楽ルーツや、影響を受けたバンド・アーティストについて教えてください。
詩音:ヴィジュアル系だと、メリー、蜉蝣、Plastic Tree、黒夢、baroqueとか、昔から活動されているバンドが中心ですね。
ソロを始めるにあたって影響を受けたのは、umbrella、Chanty、DOF、DEZERT、nuriéあたりです。ギターボーカルのバンドに惹かれることが多いですね。
邦ロックだと、最初に一番好きになったのはBUMP OF CHICKENでした。そこからART-SCHOOL、Syrup16g、People In The Box、COALTAR OF THE DEEPERS、amazarashi……オルタナティブやシューゲイザー系のバンドをよく聴いていました。
——ヴィジュアル系を好きになったきっかけは何だったのでしょうか。
詩音:姉がもともとヴィジュアル系が好きだったんです。生活の中にずっとヴィジュアル系があったので、「いつから好きなんですか?」って聞かれても、「生まれる前からです」って答えてます。部屋でもずっとヴィジュアル系が流れていました。
——”実家の味”ですね(笑)。
詩音:本当にそんな感じです(笑)。姉も、さっき挙げたようなバンドをよく聴いていました。
——初めてヴィジュアル系のライブへ行ったのはいつ頃だったのでしょうか。
詩音:小学校1年生ですね。メリーのライブでした。
——かなり早いですね。そこから、ご自身も音楽をやりたいと思うようになったのでしょうか。
詩音:それも結構はっきり覚えてるんですけど、幼稚園の頃にはもう「ヴィジュアル系のバンドマンになる」って言ってました。
——幼稚園で「歌手」でも「アイドル」でもなく、「バンドマン」という言葉が出てくるのはなかなか珍しいですね(笑)。
詩音:そうですよね(笑)。でも、本当にその頃からそう思っていました。
「どういう意味なんだろう」を残すストーリーテラー|余白を大切にした歌詞
——歌詞を書く上では、どんなことを大切にされていますか。
詩音:僕は、ストーリーテラーでありたいと思っているんです。
普通のロックって、恋愛だったら歌っている人の実体験がベースになっていることも多いと思うんですけど、僕はそうじゃなくて、この曲の世界にいる主人公の物語を語っている感覚なんですよ。
全部を説明するんじゃなくて、断片的に語ることで、「こういうことなのかな」と、聴いた人が解釈してくれたらいいなと思っています。
——だから歌詞を読んでいると、一つの物語を読んでいるような感覚になるんですね。
詩音:セカンドシングルを出した時は、その世界観を補完する短編小説も付けたんです。
歌詞だけでは伝えきれない部分を小説で補完することで、「この主人公はこういう人だったんだ」って想像してもらえたらいいなと思って。それが結構好評だったので、やって良かったなと思っています。
——最初に「日本語独特の文学性」を大切にしているとおっしゃっていましたが、歌詞にはどのように反映されているのでしょうか。
詩音:サビの歌詞は、お風呂に入ってる時によく思いつくんです(笑)。シンプルな言葉で作ることが多いんですけど、日本語的な美しさと、リスナーが想像できる隙間は残したいなと思っています。
僕、昔から歌詞を聴いていて「これ、どういう意味なんだろう」って考えるのが好きだったんですよ。だから、自分の歌詞でも、あえて解釈の余地がある表現を残すようにしています。
——なるほど。具体的な例はありますか。
詩音:『翡翠』の一番のサビに「揺らいだ煙の向こうで」っていう歌詞があるんですけど、この”煙”って別に何でもいいんですよ。タバコの煙でもいいし、その人の記憶に結び付く煙なら何でもいい。
僕の中に答えはあるんですけど、それを決めつけるより、「自分にとってはこういう煙なんだ」って思ってもらえた方が面白いと思っています。
僕の音楽が、その人の日常の一部になったらいいなっていう気持ちがあるんです。寄り添うまではいかないかもしれないですけど、その人の思い出につながるような言い回しを書けたらいいなと。
ふとした瞬間に曲が流れて、「この曲ってこんな時にも寄り添ってくれるんだな」って思ってもらえたら、満足ですね。
——全てを説明しないところが、日本語らしい美しさにもつながっているのかもしれませんね。
詩音:そうですね。全部説明したら面白くないなって思うんですよ。侘び寂びじゃないですけど、隙間がある方が好きなんです。
一方で、すごく抽象的にしすぎるわけでもなくて、「プラットホーム」とか「ベランダ」とか、情景が浮かぶ言葉も入れています。
曲を最初から最後まで聴いた時に、「どういう流れでここにたどり着いたんだろう」っていう物語まで感じてもらえたら嬉しいですね。
ラスサビから物語を逆算する|楽曲制作のこだわり

——楽曲はどのような手順で作っていくことが多いのでしょうか。
詩音:『翡翠』は、ラスサビが最初に思いついたんですよ。そこから「この歌詞に行き着くには、どういう物語を辿ったらいいんだろう」って考えて、逆算して作っていきました。
だから、ミステリー小説みたいな作り方ですね。犯人が先に決まっていて、そこへどうやってたどり着くかを考えるような感覚です。
——ゴールが先にあるのですね。毎回そういう作り方なのでしょうか。
詩音:曲によりますね。3rdシングルの『沈丁花』はAメロから思いついた記憶があります。本当にその時によって違います。
——アイデアはどんな時に浮かぶことが多いですか。
詩音:やっぱりお風呂ですね(笑)。一日の出来事を振り返ってる時に、「こういうことあったな」とか考えていたら、急にメロディーとかギターのフレーズが出てきたりします。
リラックスしてる状態が一番いいのかもしれないですね。
例えば『 —洩れた光。』って曲は、レコーディング前日か当日くらいに、2〜3時間で歌詞まで全部書いたんです。本当にパッと出てきた言葉を並べた感じだったんですけど、すごく評判が良くて。
時間をかければいいものができるわけでもないんだなって、ソロになって気付きました。デザインもそうなんですけど、シンプルな言い回しの繰り返しが、案外いいものになる瞬間もあるんですよね。
オルタナだから表現できるもの|景色や季節まで想像させる音づくり
——楽曲制作では、どのようなアーティストから影響を受けていますか。
詩音:作曲はBUMP OF CHICKENとPlastic Tree、ART-SCHOOLの影響が結構大きいですね。コード進行とかを詳しい人が聴いたら、「ああ、影響受けてるな」って分かると思います。
——サウンド面でも、オルタナティブやシューゲイザーから強い影響を感じます。オルタナティブというジャンルの魅力はどこにあると思いますか。
詩音:ヴィジュアル系のズンズンした音も好きなんですけど、オルタナって浮遊感があったり、歪みすぎてない綺麗なコードの音があったりするんです。人間の純粋な感情を、一番揺さぶりやすい音がオルタナティブなのかなって思っています。
もちろんメタルだったり、テクノだったり、それぞれ魅力のあるジャンルだと思うんですけど、オルタナって定義がすごく広いじゃないですか。いろんなことが表現できるジャンルなのかなって思います。
——「オルタナじゃないとできないことがある」ともおっしゃっていましたね。
詩音:そうですね。例えば、このコード進行やアルペジオは冬っぽいなとか、これは夏っぽいなとか。そういう景色や季節が一番伝わりやすいのが、オルタナなのかなって思っています。
この曲は雨っぽいなとか、晴れっぽいなとか、聴いた人が自然と景色を思い浮かべられる音楽を作りたいですね。
——言われてみれば確かに。浮遊感や音に包まれている感覚があるからこそ、風景や情景、季節がイメージしやすいのかもしれないですね。他に、曲作りで意識していることはありますか。
詩音:曲の構成については、僕は本当にいい曲ってBメロがなくても成立すると思っていて。
ART-SCHOOLの影響なんですけど、あのバンドってBメロがない曲が結構多いんですよ。Aメロからすぐサビへ飛ぶ、すごくコンパクトな展開になっていて。
泡沫と雨の曲も、Bメロがないものが多いですね。
——面白いですね。音作りに関しては、どのように進めているのでしょうか。
詩音:アレンジは、エンジニアをやってくれている椋さんと一緒に考えています。「ここはこういうサウンドを入れた方がいいよね」とか、二人で相談しながら作っていますね。
椋さんはどちらかというとヒップホップが好きなんですけど、Plastic Treeも好きなので、その影響もあって、FXといって飛び道具的な音を入れてくれたりもします。二人で話し合いながら、泡沫と雨らしいサウンドを作っています。
好きなように観てほしい|ライブで届けたいのは、自由に楽しめる空間
——ライブでは、どのようなことを意識されていますか。
詩音:最低でも月に1本はライブをやるって決めています。
初めて観てくれた人には、小さくてもいいからインパクトを残したいですし、何回か観てくれている人には、「前より成長したな」って感じてもらえるライブをしたいですね。
一回ライブをやるたびに、自分のできることを一つでも増やしていきたいと思っています。親身に話を聞いてくれる先輩や大人が周りに多いので、ライブを観てもらってアドバイスをいただいて、それを実践して。ファンの子たちが「あ、変わったな」って気付いてくれたら嬉しいですね。
——初めて観て人へインパクトを残すために、どんなことに取り組まれていますか。
詩音:MCでは毎回、「好きなように観てください」って言っています。
この曲いいなと思ったら、棒立ちでもいいし、拳を上げてもいいし、ずっと観てるだけでもいい。それぞれの楽しみ方で観てくださいって。
ギターを持っている分、激しいボーカルパフォーマンスはできないんですけど、歩き回ったりしながら、「このバンド、他とはちょっと違うな」って思ってもらえたらいいなって。
——最初から今のスタイルだったのでしょうか。
詩音:最初の頃は、雨のSEを流して、傘を持って入場していたんですよ。今はギターを持つようになったのでできないんですけど(笑)。「傘のバンド」って覚えてもらえたらいいなと思ってやっていました。
あと、ライブごとにセットリストを手書きで書いて物販に置いています。気になる言葉があったら写真を撮っていってくださいって。
ライブが終わった後も楽しんでもらえたら嬉しいですね。
——ヴィジュアル系だと「前に来て」「暴れて」といったライブも多いですが、そのあたりはいかがでしょうか。
詩音:僕は「前に詰めて」とかは言わないですね。好きな場所で観て、好きなように楽しんで、「楽しかったな」って思って帰ってもらえたら、それでいいと思っています。
うちは上手にモッシュする曲もないですし(笑)。拳を上げたい時に上げてもいいし、ヘドバンしたくなったらしてもいい。
人間が一番楽しいのって、自然にその行動をする時だと思うんですよ。本当にいい曲だったら、自然にヘドバンもするし、自然に拳も上がる。そこはすごく大事にしたい感覚ですね。
——何度もライブに来てくれている方には、「成長」を感じてもらいたいともおっしゃっていました。
詩音:そうですね。最近は、自分の曲を自分の曲らしく歌えるようになってきたのかなって思います。
最初の頃は、本当に「歌が下手」と言われていたので。「人前で歌わない方がいいんじゃない?」って言われたこともありました。それがすごく悔しくて。「じゃあ、もう馬鹿にできないくらいになったるわ」って思って、ずっとやってきました。
——悔しさが原動力になっていたんですね。
詩音:そうですね。ボーカルって、一番バンドの顔だと思うんですよ。だから、自分の歌で世界観を損ないたくないですし、自分で自分の評価を落としたくない。
そう考えたら、技術を磨くしかないなって。
歌だけじゃなくて、ステージングもそうです。メンバーと楽しそうに演奏している姿を見せることで、フロアとの一体感も生まれると思っています。演者が楽しそうじゃないと、お客さんも楽しくないと思うので。
——ライブを観ている側も、自然と気持ちが引き込まれますよね。
詩音:お金を払って来てもらっている以上、楽しそうにライブをすることも大事だと思っています。一回一回ライブを重ねる中で、自分のできることを増やしていって。
その先で、泡沫と雨を「ちょっといいな」って思ってくれる人が一人でも増えたら嬉しいですね。
音楽に救われてきたから|リスナーファーストで築く、ファンとの関係

——詩音さんにとって、ファンはどのような存在ですか。
詩音:バンドを始めた時から、ファンは本当に大事な存在だと思っています。観てくれる人、応援してくれる人がいるから、こうしてソロでも活動できていると思うので。
ライブに来てくれる人もいれば、SNSで応援してくれる人もいるし、遠方から見守ってくれている人もいる。応援の形って本当にいろいろあると思うんですけど、その全部があるから今ステージに立てています。
だから、「ファンが喜んでくれるものって何だろう」「どういう形で返せるんだろう」っていうのは毎日考えています。
——実際に、他ではあまり見ない取り組みもされていますよね。
詩音:「僕を撮れるチェキ券」っていうのを作っています。ツーショットは恥ずかしいけど、話してみたいっていう人もいるので、僕だけを撮れる券ですね。
あと、今の時代ってCDを作るメリットって、コレクション以外だとあまりないと思うんです。でも、サブスクと違って手元に残るじゃないですか。だから、あえてフィジカルも作っています。
それと、【rain drops.[-liquid-]】っていうアイテムラインもやっていて、Tシャツやポーチ、サコッシュなんかも作っています。音楽と一緒で、日常の中に僕のアイテムがあったら嬉しいなって。日常使いできるものを意識しています。
——詩音さんは「リスナーファースト」を意識されているそうですね。
詩音:はい。ステージに立っている以上、好きでいてくれる人には楽しんで帰ってほしいです。
応援したいと思ってくれて、お金を使ってくれているわけなので、それをどういう形で返せるのかなっていうのはすごく考えています。
自己満足だったら、作りたいから作って、上げたいから上げるだけで終わると思うんです。でも、僕はそうじゃなくて。
自分自身、メンタルが落ちやすい人間で、ずっと音楽に救われてきたんですよ。だから、自分の音楽で一人でも元気になる人が増えたらいいなって思っています。それが、リスナーファーストにつながっているのかなって。
自分の好きな音楽をやりながら、その先で誰かが救われたらいいなって思っています。
——だからこそ、ヴィジュアル系というジャンルで活動しているのでしょうか。
詩音:そうですね。ヴィジュアル系だからこそ届く人がいると思うんです。そこはすごく大事にしたい気持ちですね。
第二のDEZERTになりたい|広く、深く届く存在へ
——今後の展望や目標について教えてください。
詩音:まずは人を集めることですね。応援してくれる人をもっと増やしていきたいです。
その先で、泡沫と雨をバンドにしたいと思っています。いいギターと、いいドラムに出会いたいですね。年齢も近くて、オルタナのフレーズを理解してくれる人。
僕が考えているフレーズに近い感覚を持っている人と一緒にやりたいです。
——すでにメンバー探しも進められているのでしょうか。
詩音:知り合いのセッションに顔を出したりして、「こういう人いいな」って見たりはしています。でも、年齢も近くて、オルタナへの理解もあってってなると、なかなか難しいですね(笑)。
——その先にはどんな景色を思い描いていますか。
詩音:バンドになって、ワンマンライブをやって。もっと泡沫と雨を知ってもらえる機会が増えたらいいなと思っています。
最終的には、誰かの生活に根付いた音楽になれたらいいですね。
一番好きなアーティストじゃなくてもいいんです。応援している人や憧れている人って、小さなきっかけで勇気をもらえたり、生きる活力をもらえたりするじゃないですか。そういう存在になれたら嬉しいです。
そのためにも、まずはいろんな人に知ってもらうことが大事だと思っています。
——目標としているバンドはいますか。
詩音:僕、第二のDEZERTになりたいんですよ。いろんな層のファンがいて、いろんな音楽があって、いろんな人が知っている存在。
中学生、高校生の頃にDEZERTを好きになったんですけど、僕が今言っていることって、多分千秋さんの影響が強いんだと思います。
どうやって自分の音楽を届けるか。どうやってこの言葉を届けるか。そういうことを考えていった結果、今の考え方になっていったのかなって思います。
それから、Plastic treeみたいにコンセプトは普遍的かつ、そのシーン時々に合わせた届け方を模索していきたいですね。
——ヴィジュアル系シーンに対して思うことはありますか。
詩音:もっといろんなジャンルが増えてもいいと思うんです。ヴィジュアル系って、本当に何でもできるジャンルだと思うので。
若い世代ももっと増えてほしいですし、MASKEDみたいなイベントやサーキット、フェスももっと増えてほしいですね。大御所も、中堅も、新人も一緒に出るイベントがもっと増えたら、シーンも活気づくと思います。
あと、ヴィジュアル系のライブって、初めて来る人にはハードルが高いと思うんですよ。だからこそ僕は、ライブで「好きなように観てください」って言っています。後ろで観ていてもいいし、じっと観ているだけでもいい。
そこからヴィジュアル系を好きになってくれる人が一人でも増えたら嬉しいですね。
読者へのメッセージ|今応援していることを、運が良かったと思ってもらえるように
——最後に、この記事を読んでくださっている方へメッセージをお願いします。
詩音:長い間応援してくれている人もいれば、最近僕を知ってくれた人、名前だけ知ってくれている人もいると思います。
この記事を読んで、「なんとなく存在は知ってたけど、こういうことを考えていたんだな」とか、「ちょっと興味が出てきたな」と思ってくれたらいいなと。
ライブに来てほしいとは別に言わないんですけど、興味を持ってくれただけでも嬉しいですし、曲を聴いてくれただけでも嬉しいです。
いつもライブに来てくれている人には、本当に直接力を貸してくれてありがとうって思っています。
僕はまだ歴史が浅いバンドマンです。でも、この先20年と続けていくことになったら、今って一番最初の時期になるじゃないですか。だから、この時期から応援している人は運が良かったって思ってもらえるようになりたいです。
もっと人を集めて、もっと大きい景色まで連れて行きたいと思っているので。
これからも応援よろしくお願いします。
まとめ|「誰かの日常に根付く音楽」を目指して

「僕の音楽が、その人の日常の一部になったらいい。」
インタビューを通して何度も語られたこの言葉こそ、泡沫と雨というプロジェクトを表す一番のキーワードなのかもしれない。
日本語ならではの文学性を大切にしながら、聴く人それぞれが自由に解釈できる余白を残した歌詞。
オルタナティブやシューゲイザーを軸に、景色や季節まで想像させるサウンド。
そしてライブでは、「好きなように見てほしい」という言葉どおり、一人ひとりが自分らしく音楽を楽しめる空間をつくり続けている。
その根底にあるのは、詩音の「音楽に救われてきたからこそ、今度は自分の音楽で誰かを救いたい」という思いだ。
現在はソロプロジェクトとして活動する泡沫と雨だが、その先にはバンド編成での活動や、より多くの人へ音楽を届ける未来を描いている。
「第二のDEZERTになりたい」と語った詩音が目指すのは、ただ知名度を上げることではない。
誰かの生活に根付き、ふとした瞬間に思い出してもらえる存在になること。
泡沫と雨の物語は、まだ始まったばかりだ。
インタビュー:ヴィジュアル系百科 編集長 太田翔子
