シェルミィ「如月行最終列車」ライブレポート

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2025年4月26日、東京都・浅草。

雷門

古き風情と芸術の息吹を感じるこの街で、シェルミィが「インナァルインセミナ」ツアーのファイナル公演、如月行最終列車を迎えた。

開演前、レトロな街を巡り歩いていると、どこからともなくに香るお香の匂い。

浅草花劇場

シェルミィの単独見世物公演で開演前に流れるあの曲──「迷い子のリボン」が脳裏に再生されるようだ。

目次

会場の佇まいと、始まりの予感

浅草花劇場

浅草花劇場に入場する。

ステージはやや高く、柵はない。

天井が高く、どこか体育館を思わせるその作りは、シェルミィの持つ「学校」的な記憶を想起させる。

開演を告げるSE。ツアー仕様にアレンジされた「迷い子のリボン」と、電車の走行音が重なる。

そして、列車は動き出す。

1曲目「舌禍」|一撃で叩きつけられる覚悟

幕が開いた瞬間から、メンバーは全力だった。

この公演にかける各々の想いがこもった音圧が、鋭く突き刺さる。

ドラム・爻

爻は、ステージ外での穏やかな姿からは想像できない禍々しさを帯びた烏の嘴のようなマスクを纏う。安定しつつも力強いプレイで、空間を掌握する。

ドラムセットに施された日本国旗。ここ浅草という場所との呼吸すら合わせてくる、芸術性の高さに唸る。

ベース・凌央

凌央は激しいステージングに合わせて衣装の装飾を揺らし、まるで現世に降り立った若き神のような存在感を放つ。

舌舐めずりをし、いたずらっぽく笑う仕草は、小悪魔のそれだ。

ギター・友我

友我がギターを掻き鳴らす姿は、どの角度から見ても麗しい。

その端正な容姿と、苦虫を噛み潰したような表情とのギャップが生む、高潔さと残酷さ──触れることの許されない、聖域感があった。

ボーカル・豹

そして豹。

獣のように逆立った髪を振り乱し、今日もすべてを曝け出すようなステージングで立っていた。

このツアー中、豹はその心の不安定ささえも偽ることなく、毎回ライブで吐き出してきた。

寂しさも、悲しさも、弱さも、ダークヒーローのようなカリスマ性も。

すべてがこの夜に凝縮されていた。

「もっと強くなりたい」

と、怒りさえ帯びた声で叫ぶ。

かと思えば、フロアを心から楽しそうに眺めて、笑う。

矛盾するすべての感情を抱えながら、確かにそこに生きている。

“生きることそのもの”を体現する存在だった。

「ひきこもり人生」|声を振り絞る負け犬たち

恒例のメンバーコール。

この夜のフロアは、明らかにこれまで以上だった。

負け犬たちは、メンバー一人ひとりの名前を叫びながら、声を振り絞っていた。

爻へ、友我へ、凌央へ、豹へ──それぞれの存在を、確かにこの場所に刻み込むために。

「バイバイ」|豹が見せた“二人”

「バイバイ」では、豹が歌詞の情景になぞらえ、ステージ上で一人二役を演じる。

目の前の「君」へ訴えかけるような視線、仕草。

ステージにいるのは確かにひとりのはずなのに、そこにはふたりの豹がいた。

視線ひとつで、ここまで物語を語れるのか。

その表現力に息を飲む瞬間だった。

「ハッピーオーヴァードーズ」|この時間がずっと続けばいい

曲中、豹がふとこぼした。

「幸せだなあ」

激しく暴れ、拳ヘドバンする負け犬たちを眺めながら、溜め息のように洩れた一言だった。

苦しみを抱えた者たちが、互いに傷を隠さず、同じ空間で叫び、暴れる。

小さくても確かな、この場所にしかない“幸せ”が、たしかにそこにあった。

本編ラスト「如月駅」

そして本編最後は、公演タイトルにも掲げられた「如月駅」。

このツアーのテーマ、「終着駅」の象徴。

列車は止まったようで、しかしそれは決して「終わり」ではなかった。

アンコール|1stシングル「平成メンヘラセオリー」

アンコールで演奏されたのは、シェルミィの始まりともいえる曲「平成メンヘラセオリー」だった。

このツアー中、ほとんど披露されることのなかった一曲。

それだけに、ファイナルでこの曲を持ってきたことには、明確な意味が込められていたように感じる。

過去を背負い、傷を抱えたまま、それでも未来へ歩き出す。

そんな彼らに、これ以上ふさわしい曲はなかった。


アンコールラスト|「新居」

豹は隠すことなく言葉を吐き出した。

「こんな歌作ってごめんって気持ちもある。

豹くん諦めたかったんかなとか、頑張りたかったんかなとか、どう思ってくれてもいい。

今、全然思い描いてた9年目じゃなくて。それでも、これからも進んで行くから。

だから、ついてきて欲しい。」

声は震え、言葉はまっすぐだった。

飾らないその叫びに、場内は静かに、しかし確かに共鳴していた。そして最後に選ばれたのは「新居」。

新たな場所。新たな始まり。

豹が吐き出した痛みも、悔しさも、願いも、すべてを抱えたまま、それでも前へ進むための歌だった。

メンバーからの言葉

アンコール後、ひとりずつ言葉を紡ぐ。

爻:「足元悪い中、来てくれてありがとう。シェルミィって、大事な日はいつも雨なんよね。

これからもシェルミィは走り続けていくんで!」

友我:「このツアー中いっぱい遊びました。

豹くんと後輩に奢りすぎて金ないんで、いっぱい金使ってください」

凌央:「豹くんも触れてたけど、アルバム曲だけでセトリ組めるくらいにまでなれた。

これからも俺らの曲で病んでください。それが、俺らの求めることです」

豹:「シェルミィは9周年を迎えます。もっと強くなりたいと思ってる。

諦めかけた夢を追っていくので、これからもついてきてください。

本日は誠にありがとうございました!」

こうして、2024年7月から続いた全国ツアー「インナァルインセミナ」は幕を閉じた。

3つの“幸せなお知らせ”

この日、シェルミィから3つの“幸せなお知らせ”が発表された。

6月7日 新シングルEP『少年蓮』リリース決定

収録曲
  • 「少年蓮」
  • 「陰口」
  • 「自分を殺している」

公演終了後、巨大スクリーンに新曲「少年蓮」のMVティーザー映像が映し出された。

閉塞感のある廃墟のような無彩色の空間で、鮮やかな色を纏ったシェルミィの4人が奏でる。

その曲は、ややパンクロックを感じさせつつ、どこか懐かしさもある陰鬱な、紛れもない「ヴィジュアル系」。

リリースが待ち遠しい。

5月31日 下北沢ReGで『少年蓮初披露始業式公演「真学期」』開催

リリースに先駆け、東京・下北沢ReGで初披露公演が開催される。

その目で、耳で、新たなシェルミィを感じてきてほしい。

新ワンマンツアー「泥」開催決定(全公演入場無料/追加公演あり)

そして、新曲を携えた全国ツアーが幕を開ける。

10年目に差し掛かるシェルミィ。果たして、どんな進化を見せてくれるのか。

最後に

この夜、「インナァルインセミナ」は終わりを迎えた。

だが、それは本当の終着点ではなかった。負け犬たちを乗せた列車は、まだ走り続ける。

諦めかけた夢へ、もう一度、手を伸ばすために。

シェルミィ

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この記事を書いた人

関西在住。大学では法哲学を専攻し、「ヴィジュアル系における自由と規律」をテーマに研究。音楽を通じた表現と社会的規範の関係性に関心を持ち、ヴィジュアル系という文化現象を美学・社会構造・言語の観点から読み解いてきた。現在はメディア運営者・ライターとして、執筆を通じてバンドの世界観を言語化し、ヴィジュアル系の魅力を広く伝える活動をしている。

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