グラビティ「tUrn ON TOUR」大阪編ライブレポート

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2025年4月19日、OSAKA RUIDOにてグラビティのワンマンツアー「tUrn ON TOUR」大阪公演が開催された。

観客数は体感180人前後。開場前からビルを囲むように列が伸び、入場が始まってもなお列は途切れず、会場内には入りきらないほどの観客が詰めかけていた


目次

静かにともり始める灯りと、変化の予兆

静かにともり始める灯りと、変化の予兆
OSAKA RUIDO

開演が近づくにつれ、客席では少しずつキラキラリングの灯りがともりはじめる。その小さな光が一つ、また一つと増えていく。

ステージがまだ暗いにも関わらず、観客たちの体温と視線は、すでに幕の奥を射抜いていた。

幕が開くと現れたのは、黒を基調に未来的・退廃的な要素を随所に散りばめた装いに身を包んだ5人。その姿は、すでに“次のフェーズ”に足を踏み入れたグラビティの現在地を象徴していた。


開幕から全開。拳と熱気が即座に立ち上がる

ライブ序盤から飛び出したのは、重量感あるサウンドと鮮やかなバンドアンサンブル。

観客は序盤から遠慮なく拳を突き上げ、ヘドバンが巻き起こる。フロアが最初の1曲から“ライブ後半戦の熱”に到達しているような勢いだった。

代表曲「人生カワタニエン」では、爆発的な盛り上がりを見せる。

この日のセットリストには、最新アルバム『SERAPH1M』からの楽曲が多く含まれており、エレクトロサウンドを軸にしながらも、バンドとしての重みを増した“新生グラビティ”の姿が明確に浮かび上がっていた。


ステージ上の5人、その存在感

ステージ上の5人、その存在感
2025.04.19 OSAKA RUIDOにて

クールな表情でベースを奏でるのはリクト(Ba)。鋭く美しい立ち姿でステージを引き締める。

Myu(Gt)は時折笑顔を浮かべながら、柵ギリギリまで身を乗り出して観客を見つめる。暴れるフロアを満足そうに眺める姿が印象的だった。

漆黒のジャケットに身を包む杏(Gt)は、どっしりと腰を据えて派手な動きはないが、音で空間を支配していた

社長(Dr)はその小柄な身体からは想像もつかないほど力強くリズムを叩き出し、バンド全体の推進力となっていた。

六(Vo)は、白く血の気のない頬と真っ赤な目元メイクが対照的だ。中性的な高いトーンでありながら、激しいバンドサウンドにも一切埋もれない歌声は、感情を孕んで鋭く響いていた。


MC|大阪らしいやりとりと、静かに降ろされた“本音”

六はMCで、

「熱気がすごいわー!バテてないか!?」

と少し息を切らしながらも笑顔を見せ、場内の一体感を確かめる。
さらに、

「みんな大阪万博行った!?」

という軽快なやりとりで場を和ませつつ、雰囲気は徐々に変わっていく。

「ちょっと前さ、誰かに頼りたいってくらい、しんどい時期があって。そんな時に、亡くなった父親のことを思い出したんだよね。車ん中でミルクキャンディー舐めてたなあ、って。」

この言葉のあとに演奏されたのが、「C4NDY」だった。


「C4NDY」|鋭さと痛みに満ちたステージ

「C4NDY|鋭さと痛みに満ちたステージ
2025.04.19 OSAKA RUIDOにて

「C4NDY」は、内面の鋭利さや、言葉にならない“揺らぎ”を剥き出しにしたような曲だった。

歌詞の随所に漂う身体性、「口」「アルミ」「リボン」といった物質的なモチーフが不穏に立ち上がる。

六は「撮ってもいいし、動いてもいい」と語ったが、観客の多くは、むしろ静かに息を飲むようにこの曲を見守っていた。


「the LI3ght_ON/OF」|夜明けを照らすスマホライト

次に演奏された「the LI3ght_ON/OF」は、アコースティックギターとアラーム音で始まる楽曲。

六がスマホのライトをかざして促すと、観客も次々と同じようにライトを掲げていく。サビの高まりとともに会場が光の海へと変わる様子は、まさにバンドと観客の“共同演出”そのものだった。


グラビティは、すでに“次の景色”を見ている

「キラキラ系」「地雷系」「歌詞が面白い」──
そうした言葉で語られてきた時期があったかもしれないし、今もなおそうした印象を持つ人がいるかもしれない。

しかし、今日のステージはそれを容易く飛び越えてきた。彼らはヴィジュアル系の枠を超えて、“バンドとして何を鳴らすか”という問いに真正面から向き合っていた。


終幕と、その先の光景

ライブは最後まで熱を失わないまま、幕を閉じた。演奏も演出も、もはや“RUIDOという箱では収まりきらない”ことが、終始伝わってきた。

演奏のクオリティ。表現の幅。フロアの熱。そのすべてが、「グラビティはこれから、さらに大きな景色を見せてくれる」と確信させてくれるに足るものだった。

彼らの音がもっと遠くに響き渡るその日を、すでに想像できる。だからこそ、今日この箱で、その音を、表情を、息遣いを、肌で感じられたことはとても幸運なことだった。

次にこの熱が解き放たれる場所では、きっと今日とは違う景色が見える。

その時はまた、今日ここに集った誰かと隣で叫びたい。

グラビティ

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この記事を書いた人

関西在住。大学では法哲学を専攻し、「ヴィジュアル系における自由と規律」をテーマに研究。音楽を通じた表現と社会的規範の関係性に関心を持ち、ヴィジュアル系という文化現象を美学・社会構造・言語の観点から読み解いてきた。現在はメディア運営者・ライターとして、執筆を通じてバンドの世界観を言語化し、ヴィジュアル系の魅力を広く伝える活動をしている。

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