
2026年7月13日。
祇園祭 山鉾曳き初め(前祭)で賑わう京都でこの日。
umbrella Vocal / Guitar・唯のソロワンマンライブ【唯我独唱】が行われた。
夕方になっても下がらない気温。
コンクリートからの照り返しに汗ばみながら、会場である都雅都雅に辿り着く。

まず目を引くのは、厳かな木製の扉。
「火除天満宮」の境内、つまり神社の敷地内に位置している、珍しいライブハウスだ。

扉を開き中へ入ると、目の前には「都雅都雅」の名が記された木札が。
少し涼しい空気を感じながら階段を降りていく。
フロアへ足を踏み入れると、テーブルと椅子が用意されており、傘人(=umbrellaのファン)たちが和やかに会話を楽しみながら開演を待っている。
中には、祭らしい浴衣姿も。
ステージを照らす青い光も相まって、夏の夜の風情を感じさせる空間となっていた。
入場〜開演
やがて、本日の主役でありたった一人の演者である唯が、客席側から登場。
決して夏らしくはない、黒色のロング丈の衣装。
目元がやや隠れるほどの大きな黒色の帽子。
異質でありつつも、ヴィジュアル系らしいその出で立ちは、浮ついた気持ちを少し鎮めてくれるようだった。
1曲目|elegy
7弦ギターを担ぎ、最初に放つのは最新音源【独楽-dokugaku-】に1曲目に収録されている『elegy』。

分厚いギターサウンドが都雅都雅を包み込み、涼しげだった空気は一気に熱を帯びる。
そこに重なる唯の繊細なファルセット。
「サヨウナラ ココロのシンパシー
抱いて眠っていた あの頃をdelete」──唯『elegy』より
ふわふわと浮かぶようでありながらも、決してぼんやりとした歌声ではなく、泣き出しそうな切なさを孕む。
「汚れていた掌 白い部屋
人々は僕を睨んだ」──唯『elegy』より
伸びの良い歌声で、強く、時に鋭く歌い上げるumbrellaの唯とは一味も二味も違う。

そして、冴え渡るギターソロが微睡みから目醒めさせる。
出だしから濃密なオルタナティブ・ロックで都雅都雅を自分色に染め上げた彼は、
「よろしくお願いします。」
と、やや舌足らずな声で挨拶をするのだった。
2曲目|Wonderland Monster Tree
「どうせ最後はみんな登るんだ
滑稽でしょう
神様はきっと笑ってんだ
嫌いだな」──唯『Wonderland Monster Tree』より
先ほどまでのふわりと柔らかい歌声から、より強く芯のある歌声へ。
歪んではいるが確かな輪郭を保ったギターの音は、まさに地を這う樹木の根のようだ。

「どうせ最後は一人になってんだ
虚しいでしょう
終末迎えたら
笑ってさ明日を考えんだ」──唯『Wonderland Monster Tree』より
中性的なビジュアルの唯から放たれる野太いギターの轟音が、会場を惹きつける。
「ありがとう。」
少しぶっきらぼうに呟くと、フロアからは大きな拍手が起こった。
そうして、白色のボディが目をひくMary Guitars製のモデルに持ち替えた唯。
「唯です、よろしくお願いします。」
今日という日、ここに集まった傘人たちに言葉をかける。
「京都祇園祭と並行してお届けする、【独楽-dokugaku-】祭りです。
今日はよろしくお願いします。」

3曲目|干渉
提灯ではなくランタンが柔らかく照らすステージ上で、こちらも【独楽-dokugaku-】より新曲。
「何にもない空に映す
身勝手な想い馳せる
都合のいい生き物さ」──唯『干渉』より

青みがかった光に照らされ、ステージ上で神秘的なまでに白く輝くギター。
都会的でありながらどこかノスタルジックな音が、都雅都雅に響き渡る。
「蹲り隠れた
月明かりは見えない
情けない夜に君のハミングが
遠くから聴こえてきたんだ」──唯『干渉』より
時に身体をゆらゆらと揺らしながら歌う唯。

明るいようで切ないメロディが真っ直ぐな声で届けられ、涙を誘う。
4曲目|空想シティ
赤色の照明がステージを彩る。
疾走感のあるビートに乗せて奏でられる不穏なリフは、理想と現実の狭間で揺らぐ思考そのもののよう。
「安息の地
笑い合ってるその世界がお望みなら
どうかお気をつけて」──唯『空想シティ』より
皮肉めいた歌詞と歯切れのいいサウンドのギャップが、この曲の訴えかける苦しさを一層引き立たせる。
間奏では、象徴的なリフをタッピングで魅せる唯。

「笑われそうな事を話すが
時々君を感じてたんだ
頭に響く現実的な
残酷な結末のビジョンが」──唯『空想シティ』より
張り裂けんばかりの歌声を響かせるが、
「はぁ…後でもっかいやります!」
と、納得がいかなかったのか、リベンジを宣言した。
5曲目|Garbage
「血の覚悟 後悔の匂い Yeah
くたばりなよ 全開のIn my head」──唯『Garbage』より
のびやかに歌い上げる、シニカルな歌詞。
ヘヴィなサウンドの中でも埋もれることのない、その力強い歌声に引き込まれる。

「倫理吐くよ 崩壊のメロディ Yeah
さあ見てなよ
満遍のSmileで」──唯『Garbage』より
楽しそうに、悪戯っぽい笑みを浮かべながらギターソロを奏でる唯。
曲終わり、
「ありがとう。」
そう呟くと、次いでこう告げた。
「向かいのおじさんに贈ります。」
6曲目|medicine
同期もギターも、完璧と言っていいほど【独楽-dokugaku-】音源の空気感そのままの、重厚かつどこか奇妙なサウンド。
「生涯なんて瞬きしたら終いだ
泣いて笑う隙はさてあるかしら」──唯『medicine』より
唯のしゃくりを効かせた歌唱が、楽曲のグルーヴを際立たせる。

「「そういえば」
向かいのおじさん(60くらい)が言ってたんだ
「世の中、平等にはならない」と」──唯『medicine』より
“おじさん”に思いを馳せ、掌を合わせる唯。
右腕の袖をまくると、気迫たっぷりのギターソロを響かせる。
「この世の全てが永遠でもいいから
壊れてしまえばある意味平和じゃないかな」──唯『medicine』より
研ぎ澄まされた歌声は、前へ前へと突き刺すように、遠くへ届けるかのように放たれた。
7曲目|せっかち
柔らかな歌声に寄り添うような、繊細なギターフレーズ。
オレンジ色の照明が暖かくステージを照らす。
「くだらない事ばかりだって
私には生き甲斐なんだ
そんなせっかちの気まぐれ
お嫌いですか?」──唯『せっかち』より
太く響く歌声と、ファルセットのコントラストが美しい。

「もうこれ以上の現実を歩く
様々なドラマしかと受け止めよう」──唯『せっかち』より
客席に視線を送り、語りかけるように唯は言葉を紡いだ。
8曲目|Hello. Lonely World
「強く擦った左目を開けた
慣れたはずの声薄れていた」──唯『Hello. Lonely World』より
ややハスキーな声で語る、等身大の物語。

「誰も邪魔なんてさせない
胸に秘めた大切な言葉と願いだけは譲らない」──唯『Hello. Lonely World』より
飾り気のないリアルな想いを、胸が締め付けられるほど切なく歌い上げる。
熱を帯びた渾身のストロークでギターを掻き鳴らした。
9曲目|ダイアグラム
「曖昧なダイアリー
筆は遠くシンパシー」──唯『ダイアグラム』より
疾走感と浮遊感を見事に両立させたシューゲイザーサウンド。

ふわりとした歌声と、脈打つギターリフとのコントラストが際立つ。
「明日はまたやってくるから部屋の窓を開けよう
私らしくないけれど
私らしくなるように」──唯『ダイアグラム』より
風が吹き抜けるように広がる音。
揺れ動く感情を、優しく包み込む。
10曲目|鈍色
前曲に引き続き、空間を埋め尽くす轟音。
「うららかな日々想ふ
果てなく沈む黄色い花(ひまわり)
人々は戻らない 解けていく温もりが」──唯『鈍色』より
吐息混じりのウィスパーボイスにもかかわらず、唯の歌声はフロアいっぱいに響き渡る。
「降り続く日々嵩む 足早に去る人姿
穏やかな面影も 忘れていく瞳から」──唯『鈍色』より
2番では、歪みながらも品のあるギターフレーズがふわりと漂う。
そして唯の真骨頂ともいえる、厚みのあるオルタナティブサウンドが、間奏で一気に空間を支配。

力強くギターを掻き鳴らす彼は、時に恍惚とした表情を浮かべ、ステージ上で妖艶に輝いた。
11曲目|蛾
「ほら、この目に語るように
サヨナラの合言葉」──唯『蛾』より
優しく囁くような、透明感のある歌声。

「廻り巡る渦の中で
傷付け壊し続ける世界に
サヨナラの合言葉」──唯『蛾』より
同じフレーズを、今度は重厚なギターにも埋もれない力強い声で響かせる。
「せめてもう一度だけ
消えかかる視界の中で私を抱いて」──唯『蛾』より
喘ぎ声のようでもあり、泣き声のようにも聴こえるギターの音色が、胸の奥へ突き刺さる。
演奏を終えると、唯が口を開く。
「向かいのおっちゃんも、色々──
結構強がって生きてたみたいです。
“進行”してたみたいで。僕の前ではそういうの見せずに、
虚勢を張ってたんだなと。
今日はそんなおじさんに、恩返しというか。
『そんなんええのに』という言葉と共に、この曲を贈ります。」
12曲目|Bluff
まるで何かを懐かしむような、レトロなニュアンスのサウンド。
「逃れられない 出会いと別れには 傷付けられるのさ
もう見えないや」──唯『Bluff』より
歌詞に合わせ、眼を覆う仕草を見せたかと思うと。
「溢れちゃうな」──唯『Bluff』より
堰き止めていた感情を解き放つかのようなギターの音が、濁流となり押し寄せ、都雅都雅を埋め尽くす。

「ありがとう」
観客、そして“おじさん”へ、唯が優しく告げると、会場は拍手に包まれた。
13曲目|ミミック
「そう僕は退屈だった
小さい世界の隅で」──唯『ミミック』より
思わず身体が揺れるようなグルーヴ感。

ファンタジックな詞世界へと誘っていく。
「私達は知らない
心の奥忘れるから
美しい世界に冒される
虚な夢へ」──唯『ミミック』より
サビでは、音が溶け合いひとつの塊になっていくような心地よさに、会場中が包まれる。
14曲目|スイミー
ターコイズブルーの光がステージを照らす。
瑞々しく、どこか揺らぎのあるギターの一音目が鳴った瞬間、脳裏に浮かぶのは「海」。
「さぁ悲劇の幕が開ける
昨夜はまぁまぁです
乗り切れました」──唯『スイミー』より
泳ぐように空間を漂うギターの音色と、肩の力が抜けたような唯の歌声がシンクロ。
時に沈み、時に浮かびながら都雅都雅を自在に泳ぎまわる。
最後に唯が口を開く。

「ありがとうございました。
ほんとに、コロナの中でもがき苦しんで、
どうにかして皆にもがいてる姿を見てほしいと始めたものなんですけど。
ここまで続けてこられました。ありがとう。
──umbrellaもソロも、どんだけ神様に“おねがい”と言っても、
手の届かないものもあるんですけど。
“おねがい”と言っていこうと。
命を削っていこうと思いました。
今日はありがとう。」
15曲目|おねがい
公演を締めくくるのは、【独楽-dokugaku-】のラストに収録されたこの曲。
「雑踏立ち止まって
人の流れを追えず
爛れて生き残った
我に返るとそこに誰もいない」──唯『おねがい』より
確かめるように、丁寧に、丁寧に言葉を届ける。
「せめて君は幸せになって
誰かに抱かれて眠りなさい
振り返らずに愛を受け
太陽の様に眩い世界の中へ」──唯『おねがい』より
愛する存在、愛し続けたかったであろう存在への、精一杯の言葉。

“太陽”とは対をなすような黒を纏い、顔半分に影を落とす帽子を深く被ったまま、歌う。
「いずれ名前さえ忘れられようとも
誰かの救いになれたのなら」──唯『おねがい』より
全身全霊を込め、叫ぶように歌い上げる唯。
目に涙を滲ませる傘人たちの姿も見られる中、【唯我独唱】は静かに幕を閉じた。
──かと思いきや。
16曲目|空想シティ
「ちょっと悔しいんで、もっかいやろかなと思います!」
と、再びステージへ。
「今日はありがとうございました。
まだまだ未熟だなー。成功率40%くらいかな。
8月8日までには完璧に仕上げてくるんで、よろしくお願いします!
そして、9月15日にここでまた【唯我独唱】決まったんで。
よろしくお願いします!」
突然のライブ告知に、フロアから歓声が上がる。
そうして、2回目の『空想シティ』を披露。

アップテンポなビートに体を揺らす傘人たち。
技巧を凝らしたフレーズも弾きこなし、和やかな雰囲気の中、今度こそ【唯我独唱】36 は幕を閉じたのだった。
まとめ
ソロという舞台で、umbrellaで見せる表情とは一味違う、ギター・ボーカルとしてのより逞しい姿を見せた唯。
彼の愛するオルタナティブ・サウンドが会場を包み込む、濃密な時間となった。
8月8日には、ついにサポートメンバー(=アルバイト)を迎え、「路地裏堂」としてのライブが披露される。
【お知らせ】
— 路地裏堂 唯 (@ROJIURADO) April 24, 2026
2026年8月08日(土)
ART POP ENTERTAINMENT PRESENTS
「CRUSH OF MODE-HYPER HOT SUMMER'26-」
2STAGE CIRCUIT@YOKOHAMA#01
BAYSISにサポートメンバーを率いて
初のバンド形態「路地裏堂」で出演決定しました。
【出勤】
アルバイトギター : えゐむ (枯レタ井戸ノ底。)… pic.twitter.com/krYtlXMM3m
これまでたったひとりで創り上げてきたステージに新たな色が加わり、果たしてどのようなライブが繰り広げられるのか。
8月8日、横浜BAYSISにてその全貌が明らかになるだろう。
そして9月15日には、ソロワンマン【唯我独唱】 37 が開催される。
【唯ソロ情報】
— umbrella.official (@umbrella_DATA) July 13, 2026
2026年09月15日(火)
京都都雅都雅
唯 ONEMAN
【唯我独唱】37
開場 18:30
開演 19:00
前売 ¥4,000-
※別途ドリンク代 1200円(2オーダー料金)
当日 ¥4,500-
※別途ドリンク代 1200円(2オーダー料金)
配信あり(ツイキャス) ¥3,500-
【チケット受付開始 2026.07.13 21:00〜】… pic.twitter.com/3XPFQseR84
「路地裏堂」バンド形態での公演を経て、ひとりで立つステージでの魅せ方、鳴らす音にどのような変化があるのかにも注目したい。
umbrellaで長きにわたり活動を続けながら、ソロワークにおいても精力的にリリース・ライブを行なっている唯。
彼の奏でるオルタナティブ・ロックに包まれながら、心の奥の暗がりにそっと寄り添うような歌詞に耳を澄まし、その底知れぬ魅力をぜひ感じてみてほしい。
※唯 ONEMAN 【唯我独唱】36 アーカイブは、2026年7月27日(月) 23:59までツイキャスプレミアにて販売されている。(視聴期限:購入日時から14日間)

