
太陽がジリジリと身を灼く真夏の、8月8日。
横浜で、ART POP ENTERTAINMENT主催「CRUSH OF MODE -HYPER HOT SUMMER’26-」が開催された。

8月8日から11日まで4日間にわたり、横浜BAYSISとMusic Lab.濱書房の2会場で行われたこのイベント。
個性的なバンドが集う中でも注目を集めていたのが、BAYSISに出演する唯(umbrellaギターボーカル)のソロプロジェクト「路地裏堂」だ。
ソロ活動においてはひとりでステージに立ってきた唯だが、ついに3人のサポートメンバー(通称:アルバイト)を迎え、バンド形態でライブを披露する。
出番が近づくと、会場には「路地裏堂」グッズTシャツを身につけた多くのファンたちの姿が見られた。
転換中、会場内で流れていたのはオルタナティブ・ロックバンドであるスマッシング・パンプキンズの楽曲。
メンバー全員オルタナに造詣が深いこともあり、路地裏堂が果たしてどれほどの轟音を鳴らすのか、期待が高まっていた。
開演
深いリバーブのかかったギターの音が鳴り、和やかに談笑していたフロアに緊張が走る。
響き渡るのは、異世界へいざなうようなフィードバックノイズ。
まるでシャッターを上げるかのごとく、幕がゆっくりと開いていく。
次の瞬間、凄まじい音圧のバンドサウンドがBAYSISに炸裂。
姿を見せたのは、黒を基調としたシックな衣装に身を包んだ、路地裏堂の4人だった。
ステージ中央で白く光を放つMary Guitars製のギターを構えた唯が、落ち着いたトーンで言う。
「路地裏堂です。よろしくお願いします」
1曲目|蛾
「見渡すのは屍の山
踏み歩いてきたの」──唯『蛾』より
重厚ではありながらも、湿度の低いサウンド。
ふわりとした唯の歌声が妖艶に舞う。
かと思えば。
「そして鋼の心が笑う
叫声は何を求め彷徨う
果ても無い夜空の海に攫われて」──唯『蛾』より
サビでは力のこもった鋭い声で突き刺した。

髪を振り乱す大胆なステージングが目を引くのは、ギター・えゐむ。
間奏では唯とふたり、ギター同士で囁き合うような掛け合い。
焦らすかのごとく静と動を行き来し、やがて熱を帯びた重低音で抉ってくる。
2曲目|Hello. Lonely World
「白くぼやけていた蓮の花が
ずっと胸の奥
映っているんだ」──唯『Hello. Lonely World』より
先ほどまでの激しさから一転。
えゐむの紡ぐアルペジオが、儚く柔らかに響く。
ベース・永山銀が奏でるフレーズは力強くも優しく、唯の歌声に寄り添うようだ。
「待ち続けたら背中に風が吹くはずと
信じてたんだ
そんな時代もあったっけな」──唯『Hello. Lonely World』より
等身大の姿を描いた詞を、少し潤んだ声で歌う唯。

今この瞬間、彼の背には路地裏堂アルバイトたちが立ち、共に音を鳴らしている。
祝福するように、観客たちは高らかに拳を上げた。
「胸に秘めた大切な言葉と願いだけは譲らない」──唯『Hello. Lonely World』より
ロングトーンを響かせながら、同時に滑らかなタッピングを魅せる。
4人向かい合い、息ぴったりにラストのコードを鳴らしたのち、唯がフロアに向かって言う。
「横浜いける!?」
3曲目|空想シティ
「虹を作ってさ渋滞のない環境にするとか
痛み悲しみが廃棄処分出来る施設作るとか」──唯『空想シティ』より
まるで骨を噛み砕くかのごとく、硬質で攻撃的な銀のベースが際立つ。
拳を突き上げ、揺れたり飛び跳ねたりしながら、音を感じる観客たち。
「一度浸れば戻れない
きっと本能と似た麻薬成分」──唯『空想シティ』より
「麻薬成分」のフレーズを、ファンたちが声を合わせて叫ぶ。
一体感と高揚感が増していくBAYSIS。
曲終わり、唯が一言。
「ありがとう」
会場は大きな拍手に包まれ、唯の名を呼ぶファンたちの力強い声が響いた。
「給水!」
という店主からの指示を受け、しっかりと水分補給をする路地裏堂アルバイトたち。
「熱中症対策をきちんとしてるホワイトな企業、路地裏堂です。
よろしくお願いします。
初ライブです、楽しんでいってください」
4曲目|Garbage
赤色に彩られるステージ。
唯はザラついた質感のダークな音で、イントロのフレーズを奏でる。
「鍵穴の奥 似たような社会が
目障りで しんどいです」──唯『Garbage』より

歪んで混ざり合い、一塊になって押し寄せるサウンドを、dagakiのドラムが引き締める。
腕まくりをして唯がソロパートを弾くと 、じっと見入る者もいれば、拳を上げ体を揺らす者も。
「Jesus
ささやかなcalling
まだ救いがあるならば」──唯『Garbage』より
前を見据え、ぽつりぽつりと呟くように、それでいて一言一言を届けるように歌う唯。
その隣でえゐむは鳴らす音は荒々しく、厭世的なムードを一層引き立てる。
フロアへ笑顔を向けながら手を叩く銀に導かれ、観客たちも大きく手拍子をした。
5曲目|medicine
音源のやや軽快なイメージとは裏腹に、凄まじい重低音が体の芯まで響く。
ステージ上でスポットライトを浴びるdagaki。
打ち鳴らすフィルインが、力強くBAYSISを貫く。
「この世の全てが今だけでもいいから
壊れてしまえば痛みは楽になるのかな」──唯『medicine』より
頭痛は頭痛でも、頭が割れるような激しい痛みを思わせる爆音。
「薬は手放せないけど」──唯『medicine』より
唯は歌いながら、左胸にトントンと手を当てた。
MC
再び訪れた給水タイム、メンバーの名を呼ぶファンたちの大きな声。
「アルバイトさんと今日、初です!ありがとうございます。
ついにアルバイトを雇うことができるようになりました。
店主・唯です、よろしくお願いします。」
路地裏堂の始まりを、観客たちは拍手で祝う。
「ごめん、急にここでMC挟むつもりなかってんけど…永山って呼ばれてんの?」
と、メンバーコールに思わず突っ込む唯。
「だって永山だし…」
本人からの回答に、
「高校みたいやな!」
と唯の率直な感想。
「ふあー!(笑)」
永山の可愛らしい笑い声につられ、観客たちからも笑みが漏れた。
6曲目|ミミック
ギター二人の分厚いサウンドで、ロックな印象の強まったミミック。
「私達は見えない
心の奥埋める様に」──唯『ミミック』より
溶け合い、大きなひとつの波となって迫り来る4人の音。
「鍵穴を覗いてみた
僅かに光を見た」──唯『ミミック』より
dagakiがスネアを打ち鳴らすたび、そのあまりの力強さに圧倒される。
銀は愛おしげに、えゐむは激しく、そして唯は妖艶にと、それぞれステージングも個性を放つ。

重いビートを芯に据えつつ、音はだんだんと浮遊感を増していき、BAYSISいっぱいに満ち溢れた。
曲を終え、フロアが拍手に包まれると、唯が告げる。
「ありがとうございました。
良かったよ、でかい音がこの路地裏堂の醍醐味なんで。
これからもっとでかくなっていくんで、よろしくお願いします。」
そしてついに最後の曲へ。
「ラストいきましょう!!」
ラスト|ダイアグラム
「いくぞ!!」
唯の声を合図に、拳を上げる観客たち。
爽快感と疾走感たっぷりのこの曲で、楽しげに揺れながらベースを弾く銀。
えゐむは真っ直ぐに観客たちを見据える。
「動き出した
乱れたダイアは私みたい」──唯『ダイアグラム』より
観客たちは、両手を上げて元気よくチョップを繰り出す。
間奏では唯とえゐむが向かい合い、互いに深々とお辞儀をする場面も。
「私らしくないけれど
私らしくなるように」──唯『ダイアグラム』より
アウトロ中、ふと音が止み、暗闇の中で照らされた唯が告げる。
「2026年10月30日。
西荻窪・西荻BETTY ROOMにて、路地裏堂ファーストワンマンやります。
よろしくお願いします!」
悲鳴にも似た歓声が上がるBAYSIS。
「ありがとう」

最後には路地裏堂メンバー4人が円になり、それぞれの音を目一杯に掻き鳴らす。
大きな拍手に見送られ、明るい表情で彼らはステージを後にした。
まとめ

空間系オルタナティブバンドと称されるumbrellaの唯が、自身のよりパーソナルな部分を楽曲にし、ステージで披露しているソロワーク。
これまでのライブでも彼の音楽性はいかんなく発揮されていたが、バンド形態「路地裏堂」ではより濃密なオルタナティブ・シューゲイザーサウンドが炸裂した。
7曲を通じて、ヴィジュアル系シーンでは型破りとも言える方向性を示した彼ら。
「まさに音源通り」な曲もあれば、意表をつかれる場面もあった。
10月30日に行われる西荻BETTY ROOMでのワンマンライブでは、さらにその世界の広さと深さを味わうことになるだろう。

ぜひその身をもって、体感してほしい。
レポート:ヴィジュアル系百科 編集長 太田翔子

