【ドラマー対談】umbrella・将×ナキリ・ひたぎ《第1話》妥協しない練習と音作り。ふたりの共通点と違いとは

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関西を拠点に活動するヴィジュアル系バンドが、近年勢いを増している。

今回ヴィジュアル系百科では、2027年に結成17周年を迎えるumbrellaと、始動3ヶ月のナキリにフォーカス。

実は、umbrellaのドラム・将と、ナキリのドラム・ひたぎは、かねてから親交が深いという。

9月10日にはumbrella主催イベント【アマヤドリ】で共演する彼らに、ドラマーとしてのこだわり、互いの共通点や違い、機材選びのポイントについて語ってもらった。

目次

自分のバンドで叩く上での意識や工夫|タイム、ダイナミクス、そしてメンタル

——早速ですが、お二人が自分のバンドでドラムを叩くときに意識していることや、工夫していることを教えてください。

将:僕、すごいシンプルっすよ。クリックに合わせる。

ひたぎ:ああ〜、シンプルだけど間違いなく一番大事なこと(笑)。

将:umbrella自体、唯さん(ボーカル&ギター)がクリック通りのドラムが好きなんで。それに準じて、かなりビタビタに合わせていくようなドラムにしたいという感じですね。

サポートの方がビタビタじゃないことが多いです。多少ずれても「グルーヴで!」っていう(笑)。

ひたぎ:「グルーヴということで」っていうね(笑)。

将:あとは、ダイナミクス。音量にめっちゃ気を遣ってる。バラードでやる時は特に、アクセントでめっちゃ出すところと、弱いところの差をつけるようにしてます。

「グルーヴとはなんぞや」っていう答えのない問いに対して、個人的な「グルーヴ論」があって。まず、タイミングは全部ジャストやと思ってるんですよ。そこにダイナミクス——音量の幅をつけようとした時に、何かしら「強い音は速く聴こえる」とか、「弱い音は遅く聴こえる」とか、あくまで印象の話ですけど。実際出る音はそう(ジャスト)じゃなくなってる感じ。ここにグルーヴがあると思ってるんです。

バスドラを使うのか、シンバルを使うのか?というのも、グルーヴをコントロールするためにある。そこでシンバルを使ったら速く客席の方に行くし、バスドラを使ったら遅く行くし。

ひたぎ:聴覚上とか体感上のずれによって生まれるっていう。

将:やと僕は思ってるんですよね。だから、その要素の1個としてのダイナミクスというのはめちゃくちゃ大事やと思ってます。

ひたぎ:メタラー的にもすごいわかる!

ブラストビートって、グルーヴがないものとされるやんか。動き的には、全部フィンガーストロークで均一に叩いたら確かにノングルーヴやねん。やけど、手首とか肘で動きの波を作ると、ダイナミクスによるグルーヴが生まれると思う。

その方がメンバーもタイミングとりやすいし、お客さんも頭振る時タイミングとりやすい。

将:例えば全部打ち込みでやったら、ほんまにどこが頭かわからへんっすよね(笑)。

ひたぎ:マジでわからへん(笑)。ただ、ドラムがノングルーヴで、ギターリフでグルーヴ作るバンドもあるやん。バンドの志向にもよるかもしれん。

将:確かにね。逆にダイナミクスをつけないブラストビートのニュアンスみたいなのもある。そうなると、メンバー全員リズム取られへんようになるから、みんな自分を信じる(笑)。

ひたぎ:クリックを信じようの会になってくる(笑)。

将:ドラムンベースとか、ああいう打ち込みドラムで作ること前提になってる音楽は、逆にダイナミクスつけすぎたらなんか違うものになってしまう。

——ひたぎさんはどうでしょう?ナキリで叩く上での意識や工夫などは。

ひたぎ:これ多分、メタル系ドラマーあるあるかもしれないですけど。心が折れないように頑張る(笑)。

本当にドラムが難しいんですよ、あのジャンルって。身体的な負担も、脳みそ的な負担も大きいし。だから「今日は叩けないかもしれない」っていうギリギリな感じが常にあって、どうしてもメンタルに結構くるというか(笑)。

将:メタルドラマーの顔見てたらわかるんすけど、闘ってる顔してるんすよ(笑)。

ひたぎ:基本的に何かと闘ってるよね(笑)。

どう考えても、あんなテンポでツーバス踏むとかさ、普通の人間がやることじゃないもん(笑)競技性がどうしても高くて、アスリート的な側面が強いので、そこでいかに心折れずに、叩き続けるか。

練習も、技術維持の割合がどうしても多くなったりとか、より細かく、より音数を増やすための練習になったりしますね。「いいドラムを叩くぞ」っていうよりかは、いかに手数足数を増やせるか。ほんとはニュアンスとか大事にしたいけど、それどころじゃない(笑)。

——表現云々というよりかは。

ひたぎ:フィジカル面の向上みたいな。表現に関しては、まずは手足が動くっていう前提をクリアした上でになりますね…(笑)そこから自分の色を足していくみたいな感じかな。

だから、サポートとかで全然違うジャンル叩くと「あ、そんなドラム叩けるんや」って言われることがよくあります(笑)俺ら二人とも自分のバンド以外の活動もめっちゃやってるんですけど、いろんなドラムを叩けるのはいいことだよね。

——メンタルはどうやって鍛えているのでしょうか。

ひたぎ:ひたすら練習あるのみですね。

「こいつずっとスタジオおるやん」みたいな(笑)。俺は運動能力が高いわけでもないので、練習するしかなくて。

基礎練は裏切らないというか。いかに基礎練を積み上げるかが勝負みたいなところがあって、「こんだけやったから大丈夫やろう」っていうのがメンタルガードに繋がってるのかなと思いますね。

将:僕も、ほぼ基礎練しかしてないすからね。

ひたぎ:そうなるよね。曲の練習ってほんとに案件に向けてが主になる。

将:基本、練習なしで行きたいって気持ちないですか?

ひたぎ:ああ、わかるわー!(笑)。行けるなら練習なしで行きたい。変拍子とかバキバキのキメとかは、流石に練習しないとってなるけど。

譜面だけとりあえず書いて、リハーサルのスタジオでぶっつけで通せたら「よしよし!」ってなる。

二人のドラマーとしてのタイプの違い|視覚優位か、聴覚優位か

将:僕、ロックバンドのサポートしてるんですけど、基本的に譜面書くだけです。

ひたぎ:譜面書く時は、フィルインはあまり決め込まないタイプ?

将:全く決めないっすね。その瞬間に鳴ってる音を聴いて、次の展開を予想できれば「こんなフィルインやろう」とわかるので。

ひたぎ:羨ましい限り(笑)俺は一回ちゃんと出来るだけきっちり採譜して、そっから崩すタイプ。

将:ほんまっすか?ひどいっすよ僕の譜面(笑)。一番左にそのセクションの長さと、AメロとかBメロとか。あとはそこのビート書いてるだけです。

ひたぎ:俺もそれで行きたい(笑)。ただ、ジャンル的に「このフィルがきっかけ」みたいなのがよくあるから、出来るだけ音源に近いフィルインを叩くようにって意識はあるかな。だから一回はきっちり書く。

将:確かにメタルやってたらそういう感覚になってきそうな気持ちはわかります。僕は採譜した段階で、音のイメージで覚えてしまってるんですよね。

ひたぎ:ああ、結構耳で曲を覚えるタイプ?俺、目で覚えるんよね。譜面を画像として覚えてて、それを頭の中で追っていくみたいな視覚優位なタイプ。

将:ええーっ。音符が頭の中に?僕、聴覚優位ですね。はあ〜面白っ。

ひたぎ:人によるんやな〜、面白い。こういうのって喋らないとわからないよね(笑)。

でもキックのパターンってさ、譜面で書いておいた方がよくない?耳だけだと覚えにくいやん?

将:確かに。僕も、メタルをやるってなったらガッチリ書く。

将:採譜する段階で、聴いては止めて。メタル系のああいうのは大変っすよね、ほんまに。

ひたぎ:ほんで、書いた譜面を見ながら練習して…

将:すげえ速さで流れていくじゃないですか(笑)。

ひたぎ:そう、速っ!ていう(笑)。

ああいうのを採譜して、見ながら演奏してっていう風に繰り返してたから、視覚優位になったのかも。

将:多分そうっすね。確かに僕も同じことやってたら、視覚優位になりそう。

互いの共通点|研究を積み重ねた「基礎練オタク」が出す音

将:逆に、共通点なんすかね?

ひたぎ:ドラムオタクというか、基礎練オタクが出す音、ってあるやん。

将:ああ!ありますね。練習してる音。

それこそ、ミュージシャンの中には練習しない人もいるじゃないですか。そういう人らもいいプレイするんですけど「練習してる音」ではないんですよね。

ひたぎ:五感優位な感じがする。あれすごいよね、真似出来ないし羨ましい。

将:それでいうと、この二人は完全に「練習してる音」。「こういう風に腕を使えば、こういう音が出る」という、作っていたものを出してる感じの音。

ひたぎ:「どれくらいスティックを握ったら、シンバルがこういうニュアンスで鳴って」とかを色々試すのが好きなタイプ。

将:どんな角度でいくのか、とかね。

ひたぎ:そういうの(研究)が好きなタイプ。

——他に何か共通点ありそうですか?

将:他に何かあるかなあ?

ひたぎ:ドラムのタイプ、全然違うしね。将くんはいいドラムを叩くタイプ。おしゃれで、ビートが良くて。自分は競技性が高いドラムだから、目指してる方向が違う。種目が違うよね。

将:僕自身も基礎練やってる時は、競技だと思ってますけどね。実際ドラムに向き合って叩くときに、まだ競技なのかそうじゃないか。僕はライブでやってる時は、そんな競技やと思ってないんで。

ひたぎ:俺、ライブの時は1曲目から闘いやもん(笑)。今、オープニングSEから繋がって1曲目にやる曲『独虚残生』が、足の刻みがめっちゃ細かい。うちの作曲者がそういうの好きで細かいのバキバキに打ち込んでくる。

——どんなアルバムですか?とお聞きしたら、「パワーです」とおっしゃってました。

ひたぎ:脳筋集団なんでナキリは(笑)ちなみにあの曲、仮タイトルが『ニンニクマシマシパワー』ですからね。曲からニンニクの匂い漂ってる(笑)。

——umbrellaさんは、そういうニンニクの香りがしそうな「パワー!」って曲、そんなにないですよね?

将:僕はライブ前よくニンニク食うてるんで、漂ってる可能性あるっすね。

ひたぎ:ニンニクの化身(笑)

将:唯一、パワーを意識して作った曲で言うと、『dilemma』かな。

——『dilemma』はバンドマンの方からも人気ですよね。

将:あれ、全パート楽器やってる人に刺さるフレーズなんすよね。

ひたぎ:あれバンドマン絶対好きやね。

細やかなこだわり|「音色に気を遣っていきたい」「でかくても、耳に痛い音は出したくない」

ひたぎ:パワーっていう観点だと、ダイナミクス幅で言えば将くんめっちゃパワー出るよね。MAX音量めっちゃでかいやん(笑)

将:練習の賜物っすね(笑)。

最近、もうちょい抑えていきたいんすよね、逆に。それこそ、音色の方にももう少し気を遣っていきたいなという。自分のリソースに限界あるんで。

umbrellaって、意外と音でかいんすよ。例えば自分がumbrellaの曲を聴くとして、そこで鳴ってて欲しいドラムの音はでかいんです。結構頑張ってるんですよ。

ひたぎ:頑張ってる部分を、音色の方に割きたいってことね。

将:柊くんも春さんも唯さんも、音めっちゃいいんで。竿隊がいい音出してると、ドラムはそれに負けない音を出す必要があるので、音量が上がってくる。

ひたぎ:でかい音でも、将くんの音はいい音だよ!その点ナキリのドラムはいかにベロシティ上げれるかみたいなとこある。もうベロシティ勝負。

将:全部120でみたいな(笑)。

ひたぎ:『カミソリ』のキメとかで一番でかい音出してるときは、120より上にいけるような意識でやってる。普段は頑張って100をキープしたいっていう目標(笑)。

ただ、やっぱでかい音やけど、耳に痛い音は出したくない。金物はめっちゃ気を遣うかな。

ハイハットは俺でかいけどね。ボーカルの人は意外とハット聴いてるし。

将:umbrellaでも「ハット上げてくれ」って言われるんす。でも僕はハット上げたくないんすよね(笑)。

ひたぎ:ハイハットの音量ってドラマーの思想が色濃く出るよね(笑)小さくしたい人もいるし、デカくしたい人もいる。将くんはハットの音量小さくしたい派だけど、ハイハットのサイズ14(インチ)やんね?13(インチ)にはしないの?

将:むしろサイズ上げたいっす最近。

ひたぎ:15(インチ)いいよね!

将:15ハットいいっすね。買おうかな(笑)。MEINLのFoundryの15最高なんすよ。

ひたぎ:それこそ普段の将くんのハットのコントロールで音量だけちょっと上がるんちゃう?15にしたら。

あと、サイズが上がることによってピッチが下がるから、そういう点でもいいよね。

将:そうですね、ギターのローとかに混ざりやすくなる。

ひたぎ:前にZildjianのZシリーズの15使わせてもらったんだけど、ギャンギャンな感じじゃなくてめっちゃよくて。

あれ欲しいんだよなぁ。

ちなみに今はMEINLのPure Alloyの14のheavy使ってて、Pure Alloy の15も気になる。

将:Pure Alloyね、僕はちょっと硬い感じするんすよね。Foundryなんかで15にすれば、やわやわっすね。

ひたぎ:ジョワジョワになりそう(笑)。

シンバルも好み出るよね〜。俺は柔らかいシンバルが全然使えなくて。割っちゃうし、やってるジャンル的に音埋もれて聴こえへんってなっちゃうから、どうしても硬めのチョイスになっちゃうかな。

将:僕、硬いシンバルのサスティーン長いの嫌なんすよ。

ひたぎ:分かる〜!だからみんな穴空き使うんだろうね。硬くて穴空いてるやつがアタックがしっかり出つつ減衰も早くていい。

将:なるほど、そういう風になってるんすね。僕も今穴空き欲しいんすよ。

ひたぎ:そんなあなたにオススメなのがPLAYTECH(プレイテック)(笑)。

まとめ・次回予告

空間系オルタナティブバンド・umbrellaと、和風メタル系バンド・ナキリ。

ヴィジュアル系という同じシーンの中でも、異なるジャンルの音楽を奏でる彼らだからこその、共通点と違いが浮き彫りになった今回の対談。

9月10日に大阪・梅田のLIVESPACE ODYSSEYにて開催される、umbrella主催イベント【アマヤドリ】では、ナキリとumbrella、そして数々の実力派ヴィジュアル系バンドたちの共演を観ることができる。

この対談を思い返しながら、いつも以上にドラムの音に耳を澄ませてみるのも面白いだろう。

そして次回は、ひたぎおすすめのPLAYTECH(プレイテック)についての解説に始まり、ドラムセットを2台所持する将のぶっ飛んだエピソードも。

ぜひ、ご期待あれ。

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この記事を書いた人

関西在住。大学では法哲学を専攻し、「ヴィジュアル系における自由と規律」をテーマに研究。音楽を通じた表現と社会的規範の関係性に関心を持ち、ヴィジュアル系という文化現象を美学・社会構造・言語の観点から読み解いてきた。現在はメディア運営者・ライターとして、執筆を通じてバンドの世界観を言語化し、ヴィジュアル系の魅力を広く伝える活動をしている。

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