
秋の気配が日に日に深まり始めた、2026年10月9日。
大阪・心斎橋にあるTHE LIVE HOUSE somaにて、Chanty『黒々秋夢』が開催された。
開演時刻が近づくにつれ、フロアには多くのファンたちが集まり、ステージへと期待の眼差しを向ける。
繊細で叙情的なメロディから、激烈なサウンドまで、多彩な表情を持つChanty。
そんな彼らが紡ぐ、秋の夜の物語がまもなく幕を開けようとしていた。
入場〜開演
開演時刻を迎えると、THE LIVE HOUSE somaに響き始めたのは、3拍子のピアノによる入場SE。
どこか物悲しく、幻想的な旋律に、少しずつ低く重厚な音が折り重なっていく。
青色の照明がステージを淡く照らし、フロアは静寂に包まれた。
先ほどまでのざわめきが消え去り、観客たちはじっとステージへ視線を注ぐ。
張り詰めた空気の中、Chantyのメンバーたちが静かに姿を現した。
1曲目|真空透過
静寂を切り裂くように、shotaの力強いバスドラムが鳴り響く。
ボーカル・芥が聴かせるのは、囁くように繊細で、けれど確かな力強さを感じさせる歌声。
曲を終えると、フロアへ呼びかける。
「さあ、黒々秋夢!
眠れぬ夜を踊り明かしましょう、よろしく!」
2曲目|パッチワーク
イントロが鳴り始めると、ファンたちは一斉に元気よくジャンプ。
「さあ、お手を拝借!」
芥の声を合図に、フロアからは息の揃った手拍子が起こる。
「共感したってさ それがなんだよ 結局のとこリアルじゃないし
同調したいのさ 君じゃなくとも 私はそこにいるようでいない」──Chanty『パッチワーク』より
ギター・白は、まるで小鳥の囀りを思わせるような、軽やかで表情豊かなフレーズを奏でる。
赤や青の照明が交互にステージを染め上げ、ファンたちはリズムに合わせて揃った動きを見せた。
「もっと見せてください!」
芥がさらに声を求めると、フロアの熱量も一段と上昇。
「連れ出して頂戴 私の代わりに 断崖絶壁決死のダイブ
壊して頂戴 私の代わりに あいつの首締めたりとか」──Chanty『パッチワーク』より
軽快なメロディとは裏腹に、歌詞には攻撃性が滲む。
3曲目|ねえ。
「賛成反対の中間でそら踊れ、踊れ、目一杯
所在不明!所在不明!現在地は見失った」──Chanty『ねえ。』より
まるで目の前の誰かに話しかけているかのような、芥の独特な歌い回し。
ステージでは赤い照明が激しく点滅し、フロアではファンたちがヘドバンで髪を振り乱す。
「もっとねえ褒めてちょうだい
ねえ褒めてちょうだい
ねえ褒めてちょうだい
さあみんな一斉に」──Chanty『ねえ。』より
両手をくるくると回し、頭上で大きなハートを作る振り付けが、愛らしくも力強くsomaの熱を上げていく。
「大阪!!」
芥の鋭い叫びが、会場を貫いた。
4曲目|絶対存在証明証
「淡い新興宗教団体にはまって
全力疾走でバイバイ
不機嫌なベイベー」──Chanty『絶対存在証明証』より
歌詞に呼応するかのように、ファンたちは上手へ、下手へと全力疾走。
激しいフロアを見下ろすように、芥、白、野中拓の3人がお立ち台へ。
互いの熱がぶつかり合い、会場の高揚感はますます膨らんでいく。
そして、芥が高らかに叫ぶ。
「大阪! Chantyの世界へ……ようこそ!!」
MC
4曲を駆け抜けたところで、フロアからは大きなメンバーコールが巻き起こる。
熱のこもった声を受け止め、芥が改めて口を開いた。
「黒々秋夢 大阪公演、お越しいただき誠にありがとうございます!」
丁寧な言葉で、この日集まったファンたちへ感謝を伝える。
「あっという間に、この悪夢は終わってしまうと思うから。
取りこぼさずに受け取って欲しいんだよ」
5曲目|累々
「もう何年と何ヶ月だ
地下室でうずくまって
誰もが求めていない
感情を書き殴ってるんだ」──Chanty『累々』より
白の荒々しいフレーズ、野中拓の鋭い低音、そしてshotaの重厚なビート。
それぞれの楽器が強烈な個性を主張しながらも、ひとつの巨大な轟音となってsomaを満たしていく。
音源で聴くよりもさらに荒々しく、剥き出しの衝動を感じさせるロックサウンドだ。
「かりそめの翼
心乱され
刹那を吐き出して彷徨う」──Chanty『累々』より
間奏では、どこか嘲笑うような不敵さが滲む野中拓のベースソロが耳を奪う。
そして芥が、フロアへ向かって過激な言葉を放つ。
「大阪……●ね!!」
その叫びを合図に、ファンたちは一斉に拳を突き上げ、勢いよくジャンプした。
6曲目|半透明
先ほどまで拳を突き上げ、勢いよく跳び跳ねていたファンたちも、じっとステージを見つめながら演奏に聴き入る。
「キミは今どこで何してる?
私のことが見えますか?
記憶に咲いた姿がまた
少しづつぼやけてく」──Chanty『半透明』より
どこか懐かしさを感じさせる、白のギターの音色。
芥は肩で大きく息をするかのように、全身へ力を込めながら一言一言を紡いでいく。
やがて演奏が終わると、歪んだギターノイズがsomaに残された。
7曲目|ねたましい
3拍子のリズムに乗せて、Chantyメンバーたちが全身を大きく揺らしながら演奏を繰り広げる。
「笑ってて欲しかったよ!!」
芥が振り絞るように叫び、その鬼気迫る表情に思わず目を奪われる。
やがて、激しく鳴り響いていた楽器隊の音が止み、静寂が訪れた。
「伸ばすその手は誰のために」──Chanty『ねたましい』より
胸を締め付けるような芥の声が、somaに柔らかく、そして力強く響いた。
8曲目|唯一輪
shotaの打ち鳴らす重厚な一打が、somaの空気を震わせる。
「ただ気付いてほしかった
抱きしめなくてもいいから」──Chanty『唯一輪』より
芥の声は儚げで、触れれば壊れてしまいそうな繊細さを孕みながらも、確かな芯がある。
そんな彼を支えるように、白、野中拓、shotaの3人は丁寧に演奏を重ねていく。
9曲目|微熱
「聞かせてくれ!!」
芥の力強い声を合図に、軽快なビートが鳴り始める。
思わず身体が動き出す心地よいグルーヴに乗せ、ファンたちは一斉に拳を振り上げた。
「来い!!」
さらに芥がフロアを煽り立てる。
「ただなんとなく息をしてる僕らは
どこに行けばいいのかわからぬまま
冷めない微熱の中まだ一生を走ってる」──Chanty『微熱』より
shotaの軽快なハイハットが、鋭く耳を抜ける。
芥は一言一言を真っ直ぐに届けるように歌い、野中拓もコーラスでその声を支える。
「ただなんとなく息をしてる僕らは」──Chanty『微熱』より
ステージと客席の声が重なり、エネルギッシュなシンガロングがsomaいっぱいに広がった。
10曲目|ALIVE
野中拓の刻むベースのリズムに合わせ、フロアから大きな手拍子が巻き起こる。
「さらばあの日のキミ思い出す今日は眠れない
壊して壊して生まれ変わった僕を許してくれるかなぁ」──Chanty『ALIVE』より
白のギターが伸びやかな旋律を描く。
4人の音が重なり合うにつれ、まるで広大な空間へと放たれていくような、壮大なサウンドが生まれていった。
そして、その開放感も束の間。
鋭く引き締まった楽器隊の音を合図に、ファンたちは勢いよく折りたたみヘドバン。
あちこちから威勢のよい掛け声が飛び交い、熱気は増していく。
11曲目|空々
「足りない足りない心は乾いてる
ずっと消えない消えないでくれよ
どこ行った初期衝動」──Chanty『空々』より
大きく身体をのけぞらせ、ギターを高々と掲げる白の大胆なステージングに、思わず目を奪われる。
そして、shotaがスティックを高く掲げたのを合図に、フロアでは一斉にタオルが回り始める。
「なんだかんだ迷ったって
笑っちゃえば笑っちゃえば
それで全部チャラになって」──Chanty『空々』より
MC
11曲を駆け抜けたところで、再びMCへ。
「改めてありがとう、Chantyです。」
芥が穏やかな声で、ファンたちへ感謝を伝える。
「黒々秋夢、もう3回もやってるんですね。みんなに感謝してます。」
こうして同じ公演を重ねられることへの想いを口にしたところで、ふと野中拓の姿に目を留める。
「……何、その耳?」
芥の視線の先には、黒い耳をつけた野中拓。
「わかんない(笑)。とりあえずケモ耳。」
愛らしい姿と返答に、和やかな空気が漂う。
続いて話題は、この日の衣装へ。
「オレンジなんて、普段着ないよね。」
普段とは異なる装いを改めて眺めながら、芥が言う。
「shota君はかわいいね。」
するとshotaは立ち上がり、その姿をファンたちへ披露。
「ああ、いいよ。お座り。」
芥の一言に従って再び腰を下ろすshota。
飼い主とペットのようなやり取りに、フロアからも笑みが溢れた。
そんな和やかな時間も束の間。
芥が再び、フロアへ力強く呼びかけた。
「まだまだ一つになれますか!!」
12曲目|USHIMITSU DANCE
「どうすんだ気づけば午前2時だ
あいつのこともとっくに恨み終わってる」──Chanty『USHIMITSU DANCE』より
芥が響かせるのは、中低音域の艶やかな歌声。
そんなボーカルに絡みつくように、白が軽やかなフレーズを奏でる。
心地よいグルーヴに乗せ、妖しくも遊び心に満ちたサウンドがsomaを彩った。
13曲目|曖昧
shotaの鮮烈なスネアの音が響き、野中拓はスマートなフレーズを表情豊かに奏でる。
「誰も彼も人違いだ
嫌だ嫌だ大嫌いだ」──Chanty『曖昧』より
芥が苛立ちを吐き出すように歌うと、白のギターが一気に勢いを増す。
「曖昧だ曖昧だ
五月蝿いな五月蝿いな」──Chanty『曖昧』より
畳み掛けるような言葉に合わせ、芥はお立ち台へ。
フロアを見渡しながら、感情をぶつけるように歌い上げる。
4人が放つ音は互いにぶつかり合いながらも、ひとつの塊となってsomaを圧倒していく。
曲を終えると、芥は両手で手招きするような仕草を見せ、間髪入れずに次の曲へとなだれ込んだ。
14曲目|無限ループ
白のステージングは、曲が進むにつれてますます大胆に。
身体を大きく揺らしながら、荒々しくギターを掻き鳴らす。
「あーもう信じられない
だけどやりきれない
だからずっと体育座りで知らんぷり」──Chanty『無限ループ』より
間奏では、白がギターソロを披露する傍ら、芥と野中拓が向かい合い、息を合わせて激しくヘドバン。
さらに、メンバーたちはステージ前方へと大きく身を乗り出す。
その距離は、手を伸ばせばファンたちが振り回すタオルに触れそうなほど。
ステージとフロアの境界が曖昧になるような、熱気あふれる光景が広がっていく。
15曲目|不機嫌
「わかりきった正論だけが
あなたの武器ですか
疲れちゃって本性見えた
なら話はそれまで」──Chanty『不機嫌』より
白のギターのざらついた音色は、まるで刃こぼれしたナイフで何度も抉りつけるかのよう。
野中拓のベースとshotaのドラムも、荒々しいギターに一歩も引けを取らず、真正面から殴りつけるような凶暴なサウンドがsomaに襲いかかる。
そして芥が、フロアへ向かって叫ぶ。
「さあ、大阪!
お前たちの命を教えてくれるか!!」
ラスト|アイシー
先ほどまでの凶暴なサウンドから一転、somaの空気が一気に澄み渡っていく。
「39℃の感情線は
喜怒哀楽にとっちらかってるんだ
明日なんて来なきゃいいのにさ」──Chanty『アイシー』より
強さも儚さも、光も闇も。
愛情も憎しみも、すべてをひとつに溶け込ませたかのようなアンサンブル。
アウトロでは、深く沈み込む低音と、視界が開けるような伸びやかな高音が重なり合う。
そして、最後の音が鳴り止む。
「大阪、どうもありがとう! Chantyでした!!」
芥が感謝を告げ、深々とお辞儀をする。
白、野中拓、shotaもそれぞれフロアへ顔を向け、拍手を送りながらステージを後にした。
アンコール|MC
アンコールに応え、再びステージへ姿を現した4人。
まずは白が口を開く。
「アンコールありがとうございます!」
ここで芥が、白の髪型について話し始めた。
「白君、この髪型だと加入当初思い出すよね!」
この日の白は、黒髪の短めなヘアスタイル。
「それ思った!」
と、野中拓も同意する。
「フレッシュでいいよね。ね? shota君」
芥がshotaへ話を振ると、
「俺はいつかハゲるかもしれないけど、ハゲても好きでいてください(笑)」
突然の告白に、話題はまさかの将来の頭髪事情へ。
「お父さんハゲてる人?」
芥の問いかけに、野中拓を除くメンバーが該当するという結果に。
すると野中拓が、
「10年後、俺以外ハゲてるかもしれない(笑)」
と、容赦ない一言。
「その時はまた黒々秋夢で面白いことできたら。」
芥がそう話すと、白がすかさず、
「何もしなくても面白いよ!(笑)」
と返す。
ステージ・フロアともに、大阪らしく温かな笑いに包まれたのだった。
アンコール1曲目|帰らない
「このツアー中に抱いた想いを歌にしました。
聴いてください」
芥の言葉と共に始まったこの曲。
「帰らない帰らない
今も向かっているよ
横殴りの風にハンドルを取られながら」──Chanty『帰らない』より
紡ぐのは、飾り気のない、等身大の歌声。
自身の経験を語り聞かせるかのように、自然体で言葉を届けていく。
そんな芥の姿を、ファンたちはじっと見つめていた。
車窓の向こうに次々と景色が流れていくかのごとく、音が滑らかに連なっていく。
「かかってこい!!」
芥が再び力強く叫び、再び熱を帯びたステージへ。
アンコール2曲目|フライト
「いつも悲しみだらけのこの街で
答えをくれたのは
あなたでした」──Chanty『フライト』より
芥が真っ直ぐに歌い上げる言葉に、ファンたちは優雅な手扇子で応える。
そんな光景を包み込むのは、白の煌びやかなギターの音色。
繊細な高音が伸びやかに舞い、野中拓の艶やかなベースラインと溶け合う。
そこへshotaの歯切れよいビートが重なり、4人のアンサンブルは一層華やかさを増していった。
ファンたちは一斉に拳を突き上げ、大きな声を上げる。
アンコール3曲目|想巡
芥は豊かな身振りを交えながら、情感たっぷりに歌い上げる。
「心が揺れ動いてる
寄せては返す波のようだ」──Chanty『想巡』より
時に優しく、時に力強く移ろう歌声。
呼応するように、野中拓も一層力を込めてベースの弦を弾く。
荒々しいバンドサウンドの中にも、拭いきれない切なさが漂い、胸を締め付けるような余韻を残した。
やがて演奏が終わると、芥が優しい声で呟く。
「ありがとう」
アンコール4曲目|よまいごと
「今日というこの特別な日、一緒の場所で呼吸してくれて、どうもありがとうございます。」
芥が、改めてファンたちへ感謝を伝える。
「これからもたくさんの色を重ねて、病める時も健やかなる時も、
それぞれの呼吸を持ち寄って、一つの夜を過ごせたらいいなと思っています。」
異なる日々を生きる者同士が、同じ場所に集まり、ひとつの音楽を分かち合う。
そんなライブという空間への想いが滲むMCから、いよいよ最後の一曲「よまいごと」へ。
「ここで君が笑って
つられて僕も
笑ったりして
なんとなく訪れた時間を
幸せと呼んで」──Chanty『よまいごと』より
芥の歌声に重なるのは、温もりを感じさせるバンドサウンド。
shotaのドラムは、まるで心臓の鼓動のように力強い。
フロアでは、ファンたちが右手を高らかに掲げ、Chantyの奏でる音を全身で受け止めていた。
最後に、芥が告げる。
「大阪! また会いましょう。
黒々秋夢の世界でした。
どうもありがとう!」
大きな拍手とメンバーコールがsomaに響き渡る。
激しさ、切なさ、そして温もり。
さまざまな色が重なりあったChanty『黒々秋夢』大阪公演は、こうして幕を閉じた。
まとめ

Chanty『黒々秋夢』大阪公演。
全20曲を通して描かれたのは、喜びや悲しみ、怒り、孤独、そして誰かを想う温かな感情も詰め込んだ、豊かな「黒」の世界だった。
4人が織り成すサウンドは、時に互いの個性を激しくぶつけ合い、時に優しく重なり合う。
「取りこぼさずに受け取って欲しいんだよ」
序盤のMCで語られたその言葉は、終演を迎えた今、より深い意味を持って胸に残る。
新譜『深々呼吸』を提げた彼らは、これからどんな景色を見せてくれるのか。
その歩みを、これからも楽しみに追い続けたい。
レポート:ヴィジュアル系百科 編集長 太田翔子

