
「オルタナティブ(オルタナ)」は、音楽シーンでたびたび耳する言葉だ。
しかし、「オルタナってどんな音楽?」「他のロックと何が違うの?」と疑問に思っている人もいるだろう。
本記事では、オルタナティブの意味や歴史を紐解きながら、ヴィジュアル系との関係性についても解説する。
後半では、オルタナ要素の強いヴィジュアル系バンドや楽曲も紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。
オルタナティブとは
ここでは、オルタナティブという言葉の意味や特徴を解説していく。
オルタナティブの意味
「Alternative」は英語で「もうひとつの選択肢」「代替的な」という意味を持つ言葉だ。
音楽シーンでは1980年代頃から、商業的なメインストリームロックとは異なる音楽を指す言葉として定着した。
当時は、インディーズレーベルや大学ラジオ、ライブハウス中心の活動など、メジャーシーンとは別の場所で広がっていた音楽が「Alternative Music」と呼ばれていた。
つまり、元々オルタナとは「主流ではない音楽文化」を指す概念だったのである。
オルタナは幅広いジャンルを含む
オルタナティブは、「既存のメインストリーム音楽とは少し異なる価値観を持った音楽」を包括的に指す言葉として使われてきた。
そのため、オルタナには以下のように、サウンドも方向性も大きく異なるジャンルが含まれている。
グランジ
シューゲイザー
ポストパンク
インディーロック
ノイズロック
オルタナティブメタル
エモ
など
たとえば、グランジは、歪んだギターや荒々しい演奏、投げやりにも聞こえるボーカルなどを特徴とするジャンルだ。
1990年代初頭のアメリカ・シアトルを中心に広がり、社会への閉塞感や虚無感、若者の鬱屈した感情をリアルに表現した音楽として支持を集めた。
一方、シューゲイザーは、空間を埋め尽くすような轟音ギターと、ぼんやりと溶けるようなボーカル、幻想的で浮遊感のあるサウンドが特徴だ。
ジャンル名の由来は、演奏中に足元のエフェクターを見つめる姿が「靴を見つめている(Shoegazing)」ように見えたことから来ている。
オルタナティブの音楽的な特徴
オルタナにはさまざまなタイプが存在するが、サウンド面には共通して見られる特徴も多い。
特に代表的なのは、以下のような要素だ。
歪んだギター・ノイズ・轟音
オルタナでは、綺麗に整ったギターサウンドよりも、強く歪ませた荒々しい音作りが多く使われる。
ディストーションやファズを深くかけ、ザラついた質感、潰れたような音を作る。
また、通常なら不要とされるフィードバックノイズやハウリングを、あえて楽曲へ取り入れるケースも多い。
さらに、ギターを何本も重ねた分厚い轟音サウンドも多く見られる。
特にシューゲイザーでは、音の壁のような密度を作り出す。

浮遊感のある空間系サウンド
オルタナでは、空間系エフェクトを多用したサウンドも特徴的だ。
リバーブ、ディレイ、コーラスなどを重ねることで、輪郭がぼやけた幻想的な音を作り出す。
特にシューゲイザーやドリームポップでは、ボーカルすら楽器の一部のように溶け込ませ、空間に漂うようなミックスをするケースも多い。
静と動の落差
オルタナでは、静かなパートと轟音パートを極端に切り替える構成もよく使われる。
小さなアルペジオや囁くようなボーカルから、一気に爆発するようなギターへ展開することで、感情の起伏を強調する。
特にグランジやオルタナティブメタルでは、この落差が目立つ。
オルタナティブの歴史|発祥〜現在
ここでは、オルタナティブの歴史を年代ごとに整理していく。
1960〜70年代|アンダーグラウンドロックとパンクが土台を作る
オルタナの原型は、1960年代後半のアンダーグラウンドロックにある。
特に大きな影響を与えたのが、The Velvet Undergroundだ。
彼らは従来のロックとは異なり、退廃的な歌詞や、無機質な演奏を取り入れた。
さらに1970年代後半になると、パンクロックが登場。
DIY精神や反商業主義が広まり、「メジャーではない音楽文化」の基盤が形成されていく。
このパンク文化こそ、後のオルタナティブへ直結する重要なルーツとなった。
1980年代|インディーシーンとCollege Rockの時代
1980年代になると、アメリカでは大学ラジオを中心に、インディーバンドが支持を集めるようになる。
特にSonic Youthは、轟音ギター、ノイズを用いた表現、実験的アプローチをロックへ持ち込み、後のオルタナシーンへ大きな影響を与えた。
この時代のオルタナは、まだ大衆的人気というより、サブカルチャー色の強い存在だった。
1990年代|Nirvanaがオルタナを世界的ジャンルへ変える
1991年、Nirvanaが発表したNevermindは、音楽史を大きく変えた。
特に代表曲のSmells Like Teen Spiritは世界的ヒットとなり、それまで地下音楽扱いだったオルタナを一気にメインストリームへ押し上げた。
この成功をきっかけに、グランジ、シューゲイザー、オルタナメタル、インディーロック、ポストロックなど、さまざまなジャンルが世界的に注目されるようになる。
2000年代|エモ・ポストロック・ラウド系へ枝分かれ
2000年代以降、オルタナはさらに多様化していく。
この頃は、エモ、ポストロック、ラウドロック、オルタナメタルなどが台頭した。
海外ではRadioheadが電子音楽や実験性を強め、オルタナの表現領域を大きく広げる。
現在|ヴィジュアル系や邦ロックにもオルタナの影響が見られる
2026年現在のヴィジュアル系においては、歌謡ロックやラウド系、メタルなどを取り入れているバンドが比較的多く、「このバンドはオルタナ系だ」と言われるバンドは多数派ではない。
ただしヴィジュアル系は、元々音楽ジャンルに縛られないミクスチャーロック的側面があり、「このバンドのこの曲はオルタナっぽい」「この曲の、この部分はオルタナ感がある」というケースは多々ある。
また、オルタナの退廃的な世界観、アンダーグラウンド性とヴィジュアル系の相性は良いと言える。
そのため、今後ヴィジュアル系にオルタナ要素の強い新たなバンドが登場する可能性も十分にあるだろう。
オルタナ要素の強いヴィジュアル系バンド・アーティストの例
Plastic Treeは、ヴィジュアル系オルタナを語るうえで欠かせない存在だ。
UKロックやシューゲイザーの影響を感じさせる歪んだギター、浮遊感のあるサウンド、中性的で内省的な歌詞。
激しい轟音だけでなく、静けさや余白を活かした音作りも特徴的だ。
また、ボーカル・有村竜太朗のソロワークでは、その傾向がさらに強い。
ドリームポップやアンビエントなども取り込みながら、より曖昧で揺らぎのある空気感を表現している。
さらにumbrellaは、近年のヴィジュアル系オルタナを象徴するバンドのひとつで「空間系オルタナティブバンド」と呼ばれる。
ノイジーなギター、静と動を切り替える構成、陰鬱さと優しさが同居する歌詞。
別ジャンル、例えばシューゲイザー系のイベントにも出演するなど、ヴィジュアル系という枠にとらわれず音を追求している。

また、ギターボーカル・唯のソロ活動では、より濃くオルタナ性が表れる。
umbrellaより少し脱力感のある自然体のボーカルや、歪みながらも温かみのある轟音ギター、日常を描いた詞世界。
ヴィジュアル系としては特異な存在感を放つ。

まとめ
グランジ、シューゲイザー、ポストパンク、エモなど複数のジャンルを内包するオルタナティブ。
音楽性は大きく異なるものの、ノイズや轟音、浮遊感、内省的な空気感などは共通している。
今回紹介したバンド以外にも、ヴィジュアル系シーンにはオルタナ的な要素を含む楽曲が数多く存在する。
柔らかく揺らぐような脱力感、激しいけれど鮮やかすぎない音。
色に例えれば、ビビッドな原色ではなく彩度の低い燻んだ色。
洋服に例えるならば、ジャストサイズのビジネススーツではなく、少しゆとりのあるネルシャツのようだ。
オルタナの持つそんな雰囲気に惹かれた人は、ぜひさまざまなヴィジュアル系バンドの楽曲を聴き、自分なりの「ヴィジュアル系オルタナ」を探してみてほしい。
